インスペクションは、不動産売却の際に売買対象となる建物の現況を専門家が現地調査して状態を確認します。具体的には以下のような調査をおこないます。
インスペクションの専門家による現地調査には、「目視検査」と「機器を利用した非破壊検査」があります。
非破壊検査とは、建物を壊さずに行う検査のことで、例えば床の傾きを調べる機器での検査などがあります。また、現地調査にかかる時間は、概ね3時間程度、インスペクション費用は数万円~10万円程度を要します。ただし、インスペクション費用は、選択する調査会社やプラン内容によっても異なりますので、詳細内容をよく確認しましょう。
中古住宅の売買時にインスペクションを実施する大きな理由として、買主様と売主様のそれぞれの不安を解消できることにあります。また、宅地建物取引業法(宅建業法)の改正などでインスペクションの認知が向上し、今インスペクションがますます注目されているのです。
中古住宅を購入する買主様にとっては、「建物のどこかに不具合があるんじゃないか?」「後から物件の不具合を指摘しても応じてもらえないのではないか?」といった不安があります。
一方、売主様には「建物の不具合を心配されてなかなか売れないのでは?」「“中古住宅は不安”という理由で、近隣の新築物件を購入されてしまうのではないか?」といった不安があります。
このような不安を解消するために、建物の専門家である第三者が建物の現況を調査するインスペクションが注目されているというわけです。
さらに、国土交通省は、専門家である第三者が客観的に建物の検査・調査を行うための「既存住宅インスペクション・ガイドライン」の策定や「建物状況調査(インスペクション)を活用しませんか?」といった建物状況調査の内容やインスペクション実施事業者による保証内容などを掲載したリーフレットを作成し、中古住宅の売買時におけるインスペクションの利用を推進しています。
また、前項で紹介した「既存住宅インスペクション・ガイドライン」の策定や「建物状況調査(インスペクション)を活用しませんか?」といったリーフレットによる国土交通省の啓蒙活動に加え、2018年には、宅地建物取引業が改正され、不動産売買取引に関わる売主様・買主様に対して宅建業者は、次のインスペクション(建物状況調査)についての説明義務が加わりました。
ここでのポイントとしては、売主様・買主様は媒介契約時から不動産売買契約に至る売買手続きの過程で必ずインスペクションの存在を知るようになったということです。
このような宅建業法の改正もあり、インスペクションの認知がさらに向上し、中古売買取引におけるインスペクションの利用が多くなってきているのです。
前項までで、インスペクションの概要や、なぜ今日注目されているのか?について確認してきました。次に、売主様・買主様の観点から、インスペクションがなぜ推奨されているのか?を具体的に解説していきます。
売主様にとってインスペクションが必要とされている主な理由は、次のとおりです。
仮に、建物に不具合や瑕疵(かし)があり、建物の引渡し後に買主様にそれらを指摘されたとします。瑕疵担保責任に基づく売主様の負担が必要となる事象の場合には、当然、補修費用や損害賠償費用などを支払うことが必要となります。
このようにインスペクションを実施しておけば、そのようなトラブルを可能な限り防ぐことができ、さらに「建物状況調査済み」の中古住宅として他の競合物件と差別化できるため購入検討者へのアピール効果が一層期待できます。
他方、買主様にとってインスペクションが必要とされている主な理由は、次のとおりです。
中古住宅を購入する買主様にとっては、「中古住宅には、不具合や瑕疵(かし)などがあるのでは? 」、「建物に不具合があった場合に引渡し後に対処してもらえるのか?」といった不安が常に付きまといます。
事前にインスペクションが実施されている物件であれば、仮に建物に破損箇所や不具合箇所があったとしても事前にそれらを把握することができます。そのため、購入後に行うべきリフォームやメンテナンスの見通しが事前に把握できるということが大きなメリットです。
また、詳しくは後述しますが、一定条件を満したインスペクション実施済みの物件であれば瑕疵保険に加入することもできるため、引渡し後の安心感が一層増します。
最後に、瑕疵保険と安心R住宅制度について解説します。この2つも、中古の売買時にインスペクションを実施するメリットにつながるので覚えておきましょう。
インスペクションを実施した結果、「劣化項目がない」もしくは「劣化項目に対して適切な補修をしている」物件の場合には、「既存住宅売買瑕疵保険」に加入することができます。
既存住宅売買瑕疵保険に加入すれば、引渡しから一定期間(1年間もしくは5年間)は、一定金額(500万円もしくは1,000万円)の保証が付保されます。
そのため、加入した瑕疵保険に定める既存住宅の構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分などにもし不具合があったとしても補修費用が保証されるので買主様は安心できることとなります。ただし、瑕疵保険の加入にあたっては、4万円~15万円ほどの費用を要することがありますのでプラン詳細をよく確認しておきましょう。
また、先述したインスペクション(建物状況調査)についての宅建業者の説明義務化と合わせて国土交通省は、既存住宅の流通促進に向けて「安心R住宅制度」を創設しました。
この「安心R住宅制度」とは、耐震性があり、インスペクションが行われた既存住宅、かつ、リフォーム等について情報提供が行われる既存住宅が一定要件を満たすことで、国が審査、許諾した事業者団体によって「安心R住宅マーク」が物件に付与されるといった制度となります。
この制度を利用することで、ご自身が売却予定の中古住宅へ安心R住宅マークが付与されますので、購入検討者がより安心して購入の判断がし易くなるといった効果が期待できます。
このように、売主様にとっても買主様にとっても、中古住宅の売買時にインスペクションを活用するメリットは大きいと考えられます。
中古住宅の売買時には、ぜひインスペクションの活用について不動産仲介会社に相談してみましょう。
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中村 昌弘
都内大学を卒業後に新卒で上場ディベロッパーに就職。マンションの販売・企画・仲介などを経て2016年に独立。
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