マンションは地震をはじめとする災害に強いといわれる建物ですが、マンションのどのような点が防災力を高めているのでしょうか。
通常2~3階建ての戸建てとは異なり、マンションは3階~5階以上ある建築物です。戸建の中には木造建築もありますが、マンションの場合は鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造が主であり、構造躯体そのものが災害に強い特徴があります。とくに、地震の揺れや衝撃を和らげる制震構造や、建物の揺れを吸収する免震構造は近年のマンションに多く見られる耐震技術です。
マンションは管理組合による防災対策が整っている場合が多く、マンション全体で高い防災意識が備わっていることもあります。例えば、定期的な防災訓練や防災備蓄品の支給、防災マニュアルの共有などがあると、住人が防災への意識を高めやすく、万が一の際に落ち着いた行動が取れるようになります。近年では町内会や自治会など周辺地域の人々と共同で実施する防災活動も注目されています。
災害によりライフラインに支障がでた場合、マンションの敷地内スペースを避難所にする、支援活動の拠点にするといったことも一部のマンションは可能です。住人の自助・共助によって予期せぬ災害の被害を最小限に抑えられる点も、マンションならではといえるでしょう。
特に高層階で気になるのが、近い将来の発生も予想されている大地震ではないでしょうか。地震に強いマンションにはどのような条件があるのか見ていきましょう。
耐震基準とは、地震に対する建物の強度を示す基準で、建築基準法により定められています。耐震基準は1978年の宮城県沖地震をきっかけに1981年に大幅な改正が行われました。
そのため、マンションの築年数によっては1981年以前の「旧耐震基準」が採用されています。
一般的に、地震に強いといわれるマンションは1981年改正の「新耐震基準」をクリアしている建物を指します。中古マンションなどでは、「旧耐震基準」「新耐震基準」のどちらが採用されているか事前に確認しましょう。
確認方法は、建築確認済証の発行日です。新耐震か旧耐震かの判断基準は、建築確認申請が受理された日が、昭和56年6月1日以降であるかどうかになります。
ただし、詳しくは後述しますが、旧耐震基準であっても、定期的に耐震メンテナンスを行っているマンションでは地震に強いケースもあります。
地盤が強い土地に建てられたマンションは、地震による地盤沈下の影響を受けにくく、傾きや倒壊のリスクが少ないといわれています。地盤が弱い埋立て地や砂地などに建てられたマンションは、どんなに優れた耐震性をもっていても液状化現象などによる被害を受けやすいため注意してください。
マンションは、建物の構造に地震対策を取り入れることで耐震性を高めています。
例えば、新耐震基準により建築されたマンションは震度6強の地震で倒壊することがないよう、強固な構造(耐震構造)が採用されています。
このほか、建物内に制振構造(制震構造)を取り入れたマンションでは、ゴムやバネなどのダンパーが地面から伝わった揺れを吸収し、建物(特に高層階)が揺れることを防ぎます。
地面からの揺れや衝撃そのものを基礎内で吸収する免震構造が採用されたマンションは、建物に地震の衝撃が加わりにくく、耐震構造や制震構造以上に地震の揺れが軽減できるといわれています。
形状がシンプルなほど、建物の耐震性は高くなります。多くのマンションは左右対称の箱形のため、戸建てに比べて高い耐震性があります。また、左右対称で上層階が小さくなるピラミッド型のマンションも、耐震性が高いといわれています。
管理組合などにより定期的なメンテナンスが施されているマンションは、耐震診断などから構造部分の劣化を発見・補強することが可能です。鉄筋コンクリート構造のマンションは柱や梁などを補強することで耐震性を高められるため、築年数に関係なく高い耐震性があるのもマンションならではといえます。
マンションの建築では、地震や風に対する建物の強度を定める基準(建築基準法)はあるものの、その他の自然災害(台風による水害や火災など)に対する基準は設けられていないのが現状です。
では、これらの自然災害に強いマンションはどのように見分ければ良いのでしょうか。
国や自治体が公表するハザードマップから、各土地の浸水予想や洪水予想を知ることができます。ハザードマップ上で問題が少ない立地に建つマンションは、台風や洪水の被害を受けにくいと判断できます。特に、洪水や浸水は河川付近の地域で見られやすいため、土地選びの段階から注意しておくと安心です。
1階部分が居住スペースになっていないマンションは、河川の氾濫やそれにともなう洪水の被害を避けることができます。ただし、電気設備が地下や1階に集約されている場合、水害によりライフラインがダウンしてしまう可能性もあるため、地下や地上付近の設備についてよく確認しておくことが大切です。
木造は一度の洪水や浸水で構造部分に劣化を招きやすいため、水害による被害を受けやすい住宅といえます。これに比べ、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションは台風や水害に対する耐久性が高いです。
近年のマンションは新耐震基準による建築で、強度を高める多くの最新技術が取り入れられています。築年数が経過している中古マンションでも管理組合の防災対策や定期的なメンテナンスにより、建物の耐震性は高く保つことが可能です。
そのため、災害大国日本でより安心な生活を送るためには、マンションへの住み替えを行うのもひとつの選択肢です。特に、地震や台風で被災した住宅は売却の際に相場を下回る価格となってしまうことも考えられるため、住み替えを検討しているなら早めの決断をすることがおすすめです。
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金 弘碩
二級建築士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター・マンション管理士・賃貸不動産経営管理士・CFP/貸金業務取扱主任者
不動産仲介・不動産管理・不動産鑑定・現場監督業務など、合計18年勤務。現在は『すまいとくらしのカウンセラー 住宅専門FP 』として、住宅購入者へのアドバイス・コンサルティング業務を行う。最近は、住宅ローンのアドバイスに注力しています。
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