まずは、不動産運用とはどういったものなのかを見ていきましょう。
不動産運用とは、保有している不動産を運用して資産を増やすことです。
運用にはさまざまな方法がありますが、大きく分けると第三者に不動産を「貸す」ことにより収入を得る方法と、不動産を「売る」ことで収入を得る2種類になります。
「貸す」というのは、保有しているアパートやマンションを貸し、継続的に家賃収入(インカムゲイン)を得る方法です。大きな利益を得るまでには時間を要しますが、入居者がいる間は安定的に収入を得ることができます。
一方、「売る」というのは、保有しているアパートやマンションが購入価格よりも高くなった時点で売却する方法で、一度にまとまった現金収入を得ることができます。
不動産運用には2種類あると紹介しましたが、近年なぜ不動産運用が注目されているのでしょうか?注目されている理由を3つ紹介します。
ミドルリスク・ミドルリターンとは、投下した資金の元本が還ってこなかったり、変更されたりする可能性がある程度あるものの、それに対する見返りもある程度期待できるという意味です。
不動産は、生活に必要な衣・食・住の一つに該当するため、価格の変動性がとても穏やかであるという特性があります。もちろん、経済情勢の悪化や災害などがあった際は物件価格が下がる可能性もありますが、基本的には穏やかに上下するためミドルリスクといえます。
そして、資産を短期間で急激に増やすことは難しいものの、継続的に家賃収入を得られることがミドルリターンの理由になります。
そのため不動産運用は、ハイリスク・ハイリターンやローリスク・ローリターンの投資方法に比べ、効率的に資産が増やせるといえるでしょう。
一般的に金融機関で不動産投資ローンを組む場合、団体信用生命保険に加入することが条件になります。団体信用生命保険に加入することで、予期せぬ病気や事故でローン返済者が死亡した場合でも、残債が完済となるので残された家族には、毎月の収入が見込める不動産が残ります。そのため、残された家族のため生命保険代わりに不動産運用を始める方が増えています。
また、マイナス金利政策も不動産運用を後押ししています。以前より不動産投資ローンの金利が下がっており、借入の敷居が下がり不動産取得後でも、売買がしやすいというメリットが追い風になっています。
3つ目の理由は、少子高齢化問題による不安の拡大です。
現在の日本は「超高齢化社会」に突入しており、65歳以上の高齢者数は年々増加傾向をたどっています。内閣府のデータによると、2017年時点で総人口の27.7%が65歳以上の高齢者となっており、2065年には約38.4%まで増えるといわれています。
つまり、現役世代1.3人で1人の高齢者を支える時代が到来するのです。
また、高齢者の増加とともに平均寿命も上昇しています。2065年には男性が84.95歳、女性が91.35歳まで平均寿命が上昇するといわれており、金融庁からは「老後30年間で2,000万円が不足する」という発表もありました。
こういった状況から「多少リスクを負ってでも資産を増やしたい」と考える人が増え、不動産投資に注目が集まっているのです。
それでは実際に不動産運用を検討・実施する場合、賃貸と売却のどちらが良いのでしょうか?それぞれのメリットとリスクについてご紹介しますので、ぜひ比較してみましょう。
不動産を賃貸する場合のメリットは、なんといっても継続的な家賃収入です。
一定の入居率さえ維持できれば安定した収入が得られるため、定年退職後の私的年金代わりにすることもできます。
また、不動産賃貸には所得税の節税効果も期待できます。毎年の減価償却費はキャッシュ・アウトを要せず、費用に計上することができるのです。さらに、青色申告をすることで10万円(事業規模の場合は65万円)の特別控除も適用可能です。
不動産賃貸による節税効果を利用して資産を増やし、さらに住宅ローンを併用することで新たな不動産投資を行えば、より安定した不動産経営を実現することができるでしょう。
賃貸運用のリスクとしては、空室や家賃滞納のリスクが挙げられます。
当然ですが、なかなか入居者が入らず空室期間が長かったり、住人が家賃を滞納したりすれば、その間の家賃収入はゼロになります。今後の日本社会では、少子高齢化の深刻化や人口の減少が進み、全国的に空室率が高くなることが予想されています。
また、「近所の大学が移転してしまった」、「災害危険エリアに指定された」など、外的要因によって賃料の値下げを余儀なくされる可能性や、物件の修繕費用がかかるといったデメリットもしっかりと認識しておきましょう。
不動産売却のメリットとしては、まとまった現金収入を得ることができる点です。
継続的な収入は得られませんが、空室や家賃滞納といったリスクがなく、賃貸とは異なり不動産運用におけるストレスも少ないといえるでしょう。売却後は物件の管理等が不要になる他、まとまった収入を株や債券、投資信託に変えれば、配当金や分配金等の継続的な収入を得ることも可能です。
また、物件購入時に住宅ローンを組んだ場合は住宅ローンの完済や、固定資産税や都市計画税がなくなる、住まいの買い替えができるといったメリットもあります。
不動産を売却する際、不動産仲介会社選びを間違えると相場より安い金額で売り出されてしまう可能性があるので注意が必要です。できるだけ納得できる金額で売却するためにも、不動産一括査定サービスを利用し、複数の不動産仲介会社に査定を依頼するのがおすすめです。
また、売却した後に地価が上がるということも考えられます。これについてはタイミングの見極めが重要になるのですが、不動産は時間が経つほど資産価値が下落します。思い切って売却したほうがいいケースもあるので、実績と経験が豊富で信頼できる不動産仲介会社を選ぶようにしましょう。
不動産運用を成功させるためには、信頼できる不動産仲介会社を選ぶことはもちろん、それ以外にもおさえておくべきポイントがいくつかあります。ここでは、その中でも最低限おさえておきたい4つのポイントをご紹介します。
不動産運用における手続きや管理業務等は不動産仲介会社に任せるべきですが、売買のタイミングや狙う利益においては、最終的に自分で決めなければなりません。
そのため、自分である程度の不動産に関する専門知識をつけておくことが大切です。
不動産運用においては経済や社会情勢も大きく影響します。このような要因も成約価格と密接に関係しています。そのため、普段から経済や社会の動きに注意を払い、自分である程度情勢判断ができるようにしておきましょう。
経済情勢の知識が全くない場合、不動産仲介会社や第三者の意見に左右されてしまい、適切な判断ができない可能性があります。
不動産運用は、短絡的な視点で行ってもうまくいきません。もちろん、経験という意味で短期的な運用を繰り返すケースもありますが、基本的にはスピードが勝負になるような投資法とは性質が異なります。
そのため長期的な視点を持ち、複利での運用を活用しながら不動産運用していくようにしましょう。
これはどの投資においてもいえることですが、一つの方法に依存していると、失敗した際のリスクも大きくなります。そのため、一般的に資産運用はいくつかの資産に分配し、リスクを最小限に抑えることが重要であるとされています。
不動産運用においては、複数のアパートやマンションを購入・運用するのが分散投資になります。もし、一つの物件が赤字になったとしても、他の物件でカバーすることが可能です。
不動産運用には、売却して売却益を得る方法と、賃貸で家賃収入を得る方法の2種類があります。それぞれ運用方法やメリット、リスクなどが異なりますので、これらを考慮したうえで、自分に合った運用方法を選択するのがおすすめです。しかし、不動産運用を全て個人で判断するのは難しいため、まずは不動産一括査定サービスを利用し、信頼できる不動産仲介会社を探すことから始めましょう。
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宮本弘幸
宅地建物取引士
1960年石川県加賀市生まれ。大学卒業後、大手ハウスメーカーの営業として20年勤務した後、地元、金沢小松、加賀で不動産・住宅の営業に携わる。2016年より、石川県小松市にて、株式会社みやもと不動産を開業。宅地建物取引士のほか、ファイナンシャルプランナー(AFP)、相続診断士などの資格を保有。
河野雅人
公認会計士・税理士
東京都新宿区に事務所を構え活動中。大手監査法人に勤務した後、会計コンサルティング会社を経て、税理士として独立。中小企業、個人事業主を会計、税務の面から支援している。独立後8年間の実績は、法人税申告実績約300件、個人所得税申告実績約600件、相続税申告実績約50件。年間約10件、セミナーや研修会などの講師としても活躍している。
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