公示地価とは、国土交通省が調査・発表する土地の価格のことです。
その情報はWeb上で公開されており、国土交通省が提供している「標準地・基準地検索」から閲覧することが可能です。
2019年1月1日時点での公示地価で、1平方メートル当たりの価格が最も高かったのは東京都中央区銀座4丁目の山野楽器銀座本店のビルが建つ土地でした。価格は5,720万円/平方メートルで過去最高を更新しました。この最高価格の土地のみならず、銀座の土地は全体的に上昇しています。
ただ銀座の地価は、ほかの地域とは異なる要因で値上がりしています。
土地の価格は普通、大規模マンションなどが建ったり、再開発が行われたりして、土地の売買が活発になると高騰します。しかし山野楽器の土地を含め、銀座はあまり土地が売りに出されることがないので、結果として売買が活発ではありません。
それでも価格が上がっているのは、「ここの土地が市場に出回れば高額な取り引きが行われる」という期待があるからです。
多くの企業が「日本一の商業地、銀座に店を出したい」と考えています。銀座に店を出しても日本一の売上高が保証されているわけではありませんが、銀座出店は企業に「箔(はく)」をつけるというブランド価値が、銀座の地価を支えていると言えるのです。
公示地価と似た土地の価格に、路線価があります。公示地価は国土交通省が調査しますが、路線価は国税庁が調査します。
こちらも公示地価と同様にWeb上で公開されていて、国税庁が提供する「路線価図・評価倍率表」を見ることで確認することが可能です。
2018年の路線価日本一は、銀座5丁目の「鳩居堂前」で、1平方メートル当たりの価格は4,432万円でした。こちらも過去最高を更新しました。
鳩居堂前の土地が路線価日本一になっているのも、銀座効果といえるでしょう。
山野楽器と鳩居堂は100メートルしか離れていませんし、周囲には銀座三越や和光本館のほか、ルイ・ヴィトンやディオールなど高級ブランドの旗艦店も並びます。このような高級ブランドが集まることによって、銀座そのものもブランド価値が保たれている考えることができます。
公示地価は全国の約2万6,000地点の土地の価格を調べるのですが、そのなかで最も上昇率が高かったのは北海道倶知安町でした。倶知安町の複数の地点が上昇率ランキングで上位を独占し、1位の地点は前年(2018年)比58%高という急騰ぶりでした。
倶知安町は元々、北海道内ではどこにでもあるジャガイモが特産品の小さな町でした。倶知安町のゆるキャラは「じゃが太くん」といい、ジャガイモがスキーをしているデザインになっています。
その倶知安町の地価上昇を全国第1位に押し上げた要因とは、外国人による別荘地化です。倶知安町を含むニセコエリアは20年以上前にオーストラリア人たちによって「街の魅力」が再発見されました。倶知安町は、冬は上質なパウダースノーが楽しめるスキー場、夏は豊富な水量でラフティング(川下り)が楽しめる河川など、アウトドアアクティビティ天国だったのです。
オーストラリアの不動産投資が一巡すると、今度は中国や台湾などのアジアの富豪が倶知安町のコンドミニアムを購入するようになりました。複数の海外資本が倶知安町にホテルを建設しています。
最近は日本を訪れる外国人観光客が急増し、インバウンド需要が日本経済を支える重要な収入源の一つとなっていますが、倶知安町はその先駆け的存在なのです。
公示地価、路線価は不動産の適正価格を見定める指標になります。
特に路線価については、実勢価格の8割程度に定められているので、路線価を0.8で割り戻した価格が一つの参考になります。
そのため、不動産の売却をする際などは、不動産仲介会社が提示をしてきた金額と、公示地価や路線価を割り戻した価格を見比べるようにしましょう。
ただし、査定した価格と実際に成約する価格は必ずしも一致するわけではありません。
不動産仲介会社は売主様の希望を叶えるために様々なサポートを行います。
そのため、良くも悪くも「参考程度」に収めるようにしましょう。
価格でも上昇率でも、日本一になる土地は、それぞれの要因が存在することがわかりました。まさに、土地は経済と地域の実情を映す鏡、というわけです。土地の価値が変わる理由は様々なものが考えられますので、興味のある方は、さらに詳しく調べてみることをおすすめします。
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田井 能久
不動産コンサルタント
不動産鑑定士として25年のキャリアを持つ。訴訟や調停、並びに相続等の税務申告のための鑑定評価書の作成が得意。最近はマレーシアを中心としたビザの取得と海外移住のサポートを通して、トータルな資産コンサルティングも展開している。
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