「内見を開く前に片付けや掃除をしておいてください」とアドバイスされると、「うちはいつも片付いているし掃除も怠ったことはない」と感じる人もいるでしょう。
しかしこれは決して、「散らかっていて汚い」と指摘しているわけではありません。
住人による「普通の片付け」と「内見に向けた片付け」は、片付けの程度が大きく異なります。
内見前の片付けの理想としては、モデルルームの内装を参考にすることがおすすめです。モデルルームの清潔感と無駄のなさは、内見が成功するカギの一つになるとも考えられます。
内見に向けた準備では、なるべく「生活の名残り」を消すことを目指しましょう。なぜなら、初めて訪問する他人の家に違和感を覚える人もいるからです。
たとえば生活の名残りが出やすい場所に水回りがあります。トイレ、浴室、浴槽、台所に洗剤や掃除器具を置いている家庭は多いかもしれませんが、内見の日だけでいいのでそれらを撤去しておいたほうがいいでしょう。
内見は、すでに住人が引越していて空の状態でしたほうがいいのですが、住みながらすることも珍しくありません。その場合、不要な家具は内見前に処分してしまいましょう。
そのほうが、部屋が広く感じられるからです。したがって不要な家具だけでも撤去できれば、その分部屋が広くなり、内見参加者の好印象につながります。
空間の広さの印象は一瞬で決まり、そして長時間残ります。購入希望者がダイニングリビングに入った瞬間に「なんか狭いな」と感じたら、その印象はその家を買うか買わないかの決断に響いてしまうかもしれません。
購入希望者が内見したときに「広い部屋だな」と感じると、自身の家具を配置するイメージを持ってもらうことができます。家具の配置イメージこそ「住みたい」につながる貴重な一歩になるでしょう。
ハウスクリーニングという掃除サービスは、内見を開くオーナー(売主様)にとって強い味方になるでしょう。
ハウスクリーニングといっても清掃の対象は、カーペット、フローリング、ガラス、台所、洗面所、トイレ、浴室、換気扇、壁紙、ソファなど、住人が普段している掃除と同じです。
ではプロの清掃は何が違うのかというと、道具と洗剤とテクニックです。
たとえば水回りの清掃では、水垢をキレイに落とすのは大変です。いくら普段からこまめに掃除し、水垢のつかないように用心していても、メッキは曇っていってしまうものです。
しかしハウスクリーニングでは特殊な洗剤を使うので、金属をいためずに水垢を落とし、メッキの輝きを取り戻すことができます。
またソファの洗浄も、家庭では固く絞った濡れ雑巾で拭くか、掃除機でほこりを吸い取るしかしかできないと思いますが、それではソファのシミやしみついた生活臭は落とせません。ハウスクリーニングで使う掃除機は吸引力が違うので、ソファの「しわ」の間の細かいゴミも吸い取ることができます。またシミ抜きもしてもらえます。
そして風呂回りの清掃では、高圧洗浄機を使って目地の汚れも浮き立たせて取り除いてくれます。
ハウスクリーニングのフルコースを依頼すると、一般的に代金は80平方メートルほどのマンションで10万円ほどになります。
決して安い金額ではありませんが、「お客様」である購入希望者を迎え入れるには必要な出費といえます。
ハウスクリーニングは部分的に依頼することもできるので、たとえば「居間だけ」「水回りだけ」といったように発注すれば、費用を抑えることもできます。
断捨離と片付けと清掃以外にも、内見に向けて準備しておいたほうがよいことがあります。
たとえば消臭剤や芳香剤を使って家の臭いを消すようにしましょう。「その家の臭い」は、住人の嗅覚では検知できなくなっています。家の臭いがあると、内見参加者に「他人の家に入った」という印象を抱かせてしまいます。消臭剤などで「他人の家に入った」印象を少しでも薄めましょう。
その他にも、晴天の日の昼間でも電灯をつけて部屋を明るくする、花を飾る、スリッパを用意する、笑顔で迎え入れるといったことに配慮してみてください。
内見参加者は「お客様」です。しかも数百万円から数千万円の家を購入してくれる、超上級のお客様です。内見の準備は、VIPを迎え入れるつもりで進めましょう。
片付けや清掃が行き届いていると、家の印象だけでなく、オーナーに対する印象もよくなります。オーナーに対する印象が悪いと、購入希望者はときに「物件は気に入ったけど、あの人から家は買いたくない」と思うこともあります。
片付いている家のオーナーは「きちんとしている人」という印象を与えることができるのです。
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小林弘司
不動産コンサルタント/不動産投資アドバイザー
東京生まれ、東京育ち。海外取引メインの商社マン、外資系マーケティング、ライセンス会社などを経て、現在は東京都内にビル、マンション、アパート、コインパーキングなど複数保有する不動産ビジネスのオーナー経営者(創業者)です。ネイティヴによる英語スクールの共同経営者、地元の区の「ビジネス相談員」、企業顧問なども行っています。
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