住宅は、定期的なメンテナンスを行う事で経年劣化のスピードを抑える事が出来ますが、それでも経年劣化は発生してしまう為、時間の経過とともに価値が下がっていくことが一般的です。総務省でも、家は月日の経過とともに劣化していくことを前提に家の耐用年数を規定しており、それを法定耐用年数といいます。耐用年数とは「その年数は物品として使用に耐えうる」とみなす期間のことです。
木造一戸建て住宅の耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造のマンションの耐用年数は47年と決められています。すなわち法律上は、木造戸建て住宅は22年で、鉄筋コンクリート造マンションは47年で使用に耐えない状態とみなされるのです。
もちろん実際は、法定耐用年数が過ぎても人が住める物件はたくさんあります。しかし中古不動産市場では、この耐用年数が重要な意味を持ちます。
たとえばリフォームやメンテナンスをしっかりして、見た目も機能も申し分ない状態を保っている家でも、売買交渉のときに買い手から築年数が経過していることを理由に値下げを要請されれば、売主様は応じざるを得なくなるケースもあります。
したがって家を売ると決めたなら、基本的には売却を先延ばしすることなく、すぐに動き出したほうがいいのですが、その前にもう一つ考えなくてはいけないことがあります。それは譲渡取得税についてです。
家を売ると譲渡所得(利益)が発生し、譲渡所得税(譲渡所得にかかる所得税と住民税の総称)を納付することになります。
この譲渡所得税の額は、家を購入してからすぐに売却すると高くなり、長期間保有して売却すると安くなります。その境界線は5年です。
所有期間5年以下の短期譲渡所得税の税率は39.63%で、5年超の長期譲渡所得税の税率は20.315%です。
譲渡所得税は「譲渡所得税=課税譲渡所得×税率」で算出します。
たとえば、家を売却し課税譲渡所得が2,000万円になった場合、短期、長期それぞれの税額は次のとおりです。
・短期譲渡所得税の額:792.6万円
・長期譲渡所得税の額:406.3万円
差額は386.3万円になります。
たとえば、家を買ってから4年が経過したころに売却したくなった場合、すぐに売ってしまうか、1年待って長期譲渡所得税にするかは慎重に考えるべきです。
「売却を1年延ばすことによる価値低下の損」と「短期譲渡所得税を払うことの損」をしっかり計算して、最適な売却時期を決めましょう。
一方で、たとえば購入して1年で諸所の理由から売却を決意したら、5年を待たずに売ってしまったほうがいいことがあります。
それは「短期譲渡所得税を払うことの損」より、「5年経過することの損」のほうが大きくなる可能性があるからです。短期譲渡所得税を支払ってでも売却したほうが「得」と考えることができます。
損得の計算は、不動産市況や対象となる家の状態によっても変わってくるので、不動産仲介会社に相談することをおすすめします。
まれではありますが、売却時期を遅らせたほうが適正な価格で売れることもあります。たとえばマスコミに「お洒落な街」として取り上げられることが多くなると、その地区の中古マンションの相場が上昇することがあるのです。
街は進化することがあります。たとえば土地や物件が安く、若者や学生が多く住む街でも、そこに独自の文化が形成されていくにつれ、いつしか住みたい街に変わることもあります。
都心部から離れた郊外の住宅地でも、富裕層や感度の高い住民が増えると高級商業施設が建ったり行政サービスが向上したりして、人々が住みたい街になります。
不動産価格は地域の人気の影響を受けやすいので、こうした街の中古物件は適正な価格で売ることができる可能性が高いです。
景気のよい事例を紹介しましたが、地方を中心に、20年以上公示地価の前年割れが続いている県は珍しくありません。地価が下落しているということは、住宅需要が縮小している可能性が高く、その場合、中古住宅の価格はさらに下がり続けることもあります。
そのような地域の家は、なるべく早く売ってしまうことが鉄則となるでしょう。
ほとんどの人にとって、家は個人の資産のなかでもっとも高額なものでしょう。
大切な資産である家を適正な価格で売却するためには、複数の不動産仲介会社に家の査定を依頼したり、不動産仲介会社の担当者から中古不動産動向の情報を集めたりする必要があります。そのなかから「適切な売り時」をみつけてください。
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小林弘司
不動産コンサルタント/不動産投資アドバイザー
東京生まれ、東京育ち。海外取引メインの商社マン、外資系マーケティング、ライセンス会社などを経て、現在は東京都内にビル、マンション、アパート、コインパーキングなど複数保有する不動産ビジネスのオーナー経営者(創業者)です。ネイティヴによる英語スクールの共同経営者、地元の区の「ビジネス相談員」、企業顧問なども行っています。
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