相続や贈与などで受け継いだマンションを売却したいと考えるなら、最初に「不動産の名義が誰になっているのか」を確認しましょう。不動産の名義が自分ではないマンションでも、居住用に使う分には何も問題はありません。しかし、名義変更を放置しておくと売却したり、再度相続が発生したりしたときに手続きが複雑になってしまいます。
ただ、法律的には「いつまでに不動産の名義変更をしなくてはいけない」という規定がないため、名義変更をしないままになっているケースは意外と多くあるのです。とくに相続や贈与などの場合、費用も掛かり面倒な名義変更は放置されることが少なくありません。
そのため、相続した時点で法務局に出向いたり、オンラインで申請したりして登記事項証明書(登記簿謄本)を閲覧し、不動産の名義が誰になっているかを確認しておきましょう。
名義変更がされていないままだと、マンションをいざ売却する際、名義変更の手続きが必要となり思うようなタイミングで売却できません。そのため、マンションを売却することを検討するタイミングで、名義変更の手続きは済ませておくようにしてください。
マンションの名義を自分に変更すると、第三者に対して当該不動産に対する所有権を主張することができます。自分の名義でないマンションの売却手続きは進められません。登記事項証明書に記載されている権利者のみが、売却の手続きを進められます。
マンションの名義変更手続きは、物件の管轄の法務局でおこないます。法務局にある登記事項証明書に書かれている権利者の名前を自分に変えるだけなのですが、必要書類などさまざまなものをそろえることが必要です。そのためこの手続きは司法書士に依頼するのが一般的で、費用の相場は3万~5万円となっています。
マンションの名義変更をする際は、分譲マンションの場合でも賃貸マンションのオーナー変更の場合でも、所有権変更の手続きが必要です。名義変更に必要な書類は、名義変更事由によって変わります。
それぞれの事由を証明する書類と、自分の身元を証明するための書類を揃えると考えてください。詳しくは、その物件を管轄する法務局に問い合わせるのが一番です。
なお、遺産の相続や生前贈与は、何かと問題が生じることが懸念されます。
複数の相続人がいる場合での名義変更には、遺産分割協議書が必要になりますので、相続人同士の協議が不可欠です。相続人や親族などとよく話し合い、のちのちトラブルにならないように注意しましょう。
ここでは、名義変更として一般的にみられる4パターンについて、必要な書類を列挙します。
被相続人(亡くなった人)や相続人の必要書類は、相続人がすべての書類をそろえます。具体的には下記のような書類が必要になります。
・登記原因証明情報(被相続人、相続人の戸籍謄本や除籍謄本など)
・登記済権利証または登記識別情報
・相続する人の住所証明書(マイナンバー記載のない住民票)
・印鑑登録証明書(発行日が提出時より3ヶ月以内のもの)
・委任状(届け出を司法書士などの代理人に委任する際に必要)
・固定資産評価証明書
贈与する側とされる側の双方で、それぞれに書類を用意します。
[双方で用意]
・贈与契約書(自分で作成したものも可)
・贈与証書
[贈与する側で用意]
・登記済み権利証または登記識別情報
・印鑑証明書(発行日が提出時より3ヶ月以内のもの)
・固定資産評価証明書
[贈与される側で用意]
・住所証明書(マイナンバー記載のない住民票)
元の名義人と新しい名義人の双方で、それぞれ書類を用意します。
[双方で用意]
・離婚協議書
・財産分与契約書
・戸籍謄本
[元の名義人]
・登記済み権利証または登記識別情報
・印鑑証明書(発行日が提出時より3ヶ月以内のもの)
・固定資産評価証明書
[新しい名義人]
・住所証明書(マイナンバー記載のない住民票)
売主様と買主様の双方で、それぞれに書類を用意します。
[双方で用意]
・売買契約書
[売主様が用意]
・登記済み権利証または登記識別情報
・印鑑証明書(発行日が提出時より3ヶ月以内のもの)
・固定資産評価証明書
[買主様が用意]
・住所証明書(マイナンバー記載のない住民票)
手間はかかりますが、自分で名義変更(所有権移転登記)をすることもできます。少額の土地取引や家族間の取引の場合は、不動産仲介会社や司法書士を介さず、自分で手続きを進めてしまうのも一つの方法です。自分で所有権移転登記をおこなう場合、司法書士に支払う報酬は不要となります。
ただ、金額の大きな不動産取引や、権利関係が複雑に絡み合っているなどトラブルが考えられる場合は、第三者である司法書士にお願いするほうが安心です。この辺りは、個別に判断してどうするかを決めるとよいでしょう。
自分で手続きをおこなう場合は、マンションを管轄する法務局に出向き、名義変更の相談をするところから始めましょう。名義変更の事由に合わせてどのような書類が必要かということなど、手続きの進め方とそろえるべき書類について、具体的に教えてもらえます。
マンション売却前に済ませておきたい名義変更の意義やその方法、必要書類について解説しました。マンションの名義変更をする方法としては、自分自身で手続きするパターンと司法書士に依頼するパターンがあります。それぞれ一長一短がありますので、自分のケースはどちらが相応しいかを検討してください。
「何度か不動産取引をして慣れている」「少額の取引」「家族間の取引でトラブルがない」といった場合は、自分自身で手続きを進めるのもよいでしょう。不動産取引に慣れていない人や資産の金額が大きい場合、名義変更に際してトラブルになる可能性がある場合などは、第三者である司法書士にお願いすると安心です。
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小林弘司
不動産コンサルタント/不動産投資アドバイザー
東京生まれ、東京育ち。海外取引メインの商社マン、外資系マーケティング、ライセンス会社などを経て、現在は東京都内にビル、マンション、アパート、コインパーキングなど複数保有する不動産ビジネスのオーナー経営者(創業者)です。ネイティヴによる英語スクールの共同経営者、地元の区の「ビジネス相談員」、企業顧問なども行っています。
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