自宅の売却に向けて、仲介会社A社と媒介契約を結ぶことに決めた新井彰伸と妻の寛子。第3回では、買主を探すための売却活動を中心に、仲介会社のサポートを受けながら住み替えに向けて着実に動き出した新井家の姿をお届けします。
登場人物
新井 彰伸 (あらい あきのぶ)
新井家の大黒柱。電機メーカー勤務。好きな食べ物はエビフライ。O型。
新井 寛子 (あらい ひろこ)
新井家をささえるしっかりママ。趣味はペナント集め。A型。
田中 誠 (たなか まこと)
不動産仲介(株)A社勤務の敏腕営業。名前の通り誠実さがモットー。
売却活動の内容は?どんな報告が受けられる?
よく晴れた休日の午後、彰伸と寛子はふたり揃って
専任媒介契約を結ぶためにA社を訪れた。
- 田中:
- 「この度は、弊社に不動産の売却をご依頼ただけるとのことで、誠にありがとうございます。新井さまのお役に立てるように精一杯頑張ります」
- 彰伸:
- 「こちらこそ、よろしくお願いします」
- 寛子:
- 「田中さんのおかげで住み替えの不安もずいぶん軽くなりました」
- 田中:
- 「ありがとうございます。ではさっそくですが、ご契約の前に売却活動の内容を改めて説明させていただきますね。今回、新井さまには戸建てへの買換えを目的に、現在お住いのマンションの売却査定をご依頼いただきました。その結果、販売価格を3,500万円として提案させていただきました」
- 彰伸:
- 「はい、低い価格だったらどうしようと思っていたんですが、ひとまず安心しました。ちなみにその価格で売れた場合だと、住み替え先はどのくらいの予算で探せそうですか?」
- 田中:
- 「売却価格から現在のお住いのローンの残債や諸費用を引いた残り分と、自己資金、それに返済計画をもとにおおよその銀行ローン借り入れ可能額をもとに考えると、4,200万円から4,500万円までの物件が目安になるでしょうか」
- 彰伸:
- 「その価格帯なら、中古だけでなく新築物件も対象にできそうですね」
- 田中:
- 「はい、新築も含めてご要望にあった物件を探すように努めます」
- 彰伸:
- 「ありがとうございます」
- 寛子:
- 「それで、物件探しはいつ頃から始められそうですか?」
- 田中:
- 「今日からでもお探しいただけますよ。物件選びはタイミングも重要なので、なるべく多くの物件をご覧いただきたいと考えております。実は、今日も千葉県でも比較的都内に近い物件の資料をいくつかご用意しています」
- 彰伸:
- 「それは有難い」
- 寛子:
- 「けれど、売れるかどうかもまだわからないし、住み替え先探しも一緒に進めるなんて、少し心配だわ」
- 田中:
- 「ご安心ください。売却から、購入、お引越しまで無理なく進められるようにスケジュールを組むようにいたしますので」
- 彰伸:
- 「売却も購入も一緒に進めれば、引越しもスムーズに行くだろうし、いいんじゃないか」
- 寛子:
- 「そうね。売るだけじゃなくて、新しい生活の事もしっかり考えたいしね。田中さんのご提案でよろしくお願いします。」
- 田中:
- 「ありがとうございます。売却活動の内容ですが、売却提案書にも記載の通り、弊社の顧客として登録された購入希望のお客さまに新井さまの売却物件の情報をご案内します。それと同時に、不動産専門の情報誌やWebサイトに広告を出稿。また、REINS(レインズ)という国土交通省が認可した不動産流通機構が運営するネットワークシステムにも売却物件として登録します。そうすることで、より多くの方にアプローチすることができますよ」
- 彰伸:
- 「それは頼もしい!」
- 寛子:
- 「たくさんの人に物件情報を見てもらえそうね」
- 田中:
- 「売却活動のご報告頻度は、媒介契約の種類によって異なる(※)のですが、新井さまが選択された専任媒介契約の場合ですと、2週間に1回以上の割合で報告させていただくことになります。期間中に実施した広告内容や出稿量、ホームページ上での物件閲覧数、電話やメールによる問い合わせ数、購入希望者が現れた場合はその結果など、媒介業務経過報告書という形にして提出させていただきます」
- 彰伸:
- 「報告が待ち遠しくなりそうだな」
- 寛子:
- 「たくさん反響があるといいわね」
そのほか、田中から売却にかかる主な費用(※)などについて説明を受けて、彰伸と寛子は納得のもと専任媒介契約書にサインした。
MEMO
- 媒介契約の種類で異なる売却活動報告
- 仲介会社による売却活動の報告頻度は、媒介契約の種類によって異なります。
専属専任媒介契約の場合は1週間に1回以上、専任媒介契約の場合は2週間に1回以上の報告義務が法律によって義務付けられています。(一般媒介契約の場合、報告の義務はありません。)
- 売却にかかる費用について
- 不動産の売却時には下記の費用が主に発生します。
1.仲介手数料
2.住宅ローンの残債がある場合は「抵当権抹消費用」「司法書士報酬」
3.売買契約書に貼付する印紙代
4.売却によって利益が出た場合は譲渡所得税が課税など
初めての売却活動報告。反響が少なくて心配になったけれど…
彰伸と寛子がA社と契約を結んでから2週間後の週末、田中が売却活動の状況報告書類と住み替え先候補の物件情報を持って新井家に訪れた。
- 田中:
- 「今日は、1回目の売却活動状況のご報告に伺いました。住み替え先物件候補も新たに見つかりましたので、後でご覧いただければと」
- 彰伸:
- 「わざわざありがとうございます」
田中から手渡された媒介業務経過報告書に目を通す彰伸と寛子。
- 彰伸:
- 「思っていたよりも反響が少ないですね…」
- 田中:
- 「まだ売却活動を始めて2週間しか経っていないので、それほど心配されることはありません。それに、次の展開も考えてあります」
- 寛子:
- 「え、次の展開?」
- 田中:
- 「はい。広域での告知は、不動産専門のWebサイトや情報誌を活用して、今まで通り進めていきますが、近隣への告知にも力を入れたいと考えています。物件の立地の良さをよく知っている客層をターゲットに、近隣への新聞の折込みチラシやポスティング広告を検討中です。それと、弊社の店舗やホームページ上での告知にもさらに力を入れていきます」
- 寛子:
- 「ありがとうございます。買主さんが早く見つかるといいんだけれど…」
- 彰伸:
- 「そう焦らずに、田中さんにお任せしようよ」
そして数日後、田中から彰伸の携帯に連絡があった。A社に顧客登録された顧客から、実際に物件を見たいという問い合わせがあり、
内覧の日程を調整したいという。彰伸は、会社から帰宅するとすぐに寛子に報告した。
- 彰伸:
- 「今日田中さんから連絡があったよ。家の中の状態を見たいっていう人が現れたらしい」
- 寛子:
- 「よかったじゃない!それで、いつ頃を希望されているの?」
- 彰伸:
- 「それが、土日が仕事で忙しいらしく、なるべく早めの平日に見たいんだって」
- 寛子:
- 「そうなのね…。いまはわりと仕事が落ち着いているから、私一人の対応でも大丈夫なら、お休みが取れるよう上司に相談してみるけど」
- 彰伸:
- 「本当に!?それは助かるな。じゃあ、明日田中さんに連絡して、寛子だけでも問題ないか聞いてみるよ」
物件の内覧はどんな準備をすればいいの?
翌日、彰伸は会社の休憩時間を利用して田中に電話をかけて、内覧のことやそのために必要な準備について相談した。
- 彰伸:
- 「昨日ご連絡いただいた内覧の件ですが、妻一人が対応する形でよければ平日でも調整できそうなんですが」
- 田中:
- 「奥さまお一人でも問題ありませんよ。新井さまもご心配でしょうが、私がしっかりサポートさせていただきます。お客さまの質問には、私もお答えできるようにしておきますので」
- 彰伸:
- 「それは心強いです!じゃあ、妻と相談してこちらの希望日をメールでお送りしますね」
- 田中:
- 「わかりました。お待ちしております」
- 彰伸:
- 「それと、教えてほしいんですが、家の中を見てもらうのにどんな準備をすればいいでしょうか?初めてのことなんで見当がつかなくて」
- 田中:
- 「特別に何か準備をしていただく必要はありません。いつもより少しお掃除やお片づけに力を入れていただければ大丈夫です。それと当日は、カーテンを開けて、照明をつけてお部屋の中を明るくしておくと、ご覧になられる方への印象もグッと良くなりますよ」
- 彰伸:
- 「そうなんですね!妻にもそのように伝えます」
会社から帰宅後、田中と話をした内容を寛子に伝える彰伸。平日で寛子が休みを取れそうな日をいくつかピックアップして、その日のうちに田中にメールを送った。
- 彰伸:
- 「これでOKと。あとは、家の中をキレイにしないとね」
- 寛子:
- 「家を買ってくれるかもしれない人に家の中を見られるなんて、なんだか緊張しちゃうわ。挨拶やおもてなしの練習をちゃんとしておかないと」
- 彰伸:
- 「(笑)いつもと同じ、自然体で対応すればいいって田中さんが言っていたよ」
- 寛子:
- 「自然体…意識すると逆にわからないものね。とにかくこの家を気に入ってもらえるように頑張ってみるわ」
そして翌日の夜、田中から内覧日が確定したと返信が届いた。その知らせを見て、住み替えに向けてまた一歩前進したことに、興奮と期待で胸が高鳴る彰伸と寛子だった。
【次回告知】 次回は、サラリーマン新井彰伸「買主と自宅の売買契約を結ぶ」編をお届けします。お楽しみに!
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