まずはリーマンショック時のマンション市況について解説します。
結論からいうと、リーマンショック時のマンションの価格は緩やかに下落し、水準価格に戻るまで2~3年がかかりました。具体的に価格・契約率・供給戸数を見ていきましょう。
2008年9月のリーマンショックを経て、マンションの価格は緩やかに下落しました。以下が、リーマンショック以降の首都圏における中古マンションの価格推移(70平方メートル換算)です。
2008年9月:3,054万円
2008年12月:2,884万円
2009年4月:2,755万円
2009年8月:2,739万円
2009年12月:2,794万円
2010年4月:2,924万円
2010年8月:2,969万円
2010年12月:3,005万円
以上のように、リーマンショック以降、マンションの価格は緩やかに下落していき、2009年8月頃から徐々に戻り始めます。そして、約2年半で3,000万円台まで回復しています。
また、首都圏の新築マンション価格も同様の傾向です。
2007年時点の新築マンション価格は4,644万円、2008年は4,775万円でした。2009年には4,535万円まで下落しましたが、2010年には4,716万円まで上昇しています。
マンションの契約率・供給戸数も、リーマンショックを経て以下のように下落しました。
2007年:69.7%(61,021戸)
2008年:62.7%(43,733戸)
2009年:69.7%(36,376戸)
2010年:78.4%(44,535戸)
契約率とは「初月で売り出した新築マンションの売買契約および申し込み率」のことです。契約率はマンション市況を端的に表す指標になります。好不調の境目は70%といわれており、2007年は69.7%でした。しかし、リーマンショックが起きた2008年の契約率は62.7%と大きく下落しています。
2009年以降は契約率が徐々に回復しています。とはいえ、新築マンションの供給戸数は減少しているので、マンション市況が回復しているとは言い難いです。ただ2010年は2008年と同水準の供給戸数でありながら、契約率も回復しています。そのため、やはり2010年頃からはマンション市況も回復していると考えられます。
次に、リーマンショック時の土地・一戸建て市況について解説します。以下は、首都圏の土地価格(平方メートル単価)と中古戸建て価格の推移です。
2007年:土地23.80万円 中古戸建て3,325万円
2008年:土地21.76万円 中古戸建て3,206万円
2009年:土地20.96万円 中古戸建て2,988万円
2010年:土地20.35万円 中古戸建て2,999万円
上記の通り、土地・中古戸建ての価格もマンション価格と同じように、リーマンショックが起きた2008年を境に下落しています。ただ、マンションとは違い2010年でも価格水準は戻っておらず、中古戸建て価格は2012年以降もしばらくは3,000万円前後で推移しています。
注意点としては、中古戸建て価格は建売・注文住宅などの種類や広さによっても価格が変わります。なお、新築戸建ても同じような推移となっています。
前項で解説した「リーマンショックによる不動産市況の変化」をもとに、コロナによって不動産市況はどうなるのか、考察していきます。
現状、コロナによって不動産価格は大幅に下落していません。しかし、リーマンショック時の状況を見る限り、今後の不動産価格は不透明といえます。そのため、不動産の売買を検討しているなら早めに査定・問い合わせをして、価格を見極めることをおすすめします。
ただし、今すぐの売買を考えているわけではなく、中長期的な売買を考えているのであれば、今後の価格を注視しつつ売り時・買い時を判断した方が良いでしょう。
不動産価格は今後、下落する可能性があります。その理由は以下のとおりです。
それぞれを詳しく考察していきます。
不動産価格は元々不安定な状況が続いていました。
中古マンション・新築マンションともに、2020年1月時点のマンション価格は非常に高い水準です。しかし、契約率は低迷しており、2016年からは好不調の境目である70%を切っています。2018年・2019年はリーマンショックが起きた2008年を含めて、過去20年をさかのぼっても極めて低い水準です。さらに、供給戸数は2016年から4万戸を大きく下回り、供給戸数が少ないにも関わらず契約率は低迷しているという状況でした。
以上のことから、消費者の不動産購入意欲は落ち込んでいた可能性があり、不動産価格はいつ下落してもおかしくない不安定な状態だったといえるでしょう。
コロナによる外出自粛の影響で消費は落ち込んでいます。景気が落ち込んでいるということは消費(需要)も落ち込むため、必然的に不動産価格も下落する可能性があります。
次に、コロナによる不動産市況の変化について、「すまいValue」を運営する大手不動産仲介会社6社の動向を見ていきましょう。現状、不動産購入の問い合わせは順調とのことです。以下より、各社の動向を紹介していきます。
以下のとおりです。
・売却依頼数
A社:変化なし B社:変化なし C社:変化なし D社:減った E社:マンションは少し減った(土地は少し増えた/戸建ては減った) F社:減った |
・価格
A社:下がった B社:下がった C社:下がった D社:下がった E社:マンションは少し下がった(土地は少し上がった/戸建ては下がった) F社:コロナ以前と同等 |
・2020年6月度の問い合わせ数
A社:増えた B社:増えた C社:増えた D社:増えた(過去最高) E社:増えた F社:増えた |
以上から分かるように、売却依頼数はさほど変わっていません。また、不動産価格は下落しているものの「大幅には下落していない」という回答でした。ただ、リーマンショック時の価格推移や契約率の推移を見ると、長期的には不透明といえます。
上記「2020年6月度の問い合わせ数」は、昨年と比べて購入希望者が増加したか否かを表しています。問い合わせ数は増加しているので、購入需要は増加しているということです。
ただ、この問い合わせ数の増加は、外出自粛が影響していると考えられます。つまり、不動産の購入を検討していたものの、外出自粛で動けなかった方が問い合わせしているということです。しかし、それでも過去最高を記録した会社もあり、購入検討者が増えているのは事実です。消費者の不動産を購入する意欲が冷え込んでいたら、ここまでの増加は考えにくいでしょう。
つまり、長期的に見ると不動産価格への影響は不透明な部分があるものの、現在は購入需要が高いといえます。そのため、不動産売却を検討するのであれば、今の時点で査定して不動産価格を見極めたほうが良いと判断できます。
不動産価格はそのエリアにおける需要と供給のバランスに大きく影響されます。そのため、現在の不動産価格を正確に把握するためには、査定が必要になります。
需要とは「不動産を買いたい人の数」のことで、供給とは「不動産を売りたい人の数(物件数)」のことです。日本全体の景気が良かった場合でも、あるエリアに売り物件が集中すれば不動産価格は下がります。
日本全体の市況が良いか悪いか以上に、エリアの需給バランスによって不動産価格は変わります。そして、エリアの需給バランスは、査定することでしか分かりません。だからこそ、早めに査定して自分が売ろうとしているエリアの需給バランスを確認したほうが良いのです。
コロナによる影響で、リーマンショック時と同様、不況に突入することで購入検討者が減る可能性はあります。それにより、不動産価格の下落リスクがあるのは事実です。しかし現状は、不動産価格の大幅な下落は起きていません。
むしろ、2020年6月時点では購入需要は増加傾向にあります。ただ、長期的な影響は不透明なので、不動産の売却を検討しているのであれば早めに査定しておいたほうが良いといえるでしょう。査定することで周辺の状況も把握できるので、いざ売るときにもスムーズに進みます。
不動産の査定をする際は、大手不動産仲介会社に一括で査定を依頼できる「すまいValue」に依頼してみてはいかがでしょうか。
中村 昌弘
宅地建物取引士
都内大学を卒業後に新卒で上場ディベロッパーに就職。マンションの販売・企画・仲介などを経て2016年に独立。独立後は、不動産事業としては主にマンション売却のコンサルタントに従事している。
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