家を購入した後には、住宅ローンのほかにも以下の維持費が継続して発生します。
①修繕費用
②税金
③保険費用
マンションの場合はこれら3種類の維持費に加え、管理費や駐車場利用料などが発生します。
また、家は経年で劣化していくものなので、修繕箇所は年月を重ねるごとに増えていきます。徐々に修繕費用をはじめとした維持費の負担は大きくなるものです。
維持費の負担が大きくなってきた時は、売却(住み替え)という方法もあります。
以下より、将来的に必要になると考えられる家の維持費についてみていきましょう。
修繕費用とは、住居の劣化した箇所の修繕、メンテナンス、リフォームにかかる費用のことをいいます。
修繕は小さいものでは内装の剥がれや変色を直すことなども含んでおり、築5~7年頃から小さな修繕が必要になる場合もあります。
戸建て住宅には、マンションのように修繕積立金制度がありません。外壁や外構を含め、土地建物の修繕はすべて自分で行う必要があります。修繕費用は、戸建て住宅購入時から維持費として貯めておくことが肝心です。
例えば、毎月1万円から1万5000円程度貯めると、10年で120万円から180万円になります。これくらいあると外壁の修繕程度であれば可能な金額となります。
戸建ての場合、一般的に築15年を迎える頃から修繕が必要になるといわれています。
主に以下に挙げる箇所のリフォームを検討していくことになります。
築年数 | メンテナンス内容 |
---|---|
10~15年目 | 水回り(バス、キッチン、トイレ、給湯器、洗面台、給水管)修繕 |
10~20年目 | 外壁(内壁)の塗装、フローリング、壁紙張替 |
15~20年目 | 屋根の塗装 |
必要に応じて | ベランダ、バルコニー、玄関、床下、シロアリ関連 |
こうしてみると、修繕を行う目安は15年前後になります。これはマンションの長期修繕計画の目安とほぼ同じです。戸建て住宅もマンションも同じようなメンテナンスが必要であることを表しているともいえます。
なお、修繕の費用ですが、これは千差万別です。50万円程度ですむ場合もあれば200万円以上かかる場合もあります。外壁や屋根の塗装も塗料の質、足場の有無、会社などによって大きく変わります。外壁と屋根の修繕を一体として行ったり、水回りも一度に交換したりすると割安で工事ができます。
1つひとつの修繕にかかる費用が高額になりやすいため、家の購入時から将来の修繕を見据えた貯蓄をしていくことが大切です。
一方、マンションの場合は、共用部分の修繕であれば、月々支払っている修繕積立金から修繕費用は捻出されます。
ただ、積立金額が足りなければ、特別に負担金を支払わなければならないこともあります。
マンションでは、「小規模修繕」を数年単位で行い、「大規模修繕」と呼ばれる、外壁や配管などの共用部を1棟全体において修繕する工事が10~15年の周期で実施されます。
大規模修繕が実施される場合、毎月支払っている修繕積立金とは別に、一時金と呼ばれる負担金が必要となることがあります。
マンションの大規模修繕周期の目安と実施されるメンテナンス内容の例は、次のとおりです。
〈マンションの修繕周期例〉
築年数 | メンテナンス内容 |
---|---|
4~6年目 | 鉄部の塗装 |
7~10年目 | 鉄部、屋根、屋上、給水ポンプ、雨水排水ポンプなどの小規模な修繕 |
11~15年目 | 第1回大規模修繕工事(屋上防水・電気設備)、インターホンなど |
16~20年目 | 鉄部塗装・屋上防水、自火報関連、機械式駐車場、給排水ポンプなど |
21~25年目 | 第2回大規模修繕工事(給水管交換) |
26~30年目 | エレベーター交換 |
31~40年目 | 第3回大規模修繕工事(玄関ドア交換、サッシ交換、手摺交換)、排水管更新 |
このように、マンションの場合は定期的に「大規模修繕」の費用がかかるのが特徴です。細かい修繕時期や内容に関しては各マンションの管理組合によって異なるので、気になる場合は確認してみましょう。
家の維持費としてかかる税金には、固定資産税と都市計画税があります。
固定資産税とは、土地及び家屋にかかる税金をいい、それぞれの評価額に基づいて以下のように算定されます。
〈固定資産税額の計算方法〉
課税標準額(固定資産税評価額)×1.4%(標準税率)
固定資産税の納税は毎年行う必要があり、一般的には市区町村から送られてくる納付書を利用して納めます(一括もしくは年4回に分けて納付)。
固定資産税額を計算するにあたって使用される「固定資産税評価額」とは、市区町村が土地やその上に建つ家を評価した金額のことです。固定資産税評価額は、3年に一度見直しされることになっています。
さらに、都市計画区域に属している地域では、固定資産税と合わせて都市計画税が課されます。都市計画税とは、都市計画事業や道路事業の資金として使用される税金のことで、市区町村により額が異なります。
都市計画税は以下のように算定されます。
〈都市計画税の計算方法〉
課税標準額×上限0.3%
固定資産税や都市計画税は毎年納税しなければならず、固定資産税の評価額が高くなるほど納税額も高額になります。
この2つの税額は都市部が高く、郊外では安くなります。また、建物が新しければ高く、古ければ安くなります。都市部では20万円、郊外では10万円程度が目安です。
これらの税金には軽減処置もあります。
税金を抑えたい際は、活用することも検討しましょう。長期優良住宅やバリアフリー対応といった軽減措置に細かい条件などが定められています。
詳しく知りたい場合は、税理士などの専門家への相談をおすすめします。
家を購入する際、多くの住宅ローンで「火災保険」への加入が必須になっています。
火災保険は選ぶ商品により保障内容や料金に幅がありますが、年間3万~5万円が相場です。
最近では、火災保険のオプションとして「地震保険」に入ることも多くなっています。
地震・噴火・津波を原因とする火災損害については、火災保険単体では保険金が支払われないため、保障内容を手厚くしたい場合は+3万~4万円(※)で地震保険に加入する必要があります(※地域や構造などで金額は変動します)。
加えて、住宅ローンを借入する場合には、「団体信用生命保険」という保険に加入することがほとんどです。
団体信用生命保険(通称:団信)とは、住宅ローンの返済中に契約者が死亡するなどして返済できなくなったとき、残りの返済を免除してもらえるという保険です。ローンの借入金額が大きいほど、団体信用生命保険料も高額になります。
戸建てやマンションで必要になる家の維持費は、「修繕費用」「税金」「保険費用」の3種類に分けられます。
この中で、戸建てとマンションで大きく異なるのは「修繕費用」です。
マンションでは毎月共用部の修繕積立金、管理費、駐車場代などの維持費を支払うルールがありますが、戸建ては修繕のための貯蓄や積立を自分で行います。
一般的な戸建ての耐用年数は22年とされています。耐用年数が建物の寿命ではありませんが、戸建ての場合は築35年を迎える頃までに修繕費だけでも数百万円かかることが想定されます。
マンションでは管理費で賄われているセキュリティ対策も、戸建ての場合、家庭用防犯グッズを自費で導入することになります。また、同じ広さであれば戸建てのほうが割高な光熱費になりやすいなど、戸建てとマンションでは維持費や継続的な出費に差が出やすいことを知っておきましょう。
家を持つ場合に必要な維持費は大きく分けて、①修繕費用(修繕積立金)②税金③保険費用の3種類があります。
それらに加えて、マンションの場合は管理費や駐車場代も支払う必要があります。
戸建てでは築年数の経過と共に高額な修繕費用がかかるケースも多いため、自主的に維持費を見据えた貯蓄や積み立てを行うことが大切です。
また、戸建て・マンションのどちらにしても、家の維持費は払い続ける必要があります。
「金銭的な負担を避けるために時機を見て売却する」ということも1つの選択肢として覚えておきたいポイントです。
家の相場を知る方法ついて詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。
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宮本弘幸
宅地建物取引士
1960年石川県加賀市生まれ。大学卒業後、大手ハウスメーカーの営業として20年勤務した後、地元、金沢小松、加賀で不動産・住宅の営業に携わる。2016年より、石川県小松市にて、株式会社みやもと不動産を開業。お客様のニーズをよく共有し、最適な提案を行う営業スタイルで、お客様に愛される不動産業を心がけている。宅地建物取引士のほか、ファイナンシャルプランナー(AFP)、相続診断士などの資格を保有。
酒向 潤一郎
税理士
J'sパートナー総合会計事務所(酒向潤一郎税理士事務所)にて、税理士として会計事務所の経営を行う一方で、一部上場IT企業の幹部や投資会社の監査役などを務める複業税理士。最近では開業・副業コンサルに注力。会計専門誌などにも複数寄稿している。
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