仲介手数料の解説に入る前に、マンションの売却がどのように進んでいくのか、マンション売却の流れについて知っておきましょう。物件の条件や不動産仲介会社によって多少変わりますが、おおむね次のような流れが一般的です。
売却したいマンションがいくらで売れるのか、不動産仲介会社などに相談する前に、下調べとしておおよその相場をつかんでおきます。インターネットの不動産物件情報サイトやレインズマーケットインフォメーション(※)で、売却したいマンションと条件が同じような物件がいくらで売買されているか、取引事例を参考にするといいでしょう。
最寄り駅が同じだったり、駅からの距離が同じくらいの物件、築年数が近い、広さが同じくらいといった物件の情報は参考になります。同じような物件の取引があまりない場合は、広さ以外の条件が似たような物件を探して、坪単価や平米単価を算出し、手持ちのマンションに当てはめて計算します。
また、不動産物件情報サイトに掲載されている価格は、売主様の希望価格です。実際に売買されている価格よりも高くなっていることが多いので注意が必要です。
次に、マンションを売却するために必要な書類を準備しましょう。書類は種類が多いですが、売却活動と並行して準備していけばいいので、焦って取り組まなくても大丈夫です。いざ取引が始まれば不動産仲介会社の担当者が用意すべき書類を教えてくれます。
【必要書類の例】
不動産仲介会社にマンションの価格の査定依頼をします。不動産仲介会社の査定は、まず情報(物件情報、公示価格、周辺取引事例、市場動向など)をもとに判断する机上査定(簡易査定)が行われ、結果が連絡されます。この机上査定の結果を比較検討して、訪問査定を依頼する不動産仲介会社を選ぶのが一般的です。そのため机上査定は複数の仲介会社に依頼したほうがいいでしょう。
査定の依頼は個々の不動産仲介会社に直接電話やメールで問い合わせることもできますが、複数の仲介会社と同時にやりとりをするのは、同じデータを何度も入力したり、同じ事を何度も伝えたりしなければいけないため煩雑です。そんな手間を省くためにも、信頼できる不動産仲介会社が多数登録している一括査定サイトを利用することがおすすめです。
簡易査定の結果を比較検討して、実際に現地に端を運んで査定してもらう訪問査定の依頼先を選定します。訪問査定は不動産仲介会社がプロの目で物件を実際に確認し、客観的な視点で価格を算定するものです。判断基準や価値観、会社のカラーなどで、訪問査定の結果は依頼先によって大きく差が出ることもあるので、複数の不動産仲介会社に依頼して金額の差についてしっかり確認しましょう。実際にスタッフが訪問する時間は30分から1時間程度ですが、現地での立ち会いが必要になるためスケジュールを調整しましょう。
訪問査定は取引事例比較法、収益還元法、原価法の3つがあり、居住用マンションはほとんどが取引事例比較法で査定されます。取引事例比較法は、査定される物件と同じような条件の物件が、1坪 (約3.3平方メートル) あたりいくらの単価で取引されているのかを調べ、それに築年数、間取り、広さ、日照、室内状況、交通アクセスや周辺環境など参考に価格を算出する方法です。
マンション売却を依頼する不動産仲介会社を決めたら、媒介契約を結びます。不動産の媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3つがあり、いずれも有効期限は3ヶ月です。どの契約にするかは、不動産仲介会社と話し合って決めることができます。それぞれの特徴を下表にまとめました。
契約名 | 契約内容 | 依頼する仲介会社 | 販売活動状況の報告 | 指定不動産流通機構(レインズ)への登録 | 売主様が自ら見つけた買主様との契約 |
---|---|---|---|---|---|
一般媒介契約 | 複数の不動産仲介会社に依頼することができる契約 | 複数可 | 義務化されていない | 義務化されていない | 可 |
専任媒介契約 | 仲介を1社の不動産仲介会社にのみ依頼する契約 | 1社のみ | 2週間に1回以上 | 媒介契約後7日以内 | できますが、媒介期間中であれば売却活動費用を請求される可能性あり |
専属専任媒介契約 | 仲介を1社の不動産仲介会社にのみ依頼する契約 | 1社のみ | 1週間に1回以上 | 媒介契約後5日以内 | 不可 |
専任媒介契約、専属専任媒介契約は1社にしか依頼できないため、売買が成立すれば不動産仲介会社は確実に仲介手数料が受け取れます。そのため熱心に探してくれる傾向にあります。
一般媒介契約は複数の不動産仲介会社に依頼することができるため、複数の不動産仲介会社が競って売却先を探してくれる可能性があります。しかし不動産仲介会社にしてみれば仲介手数料を確実に受け取れるわけではないので営業活動に熱心になりにくく、また売主様にとっても複数の不動産仲介会社と連絡を取り合わなければいけないというデメリットがあります。
マンションが売りに出されると、不動産仲介会社による本格的な売却活動が始まります。
不動産仲介会社はまず自社の顧客に連絡をしたり、チラシを作ったりと自社で購入者希望者を募ります(自社で買主様を見つけられれば、売主様と買主様の両方から仲介手数料を受け取る両手取引が可能になるため)。
専任媒介契約では7日以内、専属専任媒介契約では5日以内に「不動産流通標準情報システム(レインズ)」に登録することが義務づけられています。レインズは他社の不動産仲介会社の物件情報を閲覧できるシステムで、登録した情報はすべての不動産仲介会社が確認できるため、買主様を見つけるチャンスが広がります。
そのほか各種不動産ポータルサイト、広告媒体などに掲載することで物件の情報を広くお知らせすることで購入希望者を募集します。
販売活動の経過は、専属専任媒介契約では1週間に1回以上、専任媒介契約では2週間に1回以上の経過報告が義務づけられています。一般媒介契約では報告義務はありません。
買主様が見つかったら、売却価格、決済方法(売主様の住宅ローン残債の処理、買主様の住宅ローン準備など)、引き渡し時期など詳細を詰め、話がまとまったら売買契約の手続きに入ります。契約当日は不動産仲介会社が買主様への重要事項説明を行い、その後、売買契約を締結、手付金を受領します。売買契約を結んだ後は、解除することが難しくなるので、くれぐれも充分に確認してから契約しましょう。
宅建業法では、宅地建物取引業者(不動産仲介会社)に、契約が成立したら遅滞なく(すぐに)契約内容を記載した書面を、「宅地建物取引士」に記名押印させたうえで交付するよう義務づけています。ただし、令和4年5月18日に「デジタル整備法」の宅地建物取引業法改正部分が施行され、宅地建物取引士の押印が不要、電磁的方法による提供(電子書面交付)も可能になりました。
売買契約締結当日の必要書類は事前に不動産仲介会社に確認しておきましょう。基本的なものとしては以下になります。
諸費用については後述しますが、当日は、仲介手数料の半額、印紙税などがかかります。仲介手数料の残金は引渡時点で支払うのが通例です。
引き渡しは、通常決済と同日に行われます。売買契約書で引渡日を定めますが、契約締結から1~2ヶ月程度の日程にするケースが多いようです。引渡日までに引越しの手続きや公共料金の精算などを済ませておきましょう。
当日の手続きは仲介会社のオフィスや銀行の一室などで行われます。高額な代金の受け取りがあるのと、所有権移転登記があるため、必ず銀行と法務局で手続きが可能な平日に行われます。
住宅ローンの残債がある場合は抵当権を抹消する必要があります。あらかじめ銀行に売却する旨を連絡しておき、必要書類を用意してもらいましょう。売却代金で住宅ローンを一括返済する同時決済の場合は、所有権移転登記と同時に司法書士が手続きをします。司法書士は仲介会社が手配してくれることがほとんどです。
売主様は残金の着金を確認してから、領収書を発行し、必要書類(※)とマンションの鍵をすべて渡して引き渡しが完了します。
※必要書類:付帯設備の保証書や取り扱い説明書、管理規約、パンフレットなど
マンションを売却した翌年の2月中旬から3月中旬の間に売主様は確定申告を行います。確定申告に必要な申告書は、税務署の窓口や国税庁のホームページで入手できます。
売却したことで利益(譲渡所得)が発生した場合は、譲渡所得税の納税が必要になるため、必ず確定申告をしなければなりません。後で解説しますが、譲渡所得税は他の所得(事業所得や給与所得)とは別途計算される分離課税方式で算出されます。各種控除も積極的に活用しましょう。
また売却価格が購入価格を下回るなど、売却することで損出が発生する場合は、確定申告は義務ではありません。しかし損をした分は所得税・住民税が軽減されたり、所有期間が5年以上など「譲渡損失の繰越控除」を利用できることがあります。
マンションの売却では、売却額を全額そのまま受け取れるわけではありません。さまざまな諸費用がかかるため、売った金額から差し引いた金額が手元に残ります。どんな諸費用があり、どのくらいかかるのかチェックしておきましょう。
マンション売却でかかるお金のうち、大部分を占めるのがこの仲介手数料です。仲介手数料の支払いは、原則として売買契約時に半額、物件の引渡時に残りの半額を支払うことが多いようです。
金額は宅建業法で定められており、後述する計算式を元に計算します。また通常、個人間の不動産取引には消費税はかかりませんが、仲介手数料は不動産仲介会社が提供する事業に対しての手数料なので消費税がかかります。仲介手数料は成功報酬になるため、マンションの売却契約が成立しなかった場合にはかかりませんが、契約を締結した後に売主様または買主様の都合で解除する場合などには支払う義務が発生します。
仲介手数料の計算についてなど、詳しくは後述します。
不動産売買契約書をかわすにあたって、印紙税を納める必要があります。印紙税は売主様と買主様の両方の契約書に課税されるため、それぞれ印紙を購入して貼付します。
印紙税を納めなかった場合、過怠税として納付すべき印紙税の最大3倍が課せられる場合があります。
印紙税の金額は、契約金額によって変わってきます。令和6年3月31日まで不動産の譲渡に関する契約書については軽減措置の対象となっています。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
マンションの売却によって、所有権は売主様から買主様に移転します。そのため所有権移転登記が必要です。また売り手が住宅ローンを組んでマンションを購入していた場合は、金融機関が設定した抵当権を抹消する抵当権抹消登記をする必要があります。
マンションの売却代金で住宅ローンを一括返済する場合、所有権移転登記と抵当権抹消登記を同時に行う同時抹消をすることになります。同時決済は多くの人がおこなっており、不動産仲介会社も銀行も慣れていますので、同時決済したい旨を伝えれば手続きの手順などを不安に思う必要はありません。
ただし銀行が抵当権抹消書類を準備するのには時間がかかりますので、最低でも決済日の2週間前までには連絡しておきましょう。
抵当権を抹消しておくことで買い手に対してローンの残債がないことの証明になります。
ちなみに、所有権移転登記の費用は買主様が負担するのが一般的です。登記にかかる費用は、2~3万円程度(登録免許税と司法書士への報酬を含む)です。
売却するマンションがまだ住宅ローンを返済中というケースも少なくありません。住宅ローンを組んでいる銀行に契約日の1ヶ月前くらいまでにマンションを売却する旨を連絡しておきましょう。
住宅ローン返済中の物件を売却したい場合、返済中の住宅ローンの残債を一括で返済することになります(売却代金を残債に充当する場合、売却代金が残債を下回ると預貯金や借入で支払わなければならないので注意してください)。その際には、住宅ローンを繰り上げて返済することになるので、手数料がかかります。手数料の金額は組んでいるローンの内容や銀行によって異なります。
必要書類のなかには発行費用がかかるものがあります。本人確認書類として住民票を使う場合の交付費用、印鑑登録証明書の交付費用などが数百円ずつと通常はそれほど高額な金額は必要ありません。
しかし、もしマンション購入時に入手しているはずの、マンション管理に係る重要事項調査報告書を紛失している場合は管理会社に再発行を依頼しなければならず、1万円程度かかる事があります。
さらに登記識別情報、または登記済証(権利証)を紛失している場合は、司法書士に依頼して「本人確認情報」という書類を作成してもらわなければならなくなり5~10万円程度の費用がかかってしまいます。できるかぎり探しておきましょう。
売却するマンションがマイホームであれば、新しい住まいに引越しするための費用が必要になります。売却するマンションの引渡日までに引越し先が確保できていれば、引越しは1回で済みますが、売却のタイミングによっては、いったん仮住まいに引越し、さらに新居への引越しと、合計2回の引越しをしなければならなくなってしまいます。2回分の引越し費用を確保しておきましょう。
一般的に仮住まいには、賃貸住宅やウィークリーマンションなどを選ぶことが多いと思いますが、その家賃も考慮しておかなければなりません。また、仮住まいに入りきらない荷物があれば、仮住まい期間中にそれを預けるトランクルームなどの代金がかかってしまいます。
マンションを売却したことで利益(=譲渡所得)が発生した場合、譲渡所得税(住民税と復興特別税を含む)がかかりますので、売却した翌年の確定申告が必要です。
譲渡所得税がかかるのか、かかるとすればいくらになるかは自分で計算することができます。この段落では譲渡所得税の計算式を解説しましょう。
なお譲渡の結果がマイナスになる場合譲渡税は発生しませんが、各種控除を受けるためにも確定申告をしたほうがお得です。
※ここで解説している税率は変動することがあります。実際の取引の際には、必ず不動産仲介会社、国税局のホームページ、税務署の窓口などで確認してください。
譲渡所得税を計算するには、まず譲渡所得を算出します。譲渡所得はマンションの売却価格とは同額ではなく、取得価格と売却するためにかかった費用(取得時の費用と譲渡費用)を差し引いた額ですが、取得費用からは建物の経年劣化にともなう額を減価償却費として差し引きます。
譲渡所得の計算式
譲渡所得=売却価格-(取得時の費用-減価償却費+譲渡費用)
【取得時の費用】
【譲渡費用】
取得費から差し引く減価償却費は通常「定額法」で計算します。
減価償却費=取得価額×償却率(※)×保有年数
※償却率とは、1年にどれだけ価値が減少するかを定めたもので国税庁のホームページで参照できます。
譲渡所得がマイナスの場合は、損失分の金額を他の所得から控除(損益通算)が可能です。譲渡損失がその年の所得だけで相殺できない場合は、損益通算を翌年以降3年間繰り越すことができます(譲渡損失の繰越控除といいます)。
譲渡所得がプラスの場合は、譲渡所得税がかかりますが、自宅など居住用のマンションを売却した場合は「3000万円の特別控除」という特例があります。これは譲渡所得が3000万円に満たないときは譲渡所得税が課税されないというもの。ただし親族間の売買では不可などの要件があり、買い換え時の住宅ローン控除とも両立できません。買い換えのために売却する場合はどちらを使うかよく検討しておきましょう。
譲渡所得が算出できたら、譲渡所得税が計算できます。ちなみに譲渡所得税は正式名称ではなく、譲渡所得にかかる所得税と住民税、復興特別所得税を合わせた税金のことです。復興特別税は2037年まで所得税の税率に上乗せされる(所得税の2.1%)特別税です。
譲渡所得税は譲渡所得に税率を掛けるだけで計算できます。税率はそのマンションの所有年数が5年以下か5年超かによって変わります。
所有年数が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年を超えるものは「長期譲渡所得」となります。それぞれの計算式は次のとおりです。
譲渡所得×39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%)
譲渡所得×20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)
長期譲渡所得のほうが税率が低く、短期譲渡所得が高く設定されています。これはバブルの時期のように、投機目的で短期売買が行われるのを防ぐといった意味あいがあります。
税率のみで考えると長期所有のほうが有利ですが、所有している間にもマンションの価値が下がっていくことを考えると、短期所得の期間中に高く売ったほうが手取り額が多くなる可能性もあります。
内覧会の前にハウスクリーニングを依頼してプロの手できれいにしておく売主様は少なくありません。売却にあたってハウスクリーニングをすることは必ずしも必要ではありませんが、マンションを購入する立場になって考えてみると、多少古くてもすみずみまで掃除が行き届いた物件には好感を持つ心理は理解できるでしょう。実際、買主様が見つかりやすくなり、価格交渉でも売主様が有利になるケースがあります。
ハウスクリーニングを依頼する場合は必ず内覧会の前に、気になる部分を重点的にプロの手で掃除してもらいましょう。特に次の場所のクリーニングを依頼するのがおすすめです。
これらはマンションの購入検討者が必ずチェックするポイントであり、室内全体の印象も左右します。
ハウスクリーニングの費用は、広さや状態、掃除する場所などで変わってきますが、3~10万円程度を見込んでおけばいいでしょう。
どんなに注意深く扱い、まめな掃除を心がけたとしても水回りの設備などは経年劣化していきます。
喫煙者が居室を使用していたためヤニでクロスが黄ばんでいる、ペットを飼っていたためフローリングがボロボロ、設備が故障していてそのままでは使えないなどの場合はリフォームをしたくなるところです。実際に設備が古くなってしまったマンションをリフォームすることで買主様が早く見つかりさらに売却価格を上乗せできたケースもあります。
しかし、リフォーム工事の期間だけ売却時期が延びるのと、リフォーム代金が売却価格に反映されるため、判断を間違うと買主様が見つかりにくくなってしまう恐れがあります。
中古マンションである以上、経年劣化は当然あるものと買主様も認識しています。またなかには自分の好みにリフォームしたい人もいます。リフォームするかどうかは個々の物件やその時の状況にもよるので、不動産仲介会社と相談して決めるといいでしょう。
マンションを売却することでいったん支払った費用や清算金が戻ってくるもあります。引渡日当日には、さまざまな決済が行われるため混乱してしまいがちです。どんな費用が戻ってくるのかあらかじめ把握しておきましょう。
固定資産税は「固定資産」とされる土地や家屋などを所有している人にかかる税金で、都市計画税は市街化区域内に土地・建物を所有している人にかかる税金です。
どちらもその年の1月1日の所有者に課せられる税金で、その固定資産がある市町村(東京23区の場合は都)に納める義務があります。
固定資産税および都市計画税の通知は通常4~6月で、一括払いまたは年4回の分割払いで支払います。一括払いはもちろん、分割にした場合もその年の固定資産税・都市計画税の支払い義務を負うのは1月1日の所有者です。そのため、不動産売買の商習慣として、固定資産税および都市計画税は売主様・買主様の間で日割り計算することになっています。
ただしこれはあくまでも商習慣であって、義務ではなく任意規定なので、どちらがどのくらい負担をするか、買主様との話し合いが必要になることもあります。固定資産税通知書や支払いの証拠を保存しておきましょう。
多くの場合、所有者が前払いをしているマンション管理費や修繕積立金ですが、管理費・修繕積立金をマンション管理組合が返金してくれることはありません。築年数がまだ浅いなどで大規模修繕をしていない場合、これまで積み立ててきた修繕積立金が戻ってくるのではないか、と思いがちですが、修繕積立金は個人の財産の積立ではなく、管理組合全体の共有財産になるため、返金されることはありません。区分所有法に基づいて定められたマンション管理標準規約にも「納付した管理費等及び使用料について、その返還請求又は分割請求をすることができない」と明記されています(第60条6項)。
管理費については、引渡後の日数から日割りで計算し、買主様から売主様に清算金として支払われるケースが多いようです。ただこれもそういった明確なルールがあるわけではなく、不動産取引上の商習慣でしかないため、買主様との話し合いのうえ決めることになります。
駐車場や駐輪場を使用している場合、多くはマンションの共有部分にある駐車場を賃貸する契約になっています。共有部分にある駐車場や駐輪場の権利は管理組合が所有しているため、支払った駐車場代・駐輪場代は「電気代」「メンテナンス費用」などに使われていますが、名目上は「管理費」もしくは「修繕積立金」に充当され、管理組合から返金されることはありません。駐車場や駐輪場を買主様が引き継げるかどうかは管理組合の判断によります。買主様が引き継げた場合は、管理費と同様に日割りで計算して買主様から売主様に支払われることがあります。
共有部分ではない民間駐車場を借りている場合は、1ヶ月前までに解約を申し出ることが必要になります。駐車場代金に未納がなければ契約時に払った敷金が返金されます。
売却するマンションを、かつて購入した際には、多くの方が住宅ローンを組んでいるでしょう。住宅ローンでは万が一借主がローンの支払いが出来なくなった場合に備えて、保障会社とも契約を結んでいるため、借主は「保証料」を支払っています。この保証料を先に一括して支払っている場合には、未充当部分については、マンションを売却しローンを完済した際に返金してもらえます。
物件の価格やローンの内容、借入期間によって異なりますが、住宅ローン保証料は数十万円から数百万円になることが一般的です。例えば35年ローンを組んだ際に保証料を一括で支払い、購入後10年目でマンションを売却した場合、35年-10年=25年分の保証料が返金されます。
金融機関によって返金率や手数料などが変わってきますので、窓口で確認するのがおすすめです。
売却しようとしているマンションを購入した際には、万一に備えて地震保険付きの火災保険に加入している人がほとんどでしょう。火災保険は一括で払っている場合、住宅ローン保証料と同様に未充当分を返金してもらえます。
例えば35年ローンを組んだ際に火災保険料一括で支払い、購入後10年目でマンションを売却した場合、35年-10年=25年分の火災保険料が解約返戻金として返金されます。加入している火災保険の保障内容や物件によって保険料は違いますが、年間1~2万円程度の保険料だとしても、まとまった金額になります。
ぜひとも返金手続きをしておきたい火災保険料ですが、契約者が自ら保険会社に申し出ないかぎり解約されることはありません。保険会社はマンションが売却されたことを知る手段がないため、解約をすすめてくることはありません。売却することが決まったら火災保険の解約もスケジュールに入れておきましょう。
マンションの売却の費用の中で最も大きなウェイトを占めるのが、仲介手数料です。マンションの売却代金が高いほど仲介手数料も高額になります。売却する前に仲介手数料の仕組みや計算方法について知っておきましょう。
仲介手数料は仲介不動産仲介会社によって違うのではなく、宅建業法で上限が決められています。売買価格の区分によって計算式が異なり、下表の計算式で求められます。
仲介手数料の計算式
売買価格 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 売却価格 × 5%+消費税 |
200万円を超えて400万円以下 | 売却価格 × 4%+2万円+消費税 |
400万円を超える金額 | 売却価格 × 3%+6万円+消費税 |
300万円の物件を売却する場合
300万円×4%+2万円+消費税=14万円+消費税1万4000円=15万4000円
3,000万円の物件を売却する場合
3,000万円×3%+6%=96万円+消費税9万6000円=105万6000円
大まかな額を知りたい方のために、売却価格ごとの仲介手数料を早見表にまとめました。ご参考になさってください。
売却価格 | 仲介手数料(税抜) | 消費税 | 仲介手数料(税込) |
---|---|---|---|
1,000万円の場合 | 36万円 | 3万6,000円 | 39万6,000円 |
3,000万円の場合 | 96万円 | 9万6,000円 | 105万6,000円 |
5,000万円の場合 | 156万円 | 15万6,000円 | 171万6,000円 |
1億円の場合 | 306万円 | 30万6,000円 | 336万6,000円 |
ところでその仲介手数料はいつ払うのか気になってはいませんか、マンション売却時には大きな金額が動くため、上記のように仲介手数料も高額になります。まだ用意していないのに仲介手数料を請求されたり、せっかく用意した仲介手数料をいつ渡すのかヤキモキしたりはしたくないですよね。
仲介手数料を支払うタイミングとして次の3つが考えられます。
①残金決済・引き渡し時に一括支払い
②契約締結時に一括支払い
③契約締結時に半額、残金決済・引渡し完了時に残りの半額を支払う
一般的には③のことが多いようですが、明確なルールが定められているわけではありません。不動産仲介会社によっては物件の引渡し時に全額を支払うとしていることもあります。支払うタイミングはいつなのか、不動産仲介会社の担当者に事前に確認しておきましょう。
何度かお伝えしているように、マンション売却時の仲介手数料は上限が定められています。しかし、例外として「依頼者の特別な依頼にもとづき発生した広告費用など」は、別途請求できることになっています。請求に当たっては以下の3点すべてが満たされていることが必要です。
①依頼者の依頼にもとづいて発生したものであること
②通常の仲介業務では発生しない費用であること
③実費であること
これらに当てはまるケースとして考えられるのが、依頼者の要望で行った(通常は行われない)広告宣伝の「実費」、依頼者に希望で遠隔地に住む購入希望者との面談の際の旅費などでしょう。
平成30年1月1日より「低廉な空家等の売買・交換に関する特例」が施行されています。これによって、低廉(=価格が安いこと、具体的には代金400万円以下)の空き家などの売買で、通常の場合と比べて、現地調査などの費用が多額に発生する場合は、宅建業法に定められた法定の上限額に現地調査などの費用を上乗せした額が売主様に請求されることになります。
ただし、上限は18万円+消費税までであり、不動産仲介会社は事前にこの特例を利用する旨を伝えておかなければなりません。
ここでは、マンション売却の流れと、売却にかかる費用、仲介手数料などについて解説してきました。ぜひ売却時のご参考にしてください。マンションの売却を成功させるカギは、不動産仲介会社の販売力にあります。
マンションを売却するという決断は人生の中でそう何度もあることではありません。「すまいValue」なら無料で信頼できる大手不動産6社への一括査定が可能です。この機会に査定依頼をされてはいかがでしょうか。
公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。
中村 昌弘
宅地建物取引士
都内大学を卒業後に新卒で上場ディベロッパーに就職。マンションの販売・企画・仲介などを経て2016年に独立。独立後は、不動産事業としては主にマンション売却のコンサルタントに従事している。
酒向 潤一郎
税理士
J’sパートナー総合会計事務所(酒向潤一郎税理士事務所)にて、税理士として会計事務所の経営を行う一方で、一部上場IT企業の幹部や投資会社の監査役などを務める複業税理士。最近では開業・副業コンサルに注力。会計専門誌などにも複数寄稿している。
最後までお読みいただき、
ありがとうございます。
ご回答ありがとうございました。