不動産を売りたい・買いたいと考えている人にとって、不動産市況の変化はとても気になるものです。不動産というものは、たとえ同じ物件でも、取引する時期が変われば価格が大きく変動します。自分にとってもっとも良い条件のときに売りたい・買いたいと思うことでしょう。
昨今は、新型コロナウイルス感染症の動向、東京オリンピック閉幕、インフレの進行などが日本の不動産市場へ影響を与えており、それを取り巻く環境は不透明感を増しています。
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これまで原材料費の高騰によって、住宅(マンション・戸建て住宅)価格の上昇が続いてきましたが、さらに2022年に入ってからの円安の進行と米国・欧州のインフレ進行がこの傾向に拍車をかけようとしています。
これからの不動産市場は、どこへ向かうのでしょうか。ここでは、新型コロナウイルス、東京オリンピック閉幕をキーワードにこれまでの不動産市況を俯瞰し、さらに円安・インフレという状況を加味してこれからの市況を考察していきます。
大手6社の市況感アンケート
1. 現在の不動産市場全体について
※6社の総合的な市況感(左)と各社の回答(右)
2020年から22年前半期までを振り返ってみると、日本の不動産市況に影響を与えてきた大きな要因は、新型コロナウイルス感染状況と東京オリンピックの2つといえるでしょう。
2020年春頃から流行し始めた新型コロナウイルス(covid-19)は、またたく間に全世界に拡大し、深刻なパンデミックをもたらしました。2022年7月9日段階で、全世界で感染者の累計数は5億5,500万人、累計死亡者数は635万人にのぼると見られています(※1)。
感染症の拡大を封じ込めるために、多くの国・都市でロックダウン(都市封鎖)が実施され、人々の移動が強制的に制限されることで物流・貿易・金融などの経済活動は大混乱に陥りました。世界銀行によると、2020年の経済成長率は前年比-3.3%となり、第二次世界大戦以来最悪の景気後退となりました(※2)。
経済的混乱の影響を受けて、世界の不動産市場は一時期大きく落ち込みましたが、新型コロナワクチンの開発と接種の拡大、感染者数の減少とともに落ち着きを見せ、現在は再び成長軌道に乗ってきています。
世界経済は、新型コロナ対策にともなう供給の制約が解消され、経済活動の正常化とともに雇用・所得の回復が本格化しました。世界的に都市近郊の住宅需要が増加しており、住宅価格は上昇する傾向にあります。
※2 世界銀行 世界経済見通し
世界経済に大きな衝撃を与えた「コロナショック」ですが、日本ではどうだったのか振り返ってみましょう。
2020年3月頃から株式市況が急速に悪化し、3月13日には歴代13位となる1,128円58銭安の下げ幅を記録、19日には2019年来安値となる1万6,552円83銭まで下げました。
ニューヨーク証券取引所ではNYダウが3月16日、前営業日比2,997.10ドル安という過去最大の下げ幅を記録しました。下落率は12.9%となり、1987年のブラックマンデーの際の記録22.6%に次ぐ過去2番目の下落となったのです。
日本では4月7日に初めて「緊急事態宣言」が発令され、経済活動に急ブレーキがかけられました。この経済的打撃によって、これまで上昇トレンドだった不動産市況が大きなダメージを受けると予測されましたが、実際にはそのようなことはありませんでした。
緊急事態宣言発令によって不動産の取引数自体は急減しましたが、価格の大きな崩れはなく、株式市場のようなパニックには陥らなかったのです。
2021年(令和3年)の地価公示では全国平均で住宅地・商業地ともに6年ぶりの下落とはなりましたが、住宅地で-0.4%、商業地で-0.8%と落ち込みは小さく、工業地は0.8%のプラスを維持しました。
リーマンショック直後の2009年は住宅地が-3.2%、商業地が-4.7%、2010年は住宅地が-4.2%、商業地が-6.1%であったことを考えると、微々たるものであったことがわかります。さらにその後は回復基調となり、2022年の地価公示では住宅地が0.5%の上昇、商業地が0.4%の上昇、工業地が2.0%の上昇へ反転しています。
中でも住居系の不動産は、ほぼ一貫して堅調でした。国土交通省が毎月発表する不動産価格指数でも、住宅価格に関しては2020年第1四半期・第2四半期に一時期停滞するものの、すぐに立ち直っています。
とくにマンションに関しては、2013年から始まる右肩上がりの傾向はコロナ禍でも変わりませんでした。住宅価格が一貫して上昇しているにも関わらず販売件数が減少しないのは、歴史的な低金利が継続していて住宅ローンを低金利で組むことができ、実質的な借入可能額が高水準になっている点が指摘されています。
ここで各社の市況感も見てみましょう。
1. 現在のマンション市況について
※主要都市圏:東名阪及び福岡の都市部
2. 現在の一戸建ての市況について
3. 現在の土地市況について
コロナ禍を経験することによって、私たちは働く場での「新しい日常」を余儀なくされました。手洗いの徹底、マスクの着用、「3密」の回避、ソーシャルディスタンスなどの指針による行動様式の変化だけでなく、生活様式も過度の密集や接触を避ける方向に大きく変化しました。なかでも、影響が大きかったのはリモートワークの定着化でした。
以前から「働き方改革」の一環としてリモートワーク推進は謳われていましたが、コロナ禍によってそれが一気に拡大することになり、住宅需要に変化をもたらしました。
リモートワーク・在宅勤務の拡大によって、住宅にワークスペースを求めるニーズが増加するとともに、勤務地へのアクセスについては優先度が下がる傾向が見られました。その結果として、間取りに余裕のある都市郊外の戸建て住宅に人気が集まりました。
国土交通省の「我が国の住生活をめぐる状況等について」という調査によると、約10%にの人が住み替えの意向や購入する住宅の建て方に関する意向に「コロナの影響があった」と回答しています。また、住み替えの意向を持った人には、マンションから戸建て住宅に選好の変化があったことがわかっています(※)。
東京オリンピック・パラリンピック(東京2020)の開催についても、日本の不動産市況に多大な影響を与えると考えられていました。
開催以前には、東京オリンピックによるインバウンド需要の拡大とそれを見込んだホテル・商業施設の投資、オリンピック関連の再開発にともなう東京の不動産価格上昇が起こり、閉幕と同時にその反動で下落するという予測がありました。では、実際にその見立てはどうなったでしょうか。
東京2020はコロナ禍によって開催が1年延期され、さらに一般客の受け入れも中止となったので、当初期待されたインバウンド需要は肩すかしとなりました。結果として、インバウンド需要を当て込んだホテル・商業施設などは苦戦を強いられた形となりましたが、これは東京オリンピックの反動よりもコロナ禍による移動制限が大きく影響したものでした。
前章で見たように住居系の不動産価格は堅調で、オリンピック開催地である東京でもマンションを中心に住宅価格は右肩上がりのトレンドを崩していません。
東京オリンピックと不動産という意味では、「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」という物件が象徴的な存在です。東京オリンピック・パラリンピックの選手村をコンバージョン(建物の用途変更)したマンションである晴海フラッグの販売が絶好調で、2021年8~11月の販売時には平均倍率8.7倍、もっとも人気のあった最上階の部屋は111倍の競争率となったのです。
東京2020閉幕後も、住宅需要がまったく衰えていないことを象徴する出来事でした。
オリンピックの開催によってバブルが醸成され、閉幕後に崩壊するというストーリーは過去にも他国で語られてきました。それでは、過去のオリンピック開催国はどうだったのでしょうか。
シンクタンクのみずほ総合研究所は、ミュンヘン、モントリオール、ロサンゼルス、ソウル、バルセロナ、アトランタ、シドニー、アテネ、北京、ロンドンの例を挙げ、「過去のオリンピック開催国のGDPは、開催10年前から開催6年前までのトレンドを上回る傾向にある」とレポートしています(※)。オリンピック開催国は、開催後のほうが経済成長するというデータがあり、オリンピック閉幕後にバブル崩壊という国は見当たらないのです。
東京の場合は新型コロナの影響という特殊要因がありますが、現在のところ過去の開催国と同じ傾向を示していく可能性が高いといえます。
それでは、2023年以降の不動産市況はどうなっていくのでしょうか。いくつかのトピックをふまえながら見通しを立てていきましょう。
日本の不動産市場を考える際、少子高齢化・人口減少のトレンドを考えないわけにはいきません。
日本の総人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じましたが、一人世帯の拡大もあって世帯数は増加を維持し続けてきました。その世帯数も、2023年にピークアウトすると見積もられています。これが「2023年問題」です。
2023年、日本の総世帯数は5,419万世帯でピークを迎え、その後は減少に転じると予測されています。2040年には5,076万世帯まで減るとされ、それにともなって住宅需要は減退し、住宅ストックの増加と空き家問題の顕在化が避けられないと見積もられています。
「2025年問題」とは、団塊の世代(1947~1949年生まれの世代)が75歳という後期高齢者の年齢に達し、医療や介護など社会保障費の急増が懸念される問題を指します。2025年には後期高齢者人口が約2,200万人にまで膨れ上がり、国民の5人に1人が75歳以上になる計算になります。
2025年問題が不動産市場に与える影響としては、住宅需要の高い30~40代の子育て世帯が減少することが挙げられます。また、マイホームその他の相続の増加が見込まれ、結果として空き家の増加が予想されています。住宅の需要と供給のバランスが崩れることで、不動産価格が低下していくのではないかと見積もられているのです。
この傾向は、とくに地方が顕著です。2023年問題でふれた世帯数減少も地方に強く現れていて、今後はマンション需要や再開発需要が堅調と予想されている都心部と地方との2極化がさらに際立っていくものと見込まれています。
不動産市況は、経済動向に強く影響を受けます。世界経済を概観すると、2019年には2.6%を記録していた世界GDPが2020にはコロナショックによってマイナス3.3%にまで急落しました。その後急速に回復したものの、回復基調は鈍化の兆しが現れています。
世界銀行は「世界経済見通し(GEP)」の中で、新型コロナウイルス変異株の脅威とインフレ率の上昇などで減速局面に入っているとしました。世界経済の成長率は、2021年の5.5%成長から、2022年は4.1%、そして2023年は3.2%と少しずつ鈍ることを予測しています(※)。
さらに、2022年2月24日から開始されたロシアによるウクライナ軍事侵攻によって、天然ガス・原油などの資源価格が急騰し、小麦価格が高騰することで世界的に食料価格が上がるという影響が出ています。
日本経済はコロナ禍から経済正常化へと向かうことによって、個人消費を中心に成長基調と予想されています。
不動産市場の動向に強い影響を与えるのが金利の動きですが、日銀の金融緩和姿勢に変化はなく、金利は落ち着いて推移すると見られています。
海外から見ると日本(とくに東京)の不動産は価格が安く、収益物件の利回りが高い傾向にあります。この傾向は円安の進行によってさらに強まり、アジアの政府系ファンドなどの機関投資家によるホテルやマンション取得、不動産投資信託(REIT)の購入などの動きが活発化しています。
日本は新型コロナ感染者の数が少なかったこともあり、国際不動産投資市場におけるプレゼンスが急上昇している形です。東京など都心部の商業系・住居系不動産は、海外の投資資金流入によって価格上昇が見込まれます。
懸念材料はインフレの進行と資材高騰にあります。米政府当局が発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.6%上昇となり、実に40年ぶりの高い伸びを記録しました。同時期、日本の消費者物価指数(コアCPI)は2.1%上昇となっており、アメリカほどではありませんが、日本にもインフレの足音が聞こえ始めました。
以前から続いていた住宅の原材料費高騰については、記録的な円安ということもありその傾向が続いています。木材の需給ひっ迫によって引き起こされたウッドショック、銅、鉄、アルミニウムなどの金属素材が高騰したメタルショックも起きています。
このインフレと資材高騰が、住宅の価格推移にどこまで影響を与えるかが今後の不動産市場の動向を左右することになります。とくに、新築マンションの価格動向はその他の中古不動産市場の動向にも強い影響を与えることになりますので、その推移が注目されます。
4. 2022年度下期に向けての全体の市況感
世界経済・日本経済の動向、ウィズコロナ時代の到来などを勘案すると、日本の不動産市況は住居系を中心に堅調に推移していくことが基本トレンドになると見られています。ただ、さらなる円安の進行や極度のインフレ亢進があった場合、日銀の金融緩和姿勢が変更され金利上昇を招く可能性を完全には排除できません。
また、新型コロナの再流行によってさらなる制限や行動様式の変化が余儀なくされる可能性もあり、ほかの要因も含めてこれまで述べてきた前提が崩れた場合には、違ったストーリーが考えられるでしょう。
超長期のトレンドで見ると、人口減少時代を迎えた日本では、需給の悪化から不動産価格が下落していく地域と利便性の高さから堅調に推移する都市部などの地域へと2極化していくことは避けられません。それを踏まえて、保有している不動産のあるエリア、これから取得する不動産のあるエリアをより意識する必要があります。
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公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。
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