親や祖父母などから相続した不動産を、事情により売却したい、というケースは少なくありません。しかし不動産の売却に慣れているという方はあまり多くないでしょう。
この記事では、相続した不動産を売却するのが初めての売主様に向けて、不動産を売却の際の税金の種類やその計算方法、相続した土地を売った場合の特別控除、特例などについて解説。さらに相続した不動産を売却する際の注意点についても解説します。
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その不動産が相続したものか、そうでないかにかかわらず、一般的に不動産を売却すれば税金がかかります。ここでは不動産を売却する際にかかる6種類の税金、つまり、印紙税、登録免許税、所得税、住民税、復興特別所得税、消費税のそれぞれについて解説します。
印紙税とは不動産の売買契約の際に交わす売買契約書に貼り付ける印紙の代金です。印紙税の納税は購入した印紙を貼り付け、消印を押すことで完了します。
売主様側と買主様側それぞれに不動産売買契約書を作成し、それぞれに印紙を貼付します。通常は売主様と買主様で折半します。
印紙税の税額は売買契約書に記載する金額(成約価格)によって、下表のように決まっています。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
出典:国税庁 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
また、記載金額(成約価格)が10万円を超えるもので、かつ2014年4月1日から2024年3月31日までの間に作成される売買契約書は、上記の軽減税率が適用されます。
印紙は貼り忘れがないよう注意が必要です。もしも、印紙税を納めなかった(貼り付けなかった)場合は、過怠税がかかってしまいます。過怠税は通常の税額の3倍(自ら申告した場合は1.1倍)と高額になります。
登記手続きの際に国に納める税金を、登録免許税と言います。
その不動産がどんな不動産で、誰が所有しているのか、権利関係を公的に明らかにするのが不動産登記ですが、登録免許税はその登記の変更手続きの際に登記所で納める国税で、別名登記料とも呼ばれています。
相続した不動産を売却したい場合、事前に被相続人(亡くなった方)から相続人に、所有権移転登記をしておく必要があります。
不動産売却時に売主様が負担する登録免許税には、抵当権抹消登記があります。また、登記されている売主様の氏名住所が違っていた場合、氏名住所の変更登記が必要になります。
売却により所有権が売主様から買主様に移転するため、所有権移転登記が発生しますが、この際の登録免許税は登記を受ける側、つまり買主側が納税します。
売却する土地に抵当権が設定されていた場合、売却時に清算して抵当権を抹消する登記です。
抵当権抹消登記:不動産1個につき1,000円
(土地と建物があれば2個で2,000円)
登記されている売主様の氏名住所が違っていた場合、氏名住所の変更登記が必要になります。
住所氏名の変更登記:不動産1個につき1,000円
相続した不動産を売却して利益が出た場合は、その売却益(譲渡所得)に対して所得税がかかります。もしも、利益が出ない(譲渡損失となる)場合は所得税はかかりません。
譲渡所得税の計算方法は後述しますので、ここでは税率のみお伝えします。譲渡所得税の税率は、その不動産の保有期間、長い間所有していたか否かによって異なります。
不動産を売却する年の1月1日時点で、購入してからの保有期間が5年以上(購入してから1月1日を6回経過)で長期保有となり、5年未満であれば短期保有となります。
長期保有:譲渡所得×15%
短期保有:譲渡所得×30%
この不動産譲渡所得の税率は固定です。分離課税であるため、給与所得や事業所得など、ほかの所得と損益通算(利益から損失を差し引いて所得を計算すること)はできません。ただし複数の不動産所得同士での損益通算は可能です。
相続した不動産の売却で得た利益(譲渡所得)には、所得税に加えて住民税が課税されます。保有期間で税率が変わるのも所得税と同様です。
不動産の譲渡所得にかかる住民税の税率は以下の通りです。
長期保有:譲渡所得×5%
短期保有:譲渡所得×9%
住民税の納税額は、確定申告に基づいて計算されます。5月~6月頃に送付される納付書を利用して納税します。通常、一括支払用と年4回分割用の納付書が同封されています。
不動産譲渡所得には、さらに2011年の東日本大震災における被災者支援を目的とした復興特別所得税がかかります。
復興特別所得税の税率は所得税の2.1%で固定されているため、長期所得と短期所得で変わってきます。
長期保有:所得税率×2.1%=0.315%
短期保有:所得税率×2.1%=0.63%
復興特別所得税は2037年12月31日まで課税される予定です。復興特別所得税の納付は、譲渡所得税とともに行います。
相続した土地を売買するとき消費税がかかるのか気になるところですね。土地の譲渡には消費税はかかりません。
建物の売買も、売主様が個人で売却するのであれば、消費税はかかりません。ただし課税事業者が売却する場合は消費税がかかります。
また、不動産仲介会社に支払う仲介手数料や、登記手続きを行う司法書士報酬には消費税がかかります。
相続した不動産を売却し、譲渡所得がプラスのとき、翌年の確定申告で税額を申告・納税します。これを譲渡所得税と言います。譲渡所得税の計算式は以下の通りです。
税額 = 課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税)
譲渡所得税は確定申告をして納めます。確定申告書は毎年2月16日から3月15日までの間に提出、納税は申告書の提出と同時期(通常は3月15日)までに行います。
確定申告時に銀行口座の振替手続きをすると4月に口座から引き落とされるため、納税を少しの間ですが先延ばしにすることができます。
譲渡所得税の計算の元となる譲渡所得は下記の計算式で求めます。
譲渡所得 = 譲渡収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)
この計算で譲渡所得がプラスになった場合、譲渡所得に税率をかけた額の税金が発生するというのが基本の考え方です。
相続した不動産を売却する場合は、後述する取得費加算の特例や、空き家を売却した場合の3,000万円特別控除、同居した場合に適用できる特別控除や特例がありますので、税理士などに相談して、適用漏れがないよう気をつけましょう。
「譲渡収入金額」は、土地・建物など不動産の譲渡代金に固定資産税・都市計画税の精算金を加えたものをいいます。
不動産を売却した際に、買主様から売主様に渡されるお金には、不動産代金に加え、その不動産にかかる固定資産税・都市計画税に相当する金額のお金があります。
両方を合算した、売却時に入ってくるお金を「譲渡収入」といいます(そこから経費等を引いたものが譲渡所得です)。
取得費は不動産の取得にかかった費用のことをいいます。
売却する不動産を購入したときの購入代金と、かかった費用(仲介手数料・登記関係費用・不動産取得税など)を足した金額です。住宅や事務所などの建物はさらに、その後の改良費・設備費などの支出を加え、経年劣化にともなう減価償却費を差し引いて計算します。
取得費=不動産購入費用+購入時の各種費用
取得費=不動産購入費用+購入時の各種費用+改良費や設備費-減価償却費
土地付き住宅などの場合は、土地部分は土地の計算式で、建物部分は建物の計算式で、それぞれ計算して合算します。
取得費には実額法と概算法の2つの計算方法があります
取得費を実際に計算して求める方法です。一般的にはこちらの方法で計算します。
取得費=不動産購入費用+購入時の各種費用
取得費=不動産購入費用+購入時の各種費用+改良費や設備費-減価償却費
マンションなど建物の場合は、減価償却費を差し引きます。年数に応じて下落した価値を差し引くということです。
相続で取得したので購入時の書類がない、先祖代々所有している、不動産の取得が古い、などの理由で、売却したい不動産の購入費用や各種費用が不明の場合は、概算法で取得費を計算します。
取得費=譲渡収入金額×5%
譲渡収入の5%相当を取得費とすることができる、というものですが、概算法は実額法に比べると、取得費がとても小さくなってしまうため、譲渡所得が大きくなり、それにともなって課税額も増えてしまいます。可能であれば実額法で計算できるよう、書類を準備することをおすすめします。
相続した不動産の売却の場合は取得費加算の特例が設けられています。これについては後述します。
土地・建物を売却するために支払ったさまざまな費用のことを譲渡費用と呼びます。主な譲渡費用には次のものがあります。
譲渡所得税の計算では、取得費と合わせて譲渡収入から差し引けるため、領収書など書類は大切に保管しましょう。
譲渡所得には、所得税、住民税、復興特別所得税が課税されます。
譲渡所得税の税率は、その不動産を保有していた期間がその年の1月1日に5年を超えるか否かによって異なります。5年を超える場合を長期保有、5年以下を短期保有と言います。
不動産譲渡所得税の税率のしくみについて知らないまま不動産を売却すると、税金が余分にかかってしまうことがありますので注意が必要です。
それぞれの税率は次の通りです。
税の種類 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 |
---|---|---|---|
長期保有 | 譲渡所得×15% | 所得税額×2.1% | 譲渡所得×5% |
短期保有 | 譲渡所得×30% | 所得税額×2.1% | 譲渡所得×9% |
※復興特別所得税は2037年まで徴収されます
相続した不動産を売却する際には、相続が発生した時期ではなく、被相続人(亡くなった方)がその不動産を取得した時期で計算します。
被相続人(亡くなった方)が、この数年間の家に購入した土地を売却したい場合は購入時期を必ずチェックしましょう。売却したい年の1月1日時点での保有期間が5年未満だった場合は、短期譲渡所得となってしまいます。
譲渡所得では、その年の1月1日に所有期間が5年を超える場合を長期譲渡所得としています。長期譲渡所得の税率は次の通りです。
譲渡所得では、その年の1月1日に所有期間が5年以下の場合を短期譲渡所得として計算します。短期譲渡所得の税率は次の通りです。
長期保有のほうが税率が有利になっているのは、投資目的の短期売買を抑制するという意味があります。
一般的な不動産の売却と、相続した不動産の売却を一律に扱ってしまうと、相続人に大きな負担がかかることがあります。そのため相続した不動産を売却した際には、特別控除や特例が設けられています。相続不動産の売却で損をしないよう知っておきましょう。
ここでは相続した不動産を売却したときに適用できる「取得費加算の特例」と「相続空き家の3,000万円特別控除」を紹介します。この2つの特例・特別控除は併用できません。どちらかを選択して適用します。
譲渡所得税の計算方法を前述しましたが、不動産を相続後3年10ヶ月以内に売却する場合、相続税額の一部を取得費に加算することができるという特例です。この特例を適用すると譲渡所得税が節税できます。
加算される取得費の計算式は以下のとおりです。
納付すべき相続税額 × 売却した不動産の相続税評価額 / 相続税の課税価格(債務控除前)
相続した不動産が空き家だった場合、その空き家を売却した際に得た譲渡所得から3,000万円を控除することができるという特例です。ただしこの特例には以下の要件があります。
相続人が被相続人と同居していた場合、相続限定ではない一般的な特別控除・特例が適用できます。
代表的な特別控除・特例として、マイホームを売却した場合の3,000万円特別控除と、10年超所有のマイホームに対する軽減税率の特例の2例を紹介します。
相続人と被相続人とが同居していた場合、マイホーム(居住用財産)を売ったときには「3,000万円の特別控除」が適用できます。これは、譲渡所得から最大で3,000万円を控除してくれる特例です。
「投資用ではなくマイホームの売却」や「買主様と特別な関係(近親者)ではない」などの諸条件がありますが、所有期間の長短や、戸建てかマンションかなど不動産の種類に関わりなく適用できます。
計算式は以下のようになります。
譲渡所得税=(課税譲渡所得(長期/短期)-3,000万円)×譲渡所得税の税率
売却した際の、譲渡所得が3,000万円を越えなければ、この特例を利用して譲渡所得をゼロとすることができます。3,000万円で差し引けなかった部分には税金がかかります。
所有期間が10年超のマイホームを売却したときには、譲渡所得が6,000万円以下の部分に譲渡所得税・住民税の軽減税率が適用されます。
所得税(復興特別所得税を含む) | 住民税 | 合計 | |
---|---|---|---|
譲渡所得金額が6,000万円以下の場合 | 10.21% | 4% | 14.21% |
譲渡所得金額が6,000万円以上の場合の6000万円以下の部分 | 10.21% | 4% | 14.21% |
譲渡所得金額が6,000万円以上の場合の6000万円超の部分 | 15.315% | 5% | 20.315% |
課税長期譲渡所得金額(=A) | 税額 |
---|---|
6,000万円以下 | A×10% |
6,000万円超 | (A-6,000万円)×15%+600万円 |
相続した不動産の売却には、通常の不動産売買とはまた違う特有の注意点があります。売主様として、どういった点に気をつければいいのか知っておきましょう。
先述した「取得費加算の特例」と「相続空き家の3,000万円特別控除」には、適用できる期限があります。
相続開始のあった日の翌日から3年10ヶ月以内に売却
相続開始のあった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却。
3年というと長いようですが、遺産分割にかかるさまざまな要件に忙殺されているうちに、つい後まわしになってしまいがちです。相続した不動産の売却の特例には期限があることを忘れずに、テキパキと売却活動をすすめていきましょう。
共有名義で相続した不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要になります。
共有名義の不動産は共有者の中に反対者がいる場合、共有関係の解消など非常に手間がかかり、売却は現実的でなくなります。(自分の持分だけを売り出すこともできますが、共有者がいると不動産利用の自由度が減るため買主様が見つかりにくいというデメリットがあります)。
不動産の売却を考えているなら、相続時に共有名義にしない、または共有者全員が売却に賛成だという同意をとっておきましょう。
相続不動産を売却したとき、譲渡所得を計算する際の取得費は、被相続人の取得費を受け継ぐことができます。
取得費が不明で5%の概算法にすると、取得費が非常に少なくなるため譲渡所得が跳ね上がってしまいます。必ず取得費の資料を集めておきましょう。
直接の契約書などが見当たらない場合は、預金通帳の出金履歴、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、公的機関が公表している地価・建物費用など代替資料を用意しておきましょう。
不動産の売却は人生における一大イベント。しかも、相続した財産となるとさらに特有の問題も発生しがちです。相続不動産の売却には、細心の注意を払って正確に対応しつつ、期限内におさめるスピード感も求められます。
すまいValueは日本の大手6社が運営する不動産一括査定サイトで、相続不動産の売却の仲介も、事例豊富な大手不動産仲介会社に依頼できます。
相続した不動産を売却する際に相談してみてはいかがでしょうか。
髙野友樹
公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。
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