相続した家の売却を検討する前に、そもそもどのような状態のことを「親から家を相続した」というのでしょうか。家などの不動産を相続すると、そのほかの物品の相続では発生しない手続きが必要になります。
まず相続人(相続を受ける人)たちで遺産分割をしますが、このとき相続する不動産を査定または鑑定して、金銭的な価値を算出する必要があります。そして相続する財産の総額が基礎控除額を超えると、相続税を支払う準備をしなければなりません。
さらに家を相続する人が決まると、その相続人は法務局で相続登記という手続きをして名義を変更する必要があります。これらの手続きをすべて終えたとき、「親から家を相続した」ことになります。ただ、これらの手続きを未完了のままにしてしまっているケースは少なくありません。とくに相続登記は手間がかかりますし、司法書士に依頼すれば費用がかかります。それで相続登記をしないで長年放置してしまうことがあるのです。しかしそれでは、法律上「親から家を相続した」ことにはなりません。
さらに詳しく解説していきますが、相続税は「高額な遺産」を相続する際に発生します。相続税が発生する金額は、法定相続人が1人の場合は3,600万円です。つまり親から3,600万円以下を相続した場合は、相続税が課せられないのです。
また、2人の場合は総額4,200万円、3人は総額4,800万円、4人は5,400万円、5人は6,000万円となっています。「法定相続人が1人の場合、3,600万円までの相続には相続税がかからない」と聞くと、相続税の負担は小さいように感じるかもしれませんが、基礎控除額を超えた額を相続すると、負担感は一気に増します。
たとえば、基礎控除額を差し引いた相続金額が5,000万円を超えると、その20%を相続税として支払わなければならなくなります。仮に6億円を超えると55%も税率が掛かります。(※2)
(※1)参照:国税庁「No.4152 相続税の計算」
(※2)参照:国税庁「No.4155 相続税の税率」
「譲渡所得税」は、所得税と住民税を合わせた税金です。これを算出するには次の計算式を使って「譲渡所得」を算出する必要があります。
・譲渡所得 = 収入金額(家の成約価格)- 取得費 - 譲渡費用(仲介手数料など)
この計算式によって「譲渡所得」がプラスになれば「譲渡所得税」が発生し、0円かマイナスになれば「譲渡所得税」は発生しません。また、家を相続した後にその家を売却して「譲渡所得」がプラスになった場合、相続税と譲渡所得税の両方を支払うケースも考えられます。
相続した家を売却したときに、譲渡所得税(所得税と住民税)が安くなるルールがありますが、ルールが適用されるのは次のすべての条件に該当する人です。
このルールが適用されると、家の売却益に対して3,000万円の特別控除が受けられたり、通常より低い税率が適用されたりといった恩恵を受けることができます。さらに支払った相続税の金額を、譲渡所得を計算するときの取得費に加えることができます。これを取得費加算の特例といいます。いずれも譲渡所得税額を安くする効果があります。
家の相続を受ける相続人は、しっかりとその資産を有効活用したいものです。法定相続人たちでしっかり話し合って相続をスムーズに進めるのはもちろんのこと、相続登記を法律の規定どおりにすることも大切です。
被相続人が亡くなられたばかりの悲しい気持ちのなかで、これらの事務作業をおこなうのは大変です。司法書士などの法律のプロに、依頼できる部分は任せることをおすすめします。
そして相続した家を売却するときは、今度は住宅のプロに相談することをおすすめします。不動産仲介会社にも相続に詳しい担当者がいるので、相続した家の売却では頼りになります。
相続、不動産、相続税、所得税、住民税、不動産登記といった法律行為が立て続けに起きる「相続した家の売却」ですが、相続人は基本的な知識さえ押さえておけば、あとはその道のプロたちが適切なアドバイスや支援をしてくれるでしょう。土地を売る時のポイントについて詳しく知りたい方は、こちらもお読みください
小林弘司
不動産コンサルタント/不動産投資アドバイザー
東京生まれ、東京育ち。海外取引メインの商社マン、外資系マーケティング、ライセンス会社などを経て、現在は東京都内にビル、マンション、アパート、コインパーキングなど複数保有する不動産ビジネスのオーナー経営者(創業者)です。ネイティヴによる英語スクールの共同経営者、地元の区の「ビジネス相談員」、企業顧問なども行っています。
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