不動産仲介会社が提示する土地の売却査定価格は、立地や面積、過去の取引データなどさまざまな要素を踏まえ算出されます。売主様自身で確認できる市場相場情報は、不動産仲介会社のプロが査定する価格査定のように精度の高いものとはいきませんが、今後の土地活用の方向性を考える上での参考情報として役立てることが可能です。特に、特徴の異なる次の4つの価格を覚えておくと、土地の価格相場について理解を深められるでしょう。
実勢価格とは、実際に行われた売買取引の価格のことをいいます。実際の取引価格を確認するためには、国土交通省が運営する「土地総合情報システム(不動産取引価格情報検索)」WEBサイトを活用しましょう。このサイトでは「取引時期」「物件の種類」「地域」を絞り込むことで、実際に取引のあった全国の不動産価格情報を検索、確認することができます。
公示価格とは、地価公示法に基づき国土交通省が毎年3月頃に公表する毎年1月1日現在での標準地1平米あたりの価格指標のことを指します。地価公示法に基づいて公表される公示価格は、使用状況などに左右されないよう「更地」として評価されている点が特徴です。
公示価格は、国土交通省の「土地総合情報システム(標準地・基準地検索システム)」 WEBサイトなどで調べることができます。
基準地価とは、各都道府県が毎年9月頃に公表する毎年7月1日現在での基準地1平米あたりの価格指標のことをいいます。基準地価は、公示価格と発表時期が異なること、また、調査地点も異なる箇所もあることから不動産価格を決定する際の指標として互いに補完する役割を果たしています。
基準地価を確認するためには、「土地総合情報システム(標準地・基準地検索システム)」WEBサイトから検索、確認できます。
路線価とは、主要な道路に面する宅地1平米あたりの評価額のことをいいます。相続税や贈与税の課税標準となる国税局が公表する相続税路線価といいます。また、路線価は、公示価格の8割程度の評価となることが特徴です。相続税路線価を確認するためには、一般財団法人 資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」 WEBサイトから検索、確認できます。
固定資産税評価額は、固定資産評価基準をもとに各市町村が個別に決める評価額であり、固定資産税を計算するうえでの基準となります。土地の固定資産評価額は、公示地価の7割ほどが目安です。ただし、同じ地域でも土地の場所、面積、形状、道路への接し方などにより評価額は異なります。
ご紹介した4つの価格指標は、すべてご自身で検索、確認することができますが、所有する不動産と同一エリアに所在する類似した不動産価格指標であったとしても、実際にその不動産を売却する際の売却価格とは相違する可能性があります。
それは、不動産は非常に個別性が強い資産であり、地形・土地の面積・土地が接道する前面道路との接道距離・前面道路幅、前面道路との高低差、また、売主様の売却事情や現時点の市場環境の変化などの影響も成約価格に反映されるからです。そのため4つの価格指標は、あくまで参考情報にとどめ、実際の売出し価格や成約価格とは必ずしも一致するものではないということを押さえておきましょう。
とはいえ、売却の検討をし始めた段階では、ご紹介した4つの価格指標を事前に知ることで、ご自身の所有する土地の市場相場を確認できますので、今後の展開をイメージするためには有効な手段であるといえます。
その上で、現在の市場環境に合わせた実際の売却想定価格を知りたい、また、売却後の手元に残る金額を試算したいなど、具体的な今後の展開を相談したい場合には、迷うことなく不動産売買の専門家である不動産仲介会社に売却査定価格の算定を依頼しましょう。
不動産仲介会社の売却査定は、通常、無料で実施してくれます。また、複数の不動産仲介会社に売却査定依頼をすることで、各社が提示する売却査定価格や売却提案内容を比較検討できますので、ぜひ活用してみましょう。
売却想定価格が確認できたら、売った後にかかる税金や仲介手数料などの諸費用を大まかに試算することができます。
以下では、税金と仲介手数料の計算方法を見ていきましょう。
(例)6年間所有した土地を売買価額5,000万円で売却した際に、譲渡所得(利益)が600万円であった場合
・税金
印紙税:10,000円
計算式:印紙税法に定める不動産売買契約書に記載する金額(売買価額)によって税額が変動します。今回のケースでは、売買価額が、1,000万円を超え5,000万円以下の範囲に該当することから印紙税は、10,000円となります。なお、2020年3月31日までの間に作成される不動産売買契約書については、印紙税の軽減措置の適用があり、今回のケースでは軽減措置後の印紙税額を適用しています。
所得税:918,900円
計算式:6,000,000円×15.315%(長期譲渡所得の税率を適用)=918,900円
※上記税率には、復興特別所得税を含みます
住民税:300,000円
計算式:6,000,000円×5%(長期譲渡所得の税率を適用)=300,000円
・仲介手数料
仲介手数料:1,684,800円
計算式:50,000,000円×3%+6万円=1,560,000円×8%(消費税)=1,684,800円
・税金と仲介手数料の合計額
税金:1,228,900円
仲介手数料:1,684,800円
合計額:2,913,700円
上記の場合、税金と仲介手数料の合計額は2,913,700円で、税引後の実際に手元に残る利益は4,781,100円(譲渡所得6,000,000円-所得税918,900円-住民税300,000円)となります。
今回のケースでは、譲渡所得に課税される所得税・住民税の税率を長期譲渡所得の税率で計算していますが、この税率の区分は、不動産の所有期間(不動産を売却した年の1月1日時点において、所有期間が5年以下、または、5年超で短期譲渡所得・長期譲渡所得を区分)によって税率が変動します。譲渡所得に課税される所得税・住民税を試算する際は、不動産の所有期間に特に注意してください。
また、居住用不動産の売却の場合には、譲渡所得金額を最高3,000万円まで控除できる特例(居住用3,000万円の特別控除の特例)や不動産の所有期間が10年を超える場合には、課税譲渡所得に対する税率が軽減される特例(10年超所有軽減税率の特例)など、一定要件をクリアできれば、税金を抑えられる各種特例もあります。
今回のケースでは、土地を売却した際の税金の特例の適用を考慮せず試算していますが、ご自身の所有している不動産の所有期間や各種特例の適用の可否によって、手元に残る金額は大きく変わってきますので、各種特例を理解した上で、ご自身に有利な特例を選択することが重要です。
もしも諸費用の計算や税金のことなど不動産売却について不安なことがあれば、不動産仲介会社のサポートを受けながらひとつひとつ不安を解消していきましょう。 諸費用には、既述した印紙税・所得税・住民税・仲介手数料の他、土地の測量費用・登記申請手続き費用(登録免許税含む)・建物の解体費用・引越し費用など、不動産の状況や売却計画によってかかる費用とかからない費用がありますので、売却査定の際にでもご自身の不動産売却にかかる諸費用を不動産仲介会社に確認してみてください。
土地を売る際の売却想定価格の調べ方や売却にかかる諸費用・税金の計算方法についてまとめてまいりました。
土地の売却検討の際には、事前に実勢価格や公示価格などの各価格指標を事前に確認し、売却想定価格をイメージしてみるとよいでしょう。その上で、不動産の売却時にかかる諸費用・税金を計算し、手元にお金がどのくらい残るのか試算してみてください。
もしも売却想定価格のイメージがわかない、諸費用・税金の計算方法がよく分からないなどのお悩みごとがあれば、迷うことなく不動産仲介会社に売却査定依頼をしてみましょう。
常に生の市場動向に接している不動産仲介会社であれば、独自のデータ分析や市場動向などに加え、売主様ご自身の売却ご事情も考慮した上で、精度の高い売却査定価格を提案していただけることでしょう。
本サイト「すまいValue」では、複数の不動産仲介会社へ売却査定依頼ができますので、各社の売却査定結果を比較検討した上で、よりご自身にあった不動産仲介会社を選択することが可能です。ぜひご利用してみてください。
※不動産仲介会社の選び方に関しては下記も参考に。
「不動産仲介会社の選び方を徹底解説!選ぶポイントと注意点とは」
土地を売る時のポイントについて詳しく知りたい方は、こちらもお読みください
松本佳之
税理士・公認会計士・行政書士
1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)入所。2005年公認会計士三次試験合格、公認 会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。
最後までお読みいただき、
ありがとうございます。
ご回答ありがとうございました。