土地を相続すると、相続税のほかにも毎年の固定資産税や都市計画税、土地の管理のための維持費などが発生します。そのため、土地を有効活用できない場合は、売ることも選択肢の一つとなるでしょう。
しかし土地を売って利益がでた際には「譲渡所得」として所得税・復興特別所得税・住民税などの税金を支払う必要があります。また、売買契約書に貼る印紙も税金の一つです。
両親の死去などで土地などの不動産を相続し、相続財産が一定額以上となる場合には、相続税を支払う必要があり、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告をおこなわなければなりません。
その後、第三者に不動産を売却した場合、相続の申告期限から3年以内であれば、「相続税の取得費加算の特例」という制度の適用を受けることができます。
土地売却にかかわる税金は土地を売った際の利益に対して課せられますが、「相続税の取得費加算の特例」の適用を受けると、支払った相続税を土地の取得に支払った費用に加算することができます。
これにより譲渡所得を少なくすることができるため、それにかかる所得税も少なくなります。
ただし、この「相続税の取得費加算の特例」は、相続時に相続税を払った場合にしか使えません。また、相続税がかからない相続(相続税の基礎控除額を超えない場合など)には適用できないため、注意が必要です。
相続税の基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
一般的に譲渡所得にかかる税率は、売主様がその不動産の所有者になってから売るまでの所有期間が5年超なのか5年以下なのかで異なります。このときの所有期間は、売った年の1月1日時点で判断します。
所有期間が5年を超える場合の税率は、所得税15.315%、住民税5%ですが、所有期間5年以下で売ったときの税率は所得税30.63%、住民税9%となります(所得税率には復興特別所得税も含みます)。
なお相続により取得した不動産の、譲渡所得の計算における所有期間については、相続人が所有していた期間ではなく、被相続人が相続対象となる不動産を取得した日を相続人が引き継ぐことになります。
相続した土地を売った場合には、必ず税金を支払う必要があるのでしょうか?
相続した土地を売る場合、課税対象となるのは、「譲渡所得」部分のみです。譲渡所得は、土地の売却代金から土地を取得した費用、その際にかかった手数料などの経費、売ったときに発生した諸費用を差し引いて算出します。
これらの経費を差し引いて譲渡益がでなければ譲渡所得税は課されません。
譲渡益(譲渡所得)=売却代金-(土地の取得費+土地の譲渡費用)
土地の取得費には、土地の購入代金、仲介手数料、不動産取得税や登録免許税のほか、購入後の一定の整備費なども含められます。土地の購入代金とは、被相続人が土地を取得したときの金額のことで、相続時の時価は関係ありませんので、注意してください。
もし、取得したときの売買契約書などの記録がなく、購入金額が不明な場合には譲渡所得の計算ができません。しかし、その場合には、土地の売却代金の5%を取得費とみなすことができます。
たとえば、売却金額が1億円の場合には、5%の500万円が取得費となります。
また、土地の譲渡費用としては、仲介手数料や抵当権抹消登記費用なども対象となります。
これらの計算をした結果、譲渡所得がゼロあるいはマイナスの場合には、所得税や住民税はかかりません。
また、譲渡所得がプラスとなる場合でも、特例を適用した結果、所得税や住民税がかからないこともあります。
税金を正しい額で納めるには、土地の取得費用と譲渡費用についてできるだけ詳細な資料を集め、正しく特例の適用の検討をする必要があるでしょう。
相続した土地を売るときでも、基本的には通常の不動産を売るのと同じように税金がかかりますが、相続税の取得費加算の特例などいくつかの特例が設けられています。ただし、特例は適用されるための要件が決められており、自動的に適用されるわけではありません。相続した土地を売る際は、不動産仲介会社などの専門家に一度相談をするようにしましょう。
※土地を売る際の税金に関しては下記も参考に。
「相続した不動産を売却する際の流れとそれにかかる税金について」
土地を売る時のポイントについて詳しく知りたい方は、こちらもお読みください
松本佳之
税理士・公認会計士・行政書士
1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)入所。2005年公認会計士三次試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。
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