マンションを売却するということは、法律的には、そのマンションの所有者の名義が変わることを意味しています。しかし、マンションに抵当権がついていると、名義を変更することができません。つまり、売却するには抵当権を外さなければならないのです。
抵当権とは、マンションオーナーが住宅ローンの支払いができなくなったときに、住宅ローンを貸している銀行がそのマンションの所有者になる権利です。マンションを購入したときに銀行などの住宅ローンを借りた場合、その銀行はマンションに抵当権をつけます。したがって、抵当権は住宅ローンを完済しなければ外れません。
はじめに紹介する「売却代金の充当」も、次に紹介する「買い替えローン」や「任意売却」も、住宅ローンを全額返済して抵当権を外し、マンションの名義を変更して売却を完了させる、という点では同じです。
まずは「売却代金の充当」方式によるマンション売却を見ていきましょう。3つの方法のうち「売却代金の充当」方式が最も理想的な売却方法です。
たとえば、売却代金が2,500万円以上であれば、売却代金をそのまま充当して、残債2,500万円を完済できます。この状態であれば、抵当権を外す同意を銀行から得られるため、売主様は無事マンションを売却することができます。 また、仮に売却代金が2,500万円以下だとしても、不足分を自己資金等でご用意すれば、完済することができます新規に買い替えローンを借りて残債を完済する
もし、売主様がマンションを売却した後に別の住宅を新たに購入する場合、「買い替えローン」方式を使うことができます。買い替えローンは、売却するマンションの残債分と新たに購入する住宅の購入代金を合わせてローンを組む方法です。
買い替えローン方式なら、売主様は自己資金を用意することなく、既存の住宅ローンの残債を支払うことができます。マンションの売却額2,000万円を住宅ローンの残債の支払いに充てても、500万円足りません。
この場合、3,500万円(=新住宅3,000万円+不足500万円)の買い替えローンを組むことで、マンションの残債完済と新しい住宅の購入のための資金を調達することができるのです。
ただし注意しなければならないのは、買い替えローン方式は、住宅ローンの残債の支払いのために自己資金を用意する必要はありませんが、その分「借入金」は増えるということです。上記の事例では、マンションを売却する前の借金は2,500万円でしたが、買い替えローンによる借金は3,500万円なので、借金が1,000万円増えることになります。ローンの支払いが難しくなったら任意売却という方法がある
収入が減るなどして住宅ローンの支払いが難しくなり、なおかつマンションの売却予定額が住宅ローンの残債を下回った場合で、自己資金を用意することもできず、なおかつ買い替えローンも組めない状況の場合は、任意売却という方法でマンションを売ることが可能です。ただしこの任意売却は、あくまでも最後に残された手段と考えるべきでしょう。
たとえば、住宅ローンの残債が2,500万円で、マンションの売却額が2,000万円に決まったとします。この場合、住宅ローンを完済するには500万円足りませんが、これを保証会社が売主様(債務者、マンションの元のオーナー)に代わって銀行に支払います。この保証会社による銀行への支払いのことを、代位弁済といいます。
その後、債務者は保証会社に500万円を返済していくことになりますが、そもそも住宅ローンを払えないからマンションを手放したようなケースでは、通常の支払い方法で500万円を返済することは難しいでしょう。マンションはローンの残債があったとしても、売却額を残債に充当したり、買い替えローンを活用したりすることで売却することができます。買い替えローンが使えなくても、最終手段として任意売却という方法もあります。ご自身の収入と支出のバランスをよく考え、最もよいと思われる方法を選びましょう。
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小林弘司
不動産コンサルタント/不動産投資アドバイザー
東京生まれ、東京育ち。海外取引メインの商社マン、外資系マーケティング、ライセンス会社などを経て、現在は東京都内にビル、マンション、アパート、コインパーキングなど複数保有する不動産ビジネスのオーナー経営者(創業者)。ネイティヴによる英語スクールの共同経営者、地元の区の「ビジネス相談員」、企業顧問なども行う。
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