訪問査定と机上査定について、「訪問査定=詳細な査定」、「机上査定=簡易的な査定」という認識を持つ方もいるでしょう。
売りたい物件の条件や売主様の希望がさまざまであるため、マンション売却時の査定方法は「詳細だから良い」「簡易的だから良い」とは一概に言いきれません。
まずは査定方法の違いによるメリット・デメリットを知り、自身の希望に適した査定方法について考えていきましょう。
マンションの売却を検討する段階で大切なのは、マンションの査定価格(価値)を知っておくことです。査定価格は「いくらで売れるのか」という目安となり、後の売却活動にかかわる重要な要素となります。プロの視点で、根拠にもとづいた適正な査定をおこなってもらうことが大切です。
訪問査定とは、売却予定のマンションを不動産仲介会社が訪問して、物件の詳しい状況を確認する査定方法です。不動産仲介会社は、書類やデータから把握できない細かいポイント(詳しくは後述します)を確認できるため、より適正な査定が実施されます。
訪問査定は、マンションの価値を左右する詳細な状況を査定に盛り込んでもらえる点がメリットです。書類やデータではわからない現地の状況(室内の状況、近隣の状況など)を加味した査定は、簡易的な査定に比べて、より適正な査定結果を期待できます。
また、訪問査定は不動産仲介会社と実際に対面でき、担当者の誠実さや説明の丁寧さ、親しみやすさなどを確認することも可能です。
訪問査定は、不動産仲介会社との日時調整が必要です。複数の不動産仲介会社へ訪問査定を依頼する場合、売主様にとってスケジュール調整に負担を感じやすい点がデメリットといえるでしょう。
査定当日は30分~1時間ほどの時間を要します。
訪問査定後、査定結果が出るまでの日数は5営業日以内が目安。訪問査定は、簡易的な査定に比べて査定結果が出るまでに時間がかかる傾向があります。
机上査定とは、売却予定のマンションを訪問せず、資料やデータ、過去の実績などをもとにする査定方法です。マンションの情報がわかる書類から物件の概要をまとめ、条件が似ている周辺物件や不動産市場の動向などをもとに査定価格が算定されます。
現地の状況を盛り込む訪問査定に比べると簡易的な査定といえる机上査定ですが、査定時は多くの取引実績や相場も用いられます。査定結果が出るまでの時間が1~2営業日と早いため、短い期間で妥当性のある査定を期待できるでしょう。
日時調整の必要がなく手軽に物件の価値を把握できる机上査定ですが、実際に売却を進める際は適正価格を知るために訪問査定を依頼する必要があります。不動産仲介会社と媒介契約を結んで本格的な売却活動を進めるには、訪問査定を行ったのち、売却計画の確認などを経て媒介契約を締結するという流れが一般的です。
マンションの査定に関しては以下の記事で詳細に解説しています。
マンション査定を行う際の注意点と重要なポイントを解説!簡易査定と訪問査定は何が違う?必要な書類は?
机上査定は、マンションを「売ろうか迷っている人」におすすめの査定方法です。複数の不動産仲介会社へ一括査定を依頼すると、マンションのおおよその相場をすばやく知ることが可能です。査定結果によっては、「まだ売らないでおこう」もしくは「もう売ってしまおう」と、次のステップへ進むこともできるでしょう。
訪問査定が向いている人は、「マンションの売却を具体的に検討している売主様」です。
訪問査定でマンションの適正な価格を知ることができると、具体的な売却計画に役立てられます。不動産仲介会社により査定結果は異なるため、信頼のおける不動産仲介会社を見極めることが大切です。
机上査定は、売りたい物件の大まかな価値を把握するのに適した査定方法です。机上査定で算定された価格は「売れる価格」や「売出価格」ではない点に注意してください。
実際の査定では、「できるだけ早く売却したい」「時間がかかっても適正価格で売却したい」など、さまざまな希望があるでしょう。これらの売却理由によって、売出価格は前後します。
売主様の事情や希望を盛り込んだ売却活動をおこなうには、訪問査定で実際に相談し、プロのアドバイスを受けることがおすすめです。
訪問査定までに「査定に影響するものを知っておきたい」「可能なかぎりマンションの評価を高めておきたい」と考える売主様もいるでしょう。
ここからは、訪問査定で確認されやすいポイントについて解説します。
立地や周辺環境は、マンションの査定価格にもっとも影響します。
特に駅からの距離が近い中古マンションは高い需要があり、査定でも高評価を受けやすいです。また、ショッピングモールやスーパーなどの買い物施設、小学校や中学校、病院など、周辺環境が優れているかどうかもポイントです。
築年数は5年以内など浅いほど人気が高く、逆に築年数が増えるほど価値は低くなる傾向にあります。
総戸数が多い、敷地が広いなど、マンション全体の規模が大きいと、良い評価を受けやすいでしょう。エントランスや廊下、外壁などに高級感があるマンションも、建物の外観が優れていることから高評価を受けやすいです。
エリアやマンションのスペックにより入居者の性質は異なりますが(ファミリー層なのか、単身世帯なのかなど)、いずれにおいても需要のある広さや間取りを持つマンションは高評価です。
例えば、「駅から近くて十分な間取りのマンション」は幅広い世帯から人気があり、プラスの査定となります。一方で「駅から距離があるコンパクトマンション」は、単身者やディンクスなどの少人数世帯からも十分な需要が見込めず、査定ではマイナス評価となることが考えられます。
とはいえ、広すぎる間取りや高級な設備が導入されているマンションだからといって強気の価格設定をしてしまうと、売却に支障が生じる可能性もあります。優れた条件がそろっていても、売却することを優先するには相場よりも価格を下げなければならないケースもあります。
専有部分の設備で重視されるポイントとしては、浴室やキッチンの広さ、導入されているグレードなどが挙げられます。
マンションは戸建てに比べて防犯性に優れていますが、1階部分はこの恩恵を受けにくく、評価されにくい傾向があります。
一方、角部屋で採光が取りやすい位置や、南向きの方角で一日の日照時間が長いといった物件は高評価です。
1981年(昭和56年)6月1日以降に建築許可が下りたマンションは、「新耐震基準」の物件です。これより前の「旧耐震基準」による物件は、大地震への不安や住宅ローンの組みにくさなどの観点から売りにくく、査定ではマイナスの評価となりやすいでしょう。
マンションの管理状況が良いと、査定でプラスの影響が出やすいです。
例えば、管理人が常駐しているマンションは防犯性や利便性に優れ、高評価です。エントランスや廊下の清掃・メンテナンスが行き届いている、不要なものが放置されていない、ゴミ置き場のマナーが守られているといったマンションならば、安全性や衛生面の良さから高評価となるでしょう。
築年数が古いマンションでも外壁塗装などのメンテナンスが計画的に実施されていれば、マンションの価値は上がる傾向にあります。
管理費や修繕積立金が高額な場合、査定でマイナスの評価を受けやすいです。他のマンションに比べて管理費や修繕積立金が高い場合、設備や管理において優れたアピールポイントがないか確認しておきましょう。
共有施設が充実していると、査定でプラスの評価を受けやすいです。
共有部分では、オートロックや監視カメラなどのセキュリティ設備、歓談・休憩スペースやゲストルームなどの設備が設けられていると高評価です。
利便性を高める設備としては、宅配ロッカーや、ペット用水栓(足洗い場)、洗車スペースなどもプラスの評価を受けることがあります。
共有施設が充実したマンションは人気もあり全体的にプラスの査定となりやすいのですが、管理費とのバランスも重視されます。
大規模修繕の計画が立てられているマンションは、査定に影響が出る可能性があります。大規模修繕を実施する際は、追加で修繕積立金の徴収が行われるケースもあるためです。
査定時は、現在のリフォーム状況や、今後のリフォームの必要性などが加味されます。
マンション査定時の注意点とポイントに関しては以下の記事にて解説しています。
マンション査定を行う際の注意点と重要なポイントを解説!簡易査定と訪問査定は何が違う?必要な書類は?
専有部分では、主に設備や内装の傷み具合が重視されます。水回りや床材、壁紙など目立ちやすい内装の傷みが経年によるものかどうか、クリーニング可能かといった点がポイントです。
また、ペットの飼育状況やゴミの放置、クリーニングが難しい臭いや汚れなどは、マイナス評価の対象です。
駐車場付きのマンションでは、駐車場の台数、現在の利用可否、タイプ(平面もしくは機械式)などが加味されます。専有部分の所有権に駐車場を利用できる権利が含まれている場合(分譲方式)、査定価格がアップする傾向にあります。
マンションの施行会社や販売会社が大手企業の場合、安心感があるという面からプラスの評価を受けることがあります。反対に、過去に問題や不祥事などがあった企業の場合、マイナスの査定となってしまう可能性もあります。
訪問査定に向けた準備を進めるならば、情報の整理や部屋の掃除、資料の調達をおこないましょう。
しかし、「良く見せたい」「価値を上げたい」という理由から、自己判断でむやみにリフォームをおこなうことはおすすめできません。
ここからは、訪問査定で必要な準備と不要な準備について詳しく見ていきましょう。
訪問査定前は、次の3つの準備を整えておくことをおすすめします。「査定当日に何を話せばいいかわからない」「重要な事項を伝え忘れてしまわないか心配」という方も、参考にしてみてください。
訪問査定当日は、不動産仲介会社へマンションのプラス面とマイナス面をわかりやすく伝えましょう。具体的には、以下のような内容が挙げられます。
〈プラス面〉
リフォーム履歴、通学路の安全性や見守り体制、学校や病院などの周辺施設・環境 など
〈マイナス面〉
壁や床など内装の大きな傷、設備の故障状況、漏水状況、近隣とのトラブル など
欠陥となるマイナス面を隠したまま売却をおこなった場合、売主様が責任を負う必要があるため注意してください。訪問査定ではマイナス面も隠さずに伝え、売却に向け最善の準備を進めることが大切です。欠陥部分を修繕せず売却をおこなう場合は、買主様にも問題点を知ってもらい、両者が納得できるかたちで売買契約を結ぶことが得策です。訪問査定当日までに不具合箇所や損傷箇所をまとめ、修繕の必要性についてはプロのアドバイスを参考にしましょう。
マンションの印象を良くするためにも、内装や設備は入念な掃除をしておきましょう。
第一印象にかかわる玄関や廊下、汚れが目立ちやすいキッチンや水回りは、とくにチェックされやすいポイントです。大きな窓や開放的なバルコニーが魅力のマンションならば、重点的に掃除をすることをおすすめします。そうでなくても、展望チェック時は窓やバルコニーがチェックされるため、不要なものやゴミを放置しないよう注意しましょう。
訪問査定の際に揃えておくとよい資料には、以下のようなものがあります。
分譲時のパンフレットなど新築分譲時(=購入時)の物件資料一式、
間取り図などの図面
重要事項説明書
管理規約
使用細則
購入時の金額や現在の住宅ローン残高がわかる書類
増改築の有無(実施している場合は工事時期や箇所)がわかる書類
固定資産税や管理費がわかる書類
修繕積立金などの控え など
上記は訪問査定時に必須となることはありませんが、売主様が把握していない多くの情報が記載されていることから、用意できているとスムーズな査定を期待できます。また、図面や重要事項説明書など一部の書類は売却時に必要となるため、早い段階で準備しておくことをおすすめします。
訪問査定前に焦っておこなう必要がない準備は、「リフォーム」です。なぜリフォームの必要性が低いのか見ていきましょう。
売主様目線で「直しておくべき」と考えてリフォームしても、リフォームにかかった費用の対価が得られるとはかぎりません。
例えば、査定前に400万円かけて浴室をリフォームした場合、売却時の価格を400万円以上上乗せできるかというと、相場や他の条件から難しい可能性もあります。査定の段階では、リフォームが有利に働くケースは多くないため、訪問査定前にリフォームをおこなう必要はありません。
中古マンションを探す方のなかには、物件をできるだけ安価で購入し、セルフリノベーションで自分の理想に合った仕様にしたいという買主様もいます。事前のリフォームが売却活動の妨げとなってしまう場合もあるため注意しましょう。
マンション売却時のリフォームの有無に関しては以下の記事を参考ください。
マンション売出価格にリフォーム費用上乗せは困難なのか?
訪問査定を受ける際は、マンションの価値を知ると同時に、媒介契約を結ぶ不動産仲介会社を見定める必要があります。マンション売却のパートナーとなる優良な不動産仲介会社を見つけるためにも、訪問査定を受ける際の注意点と上手な見定め方について知っておきましょう。
不動産仲介会社により得意なエリアや分野が異なることから、最終的に伝えられる査定価格に大きな金額差が出ることもあります。さまざまな視点から査定してもらうためにも、マンション売却時は必ず複数の不動産仲介会社へ訪問査定を依頼しましょう。
先述のように、訪問査定により出された査定価格は「売れる価格」や「売出価格」ではありません。査定価格は価格設定の際の目安のひとつであり、実際に売却活動を進めていくと当初の査定価格から大きく値下げをおこなうといったケースもあります。
「高い査定価格だから利益が出る」ということはないため、査定価格だけで不動産仲介会社を選ばないよう注意しましょう。「査定価格の根拠がきちんと答えられる不動産仲介会社」を選ぶことが大切です。
不動産仲介会社の信頼性を見定めるには、以下のようなポイントを確認することをおすすめします。
その不動産仲介会社でできる集客方法をすべて実施してもらい、売却の機会を多く獲得することが重要です。どのような集客方法が可能なのか、どのような集客効果が期待できるのか、確認しましょう。
不動産仲介会社がおこなう販売活動の内容次第で、売却にどれだけ力を入れてくれそうか確認できます。
売出価格の決め方やネット上での物件の見せ方は、売主様の希望も汲んでもらえるか確認してみましょう。オープンルームの実施やチラシの見本などは、実施する目的や意図をわかりやすく説明してくれるかどうかもチェックしてみてください。
売りたいマンションと同じエリアを得意とする不動産仲介会社ならば、その地域ならではの専門知識や販売経路を持っていることもあります。売りたいマンションがあるエリアの売却実績は忘れずに確認し、過去の実績や実際の広告を参考に、具体的な販売戦略や売却計画を立てられるかどうか相談してみましょう。
マンションの売却を悩んでいる段階では「机上査定」をおこない、すでに売却を検討している段階では「訪問査定」をおこなうことをおすすめします。訪問査定では適正な査定価格を知るだけでなく、売却に向け、パートナーとなる不動産仲介会社を見定めることも重要です。
複数の不動産仲介会社へ訪問査定を依頼する場合、スケジュール調整が必要ではあるものの、優良な不動産仲介会社に出会える確率は間違いなく上がります。
売主様が個人で複数社へ訪問査定を依頼すると多くの手間や時間がかかることが予想されるため、信頼のおける不動産一括査定サイトを利用することがおすすめです。
宮本弘幸
宅地建物取引士
1960年石川県加賀市生まれ。大学卒業後、大手ハウスメーカーの営業として20年勤務した後、地元、金沢小松、加賀で不動産・住宅の営業に携わる。2016年より、石川県小松市にて、株式会社みやもと不動産を開業。お客さまのニーズをよく共有し、最適な提案を行う営業スタイルで、お客さまに愛される不動産業を心がけている。宅地建物取引士のほか、ファイナンシャルプランナー(AFP)、相続診断士などの資格を保有。
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