不動産売買は一度に大きな金額が動く取引であり、マンション売却も例外ではありません。正しい知識を持って事前準備を行うことが大切です。
昨今では、インターネットを通じて、マンション売却の準備に必要な情報を手軽に収集できます。
しかし、マンション売却の希望条件が異なれば、必要な知識や準備も異なります。
自分のケースに合った準備を行わないと、思わぬ失敗につながることもあるでしょう。
「とにかく高値で売りたい」
「できる限り早く売りたい」
「損をせずに売りたい」
以上は例ですが、まずはどのような売却なら自分にとって成功かを考え、優先するポイントを明確にすることが大切です。
ここからは、マンション売却における「売却前」「売却中」「売却後」のよくある失敗例を見ていきます。
多くの方が失敗しやすいポイントを参考に、準備を整えましょう。
売却前は、大きく分けて「情報収集」「査定」「売却準備」の3つのステップがあります。
このうち、「査定」と「売却準備」のタイミングでは、次のような失敗が起こりやすいです。
マンションを売却する際、まずは不動産仲介会社へ査定を依頼します。
査定を1社のみにしか依頼していない場合、査定額の相場が把握できないため、のちの価格設定や売却計画に影響が出ることがあります。
マンション売却前の査定は必ず複数社へ依頼し、正確な相場感を把握することが大切です。
「査定額の高さ」で不動産仲介会社を選ぶと失敗のリスクが高まります。
「不動産仲介会社から提示された査定額=売却できる価格」ではありません。
相場を大きく上回る査定額を提示された場合、売却自体が難しくなることがあります。
「高額な査定額だったから」と安易に不動産仲介会社を決めないほうが賢明です。
あまりにも他社と異なる査定額を提示された場合は、査定額の根拠をしっかり確認しましょう。
マンション売却に不慣れな不動産仲介会社へ依頼すると失敗の確率が上がります。
共有部分の調査や大規模修繕計画の確認、買主様への重要事項説明など、マンション売却にはやることがたくさんあります。
戸建て売却や土地売却に比べて専門性が問われるため、マンション売却に不慣れな会社による仲介では、売却がスムーズに進まない可能性があります。
多数の不動産仲介会社からマンション売却の得意・不得意を見分けるには、得意とするエリア、例えば「マンションが多い都心部を得意としているか」「マンションの売買実績が豊富かどうか」といった点を確認するようにしましょう。
時間に余裕がない状態で不動産の売却を進めると、失敗することがあります。
住み替えやライフスタイルの変化などから「急いでマンションを売りたい」と焦り、相場を下回る価格での売却となる可能性があるからです。
マンション売却にかかる期間は9ヶ月が目安とされています。
時間の焦りから判断を誤らないために、計画を立て、早めに準備を始めることが重要です。
相場を大きく上回る価格で売り出すと、買主様が見つからず、売れ残る可能性が高まります。長い期間売れ残ると、相場を下回る価格での売却となることもあるでしょう。
できるかぎり高値で売りたい場合は、極端に相場を上回ることがないよう、適正な価格設定を心がけましょう。
「首都圏における近年(2017年)の中古マンションは、売出価格よりも1割ほど低い価格で取引されている」というデータがあります(東日本不動産流通機構)。
いい換えれば、ほとんどの売却で値引き交渉が行われたということです。
売主様は、売出価格から1割ほど低い成約価格になることを見越し、相場より1割ほど上乗せした価格を設定すると、適正価格での売却を実現しやすくなるでしょう。
売却に承諾できる最低価格が決まっていないと、売却期間が長引き、売り時を逃す可能性があります。
売却期間が長引くと精神的な負担も大きくなりますし、前述のように相場を下回る価格での売却となることもあります。
売出価格を決める際は「この価格なら売却してもいい」と思える最低価格を考えておきましょう。
最低価格を決めきれない場合は、不動産仲介会社へ相談して的確なアドバイスをもらうことをおすすめします。
住宅ローンが残っているマンションは、基本的には住宅ローンを完済しないと売却手続きを進められません。
ただし、マンションを売却して得られる金額、もしくは、手持ちの資金と合わせて住宅ローンの残高以上になるという場合は、売却と同時に住宅ローンを完済できるため、手続きを進めることが出来ます。
住宅ローンの残高を把握せずに誤った資金計画でマンション売却を進めてしまうと、住宅ローンを完済できず、売却自体がストップする可能性があります。
住宅ローンの残高は資金計画に欠かせない情報です。住宅ローンを借り入れている金融機関のWebサイトや窓口で、事前に確認しておきましょう。
それでは、マンションの査定までに押さえておくべきポイントをあらためて確認しましょう。
売却中は、「売却活動」をスムーズに進めるためにも、不動産仲介会社との連携が欠かせません。
ここからは、マンション売却中によくある失敗例を見ていきましょう。
売出時期を見極めずに売却を進めると、相場より低い価格での売却となる可能性があります。
例えば、相場以下の価格で売りに出されているマンションが近隣にある場合、該当の物件が売れるまで、似た条件のマンションは売りにくくなります。
また、住み替えの需要が下がる時期や、内覧希望者が少なくなる連休の時期などは、ほかの時期に比べて売りにくい傾向があります。
売出時期を見極めるには、すでに売りに出ている競合物件や、売りたいマンションの周辺環境、その時期の社会情勢など、アンテナを幅広く張る必要があります。
ただし、売出時期を吟味している間にマンションの価値が下がってしまっては本末転倒です。
マンションの築年数や修繕計画へも意識を向け、最適な売出時期を見極めましょう。
内覧準備が不十分なままでは、売却のチャンスを逃すことにつながります。
内覧時の部屋の第一印象は、買主様の購入意思を大きく左右します。
「部屋のメンテナンスが行き届いていない」
「整理整頓がされていない」
「新たに居住するイメージがつかない」
このような状態では、買主様が購入を決断するに至らず、「内覧希望者はいるけど売却につながらない」という状況に陥ってしまいます。
売却のチャンスを逃さないためには、内覧時期までに掃除を行い、適切なメンテナンスをすませておくことが大切です。水回りなど汚れがひどい部分は、プロへ清掃を依頼するのもおすすめです。
個人で室内の清掃を行う際は、以下のような状態だと買主様へ悪い印象を与えやすいため注意してください。
また、売主様が内覧に立ち会う際は、聞かれる質問を想定し、不動産仲介会社の担当者と打ち合わせておくことも重要です。
内覧当日に「質問に答えられない」「よく考えずに答えて印象を落とす」といった失敗がないようにしましょう。
不動産仲介会社の担当者は複数の物件を担当しているケースが多く、良好な関係を築けていないと対応が疎かになる可能性があります。
売主様と担当者の間に温度差があると、「やり取りに時間がかかる」「相談や依頼が先延ばしになる」といったことが重なり、結果として売却がスムーズに進行しなくなることも考えられます。
そのため、仲介を依頼した不動産仲介会社の担当者とは早い段階から密にコミュニケーションを取り、信頼関係を築くことを意識しましょう。
早い時期から良好な関係を築くことができれば相談や依頼をしやすくなりますし、売却活動を積極的に進めてもらえるようになるでしょう。
それでは、マンションの売却活動までに押さえておくべきポイントをあらためて確認しましょう。
売却契約や物件の引き渡しが済んだあとも、トラブルが起こる可能性はあります。
ここからは、マンション売却における失敗例について見ていきましょう。
マンションの設備に関する不具合をきちんと買主様に伝えられていない場合、売却後にクレームが発生する可能性があります。売却後の買主様からのクレームは、売主様が直接対応しなければいけないケースが多いため、注意したいポイントです。
マンションの設備に関する告知は、売買契約の際に「付帯設備表」と「告知書」を作成して行います。
付帯設備表:
付帯設備の状況(有・無・撤去)や、不具合について記載した書類
告知書:
売却時、物件が抱えている不具合や問題(瑕疵)について記載した書類
これらの書類は、(実際にマンションに居住もしくは所有している)売主様と不動産仲介会社の認識に相違がないか、確認したうえで作成することが大切です。
売主様が日常的に使用していない設備があれば、書類作成のために動作確認を行うことも忘れないようにしましょう。
付帯設備表や告知書の作成には時間がかかるため、早い段階から準備を進めておくと安心です。
マンションを売却すると大きな金額が動きます。損をしないためにも、税金についての知識をつけておくことも重要です。
例えば、マンション購入後、5年以内に売却した場合と、5年を過ぎてから売却した場合では、譲渡所得(マンション売却で得た利益)に課せられる譲渡所得税に大きな差があります。
譲渡所得税を抑えるために、一般的には「マンション購入後、5年以内に売却しないほうがいい」とされています。
ただし、「3,000万円の特別控除」など、所有期間の長さに関係なく活用できる仕組みもあります。
マンション売却後にかかる税金の仕組みや特例について勉強し、失敗を回避しましょう。
買主様が住宅ローン審査に通らないなどの理由から、売買契約がキャンセルとなることがあります。
買主様の都合で買えない状況になった場合、ローン特約があると、売買契約を解除し、買主様から受け取った手付金を全額返金しなければなりません。
売買契約がキャンセルとなると、時間や労力を無駄にするだけでなく、次の売買契約で再度仲介手数料を支払う場合もあります。
買主様都合のトラブルは、事前のヒアリングで回避できることもあります。
不動産仲介会社によっては、売買契約キャンセルのリスクを減らすために事前審査を実施している場合もあるので、確認してみましょう。
マンションを売りに出してから数ヶ月たっても買主様が見つからない場合、売却をあきらめる方も多いです。
マンションの売れ行きは、前述のように売出時期や市場の需要などさまざまな要素に左右されるため、「こうすれば売れる」という条件はありません。
通常、不動産仲介会社との媒介契約(仲介を依頼するための契約)の有効期限は3ヶ月です。この期間を過ぎても売却できる見込みがない場合は、以下を参考に売却活動の内容を見直す必要があります。
・広告活動
大手不動産仲介会社のWebサイトやポータルサイトへの掲載は十分か
近隣の賃貸マンションへ広告活動を行っているか
近隣の不動産仲介会社へ物件の告知を行ったか
物件広告に不備がないか
・売出価格
最新の市場相場にそった価格設定ができているか
相場より低い価格の競合物件が売りに出されていないか
広告活動や売出価格設定など、売却活動の内容を見直しても買主様が見つからない、そもそも売れない理由が不透明、といった場合は、他の不動産仲介会社への変更もおすすめします。
それでは、上記の失敗例をもとに、マンション売却後までに押さえておくべきポイントを確認しましょう。
マンション売却の成否は、売却をサポートする不動産仲介会社の力量に左右されるといっても過言ではありません。
しかし、不動産仲介会社によって得意とする物件に違いがあることから、「A社なら安心」と一概にいいきることはできません。
売りたい物件が戸建てかマンションか、都心か郊外かなど、条件によって相性のいい不動産仲介会社は異なります。
「自分のケースに最適な不動産仲介会社」を選ぶようにしましょう。
不動産仲介会社選びには、以下2つのポイントを比較することが大切です。
まずは自分が売りたいマンションの特徴(規模やエリア、沿線)を把握し、不動産仲介会社がどのような物件を得意としているのかを確認しましょう。
多くの不動産仲介会社は扱う物件の得意・不得意を普段は公表していないため、過去の取引実績を参考にすることをおすすめします。
特定のエリアや物件のタイプで豊富な取引実績がある場合、その条件で物件を売却するノウハウがあると判断できます。
不動産仲介会社選びでは、コミュニケーションを取る機会の多い担当者の比較・検討も大切です。「マンション売却の専門知識を持っているか」だけでなく、以下のポイントに当てはまるかどうかも確認しましょう。
〈信頼できる担当者を見極めるためのポイント〉
また、担当者の対応に疑問を覚えたら、見過ごさずに質問や確認をすることも欠かせません。不動産仲介会社選びの段階で次のような対応が見られる担当者は、トラブルに発展する可能性もあるため避けておくと安心です。
〈避けておいたほうがいい担当者の特徴〉
不動産仲介会社の担当者とは、数ヶ月かけてマンション売却を進めていきます。
信頼のおける担当者と出会えたときは、より親身になってもらえるよう、「不動産仲介会社が嫌う顧客」にならないよう注意することも大切です。
〈売主様が気を付けるべきポイント〉
信頼でき、かつ相性のいい担当者を見つけることができると、マンション売却失敗のリスクを減らすことにつながります。
不動産仲介会社を選ぶ際に迷いやすいポイントとして「大手」か「中小」か、があります。
ここからは、大手と中小のメリットを比較しながら、自分にあった不動産仲介会社を考えていきましょう。
大手不動産仲介会社の中には、仲介業務以外にも、関連するクリーニングサービスやリフォームサービスを展開している企業もあります。
大手不動産仲介会社へ依頼すると、こうしたサービスの紹介のほか、自分では気づかないような工夫や対策を広い視野でアドバイスしてもらえるでしょう。
売却活動を進める際は、以下の点でメリットがあります。
・抱えている顧客数が多い
大手の不動産仲介会社は全国に店舗を持ち、対応しているエリアも豊富です。そのため、抱えている顧客数が多く、買主様を全国から募ることができます。中小と比べると買主様候補の人数が多いので、それだけ売却のチャンスが多いといえます。
・資金力があるので広告宣伝力がある
大手の不動産仲介会社は資金力に長けているため、テレビコマーシャルや雑誌掲載などの大々的な広告を打ち出すことが可能です。
多くの方に物件を見てもらえるので、魅力をアピールできるマンションならば、売りどきを逃さずに売却のチャンスをつかめるでしょう。
・従業員の応対が安定している
大手の不動産仲介会社は研修制度が整っており、社員教育がしっかりしています。どの店舗においても従業員の対応が安定していることから、対応面でストレスを受ける心配が少ないでしょう。
担当者との相性の悪かった場合などは、従業員数が豊富なエリアであれば、相談を経て担当者を変えてもらえる場合もあります。
安定した接客で対応してもらえる点は、コミュニケーションに自信のない売主様にとって大きなメリットといえます。
中小の不動産仲介会社は、大手のようなサービス展開などが少ない反面、地域に根づいた営業力を発揮できるという特徴があります。
売却活動を進める際は、以下の点でメリットがあります。
・地域特性に精通している
地元密着型のビジネスを展開している点が、中小不動産仲介会社の特徴です。
その地域ならではの情報や特性を理解しているので、スムーズな売却活動が期待できるでしょう。
また、大手では「売りにくい」とされるような物件も、地域独自のコミュニティを通じて売却できる可能性があります。
「大手で断られたけど中小で取り扱ってくれた」というケースもあるため、一般的に売りにくいとされるマンションの売却を検討している際は、中小の不動産仲介会社への依頼も視野に入れましょう。
・細かいコミュニケーションを取りやすい傾向にある
抱える案件数の兼ね合いで、中小の不動産仲介会社は従業員1人あたりが担当する物件数が大手より少ない傾向があります。
そのため、担当者と連携を図りやすい点もメリットです。
長年、同じエリアでビジネスを行っている中小の不動産仲介会社なら地域の情報にも詳しく、周辺環境や行政など不動産以外の情報について教えてもらうこともできるでしょう。
大手の不動産仲介会社と中小の不動産仲介会社はそれぞれメリットが異なるため、売りたいマンションの性質に合った不動産仲介会社を選ぶことが大切です。
不動産仲介会社を大手と中小で迷ったら、両社へ査定を依頼し、それぞれの対応の違いを比較してみるのもいいでしょう。
マンション売却を成功させるには、進捗に合わせてさまざまなポイントに留意する必要があります。
今回紹介した「売却前」「売却中」「売却後」の失敗例のほとんどは、知っていれば回避できるトラブルです。押さえておくべきポイントや知識を把握して、マンション売却を成功させましょう。
不動産仲介会社のアドバイスやサポートが、売却をスムーズに進めるカギとなります。
マンション売却の成否は、不動産仲介会社選びで決まるといっても過言ではありません。
多くの不動産仲介会社から信頼のおける会社を見つけることから始めましょう。
大手・中小を問わず複数の不動産仲介会社をすばやく比較するなら、インターネットから簡単に申し込みできる「すまいValueの一括査定」をおすすめします。
宮本弘幸
宅地建物取引士
1960年石川県加賀市生まれ。大学卒業後、大手ハウスメーカーの営業として20年勤務した後、地元、金沢小松、加賀で不動産・住宅の営業に携わる。2016年より、石川県小松市にて、株式会社みやもと不動産を開業。お客様のニーズをよく共有し、最適な提案を行う営業スタイルで、お客様に愛される不動産業を心がけている。宅地建物取引士のほか、ファイナンシャルプランナー(AFP)、相続診断士などの資格を保有。
最後までお読みいただき、
ありがとうございます。
ご回答ありがとうございました。