マンションの売却には、多くのステップがあります。
マンションを売りに出してから成約までにかかる期間は、一般的に3~4ヶ月です。売却活動前の相場調査や引渡しまでの準備期間を含めると、期間はさらに長くなり半年以上かかることもあります。
ただ、必ずしも空き家の状態で売却活動をする必要はありません。
引渡し時期までに退居する前提であれば、売主様は売却活動期間中もマンションに住み続けられます。
では、マンションに住みながら売却を行う場合、売却活動にどのような影響があるのでしょうか。
マンション居住中に売却活動を進めると、売主様には以下のメリットがあります。
マンションに住みながら売却活動を行う場合、一般的には、売買契約が成立してから新居を購入する流れとなります。
マンションの売却代金を住宅ローンの返済にあてることもでき、成約価格次第では売却益だけで住宅ローンの完済も可能です。
マンションの売却を先に進めることで、所有マンションに残っている住宅ローンと新居の住宅ローン(もしくは家賃)を二重で支払うリスクが減ります。
マンションの売却を先行すると、売却後に得られる金額を明確に把握できます。
そのため新居の購入を先行する場合に比べて資金管理がしやすく、住宅ローンの返済や新居の購入に関わる資金計画に狂いが生じにくくなります。
マンションの引渡し日と新居の入居日を調整し、引越しの直前までマンションに住み続けられれば、一時的な仮住まいを探す必要がなくなります。
一度の引越しで住み替えができるため、引越しにかかる費用(引越し費用、仮住まい先の敷金・礼金、賃料など)や、荷造りにかかる手間を減らせる点もメリットです。
すでにマンションから引越して新居に住んでいる場合は、内覧に立ち会うために新居から出向く必要があります。
しかし、マンションに住みながらの売却であればスムーズに立ち会えます。スケジュール調整もしやすいでしょう。
買主様からの細かい質問にすぐ回答でき(住んでいるからこそ答えられる内容など)、買主様の反応が芳しくなかった部分は、次回以降の内覧に活かせます。
間取りの使い方や室内の特性をアピールできる点もメリットです。
例えば、ダイニングセットやソファーなどの大きな家具をキレイに配置しておけば、生活の導線が見え、「実際に住むイメージ」を持ってもらえます。
マンションに住みながらの売却活動には、デメリットもあります。
どのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。
生活感があると、買主様にネガティブな印象を与える可能性があります。
「使った食器が置いてある」「洗濯物が干してある」「掃除を怠っている」など、生活感が出過ぎていると、売却の機会を逃すかもしれません。
内覧前に掃除を行い、生活用品や荷物を整理整頓するなどして、買主様が不快に感じないように気を配りましょう。
「急な内覧希望に対応できない」など、売主様と買主様のスケジュールが調整しにくい点もデメリットです。
ただ、不動産仲介会社はこうした売主様の事情も考慮したうえで、事前にスケジュール調整をしています。「準備期間がないまま内覧の対応をしなければならない」といったことはありません。
「内覧希望が集中しやすい土日祝日は予定を空けておく」「あらかじめ内覧対応可能な日程を伝えておく」などの対策をし、スケジュールを調整しましょう。
室内に家具や家電などが設置されていると、間取りや室内の正確な状態が伝わりにくくなります。傷や汚れが家具や家電で隠れている場合があるからです。
隠れている傷や汚れについて何の説明もないまま売却となれば、あとからクレームになる可能性があります。
トラブルを避けるためにも、内覧の際に伝わりにくい傷などは細かく説明できるよう準備しておきましょう。
マンションに住みながらの売却活動は、どうしても室内が汚れやすくなりますが、室内はできるかぎりキレイに保ち、内覧の前に行う掃除の手間を軽くしましょう。
上述したデメリットについては、事前の準備を行っておくことで対策できるものがほとんどです。しっかり対策をしておけば、マンション売却をスムーズに進められるでしょう。
次は、マンションに住みながら売却を成功させるためのコツを解説します。
マンションに住みながらの売却は「物件の情報を買主様へ伝えにくい」という特徴があります。
室内の状態や物件情報を正確に伝えることで、買主様の購入意欲を高められますし、トラブルを未然に回避することもできます。
売却を成功させるために「内覧準備」と「資料作成」に力を入れ、マンションの状態や魅力を細かく知ってもらいましょう。
ここからは、具体的なコツを解説します。
住みながらの売却では、空き家に比べて生活感が伝わりやすいというデメリットがあります。
ただ、内覧に向けて準備ができていれば、買主様へネガティブな印象を与えず、売却できる可能性が高まります。
内覧準備では、「掃除」に力を入れることが大切です。
内覧のたびに掃除をすることはもちろん、急な内覧希望にも可能な範囲で対応できるよう、家をキレイに保っておきましょう。
特に入念な掃除を心がけたいポイントとして、以下の場所が挙げられます。
キッチン、浴室、トイレ、洗面といった水回りは汚れが目立ちやすい場所です。また清潔感を見られる場所でもあるので、内覧に向けて汚れや水垢を落としておきましょう。
内覧当日は洗剤や掃除用具を一時的に撤去しておきましょう。より清潔感のある空間に見せられます。
フローリングは視界に入る面積が大きいうえ、小さな汚れでも「汚い」という印象を与える可能性があります。掃除機をかけ、丁寧に拭き掃除を行いましょう。
クローゼットや押入れ、床下収納などに不用品を詰め込んでいると、本来の収納量が伝わりにくくなりますし、買主様へ与える印象も悪くなります。不用品はできるだけ処分し、「見せられる収納」を意識して整理整頓を行いましょう。
買主様の中にはニオイに敏感な方もいます。室内のニオイは実際に住んでいると気づきにくいものです。
特に「ペットを飼っている」「家族に喫煙者がいる」といった場合は、消臭剤や芳香剤を使い、ニオイ対策をしましょう。当日は、内覧の1時間前から換気を行っておくと安心です。
上記は、内覧時に買主様が気にしやすい代表的なポイントです。
内覧に向けた掃除について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
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また、ペットがいる場合、内覧当日は散歩に連れて行くなどの配慮も大切です。
買主様によっては動物が苦手だったり、アレルギーがあったりという可能性もあります。「ペットがいて内覧に集中できなかった」ということがないよう、対策を考えておきましょう。
売主様が住みながらの売却でも、こうした工夫を取り入れることで内覧の質は上げられます。
不動産売却は買主様との相性が大きく関わってくるため、準備を整えて「数」をこなすことも売却のチャンスを増やすことにつながります。
一度でも多くの内覧希望に応えられるよう、準備を整えておくことが大切です。
また不動産仲介会社と連絡を取り、内覧に向けたスケジュール調整もしておきましょう。
電話番号、メールアドレスを伝えるだけでなく、どうしても対応できない場合にそなえて、身内から代理人を見つけておくのもいいでしょう。
室内に家具や荷物があると、空き家に比べて空間が狭く見え、実際の広さや形状を把握しづらくなります。住んだままの売却ではこうした状況は避けられないため、物件の詳細情報が分かる資料を準備しておきましょう。
一般的に、マンションの売却活動で必要となる資料は不動産仲介会社に作成してもらえます。
ただし、新築分譲時に取得できるマンションの間取り図やパンフレットなどは、不動産仲介会社側で準備できない場合もあります。
新築分譲時の広告は物件の魅力や設備が分かりやすくまとまっているので、手元にあれば積極的に活用してください。
売主様の手元にある資料で物件の情報や魅力が記載されたものがあれば、不動産仲介会社へ提示し、資料作成の参考にしてもらいましょう。
周辺の環境や、生活のしやすさなども資料としてまとめられると、内覧時のアピールにつながります。
不動産仲介会社には以下の情報を伝えておきましょう。
実際に住んでいるからこそ分かる情報を入れることで、しっかりとアピールできる資料になります。
上記のほかにもアピールポイントがあれば積極的に不動産仲介会社へ伝え、資料作成に活かしてもらいましょう。
現地でしか伝えられない魅力(話題のスポットや人気のお店など)を伝えることも効果的です。
魅力をまとめた資料を不動産仲介会社と協力し、作成しておくのもいいでしょう。
買主様が気になるポイントとして、実際に住んだときのネガティブな情報(騒音や近隣トラブルなど)が挙げられます。
中には答えにくい質問もあるかもしれませんが、質問を想定し、回答を準備しておくと、落ち着いて対応できます。
ネガティブな質問に対する回答は、ポジティブな内容となるようにしましょう。
〈買主様からのネガティブな質問の回答例〉
Q.騒音はありませんか?
A. 通勤通学や帰宅の時間帯は、窓を開けるとわずかに通行人や車の走行音があります。住宅街の一角なので一日をとおして静かで、窓を閉めると騒音はほとんど気になりません。
Q.近隣トラブルはありませんか?
A.私が住んでいる間はマンション内のトラブルを見聞きしたことはありません。ゴミ捨て場など共用部分のマナーもマンション全体で気を付けられている印象です。
Q.住むにあたって不便に感じることはありますか?
A.年に一度、近所の神社で祭りがあり、御神輿が通るときは自動車の通行止めがあります。自動車通勤だと、その際は迂回の必要があります。
内覧時の対応で不安なことがあれば、不動産売却のプロである不動産仲介会社へ相談しましょう。
マンションに住みながらでも売却は可能です。
住みながら内覧を行うと、間取りや室内の特性をアピールできる一方で、生活感が出て売却を遠ざけてしまうこともあります。
しかし、内覧前に入念な掃除や片付けをしたり、マンション周辺の魅力を整理しておいたり、入念な準備を行うことで、買主様にいい印象を持ってもらうこともできます。
不動産仲介会社と密に連携を取りながら買主様の立場に立った配慮を心がけ、満足できる売却を目指しましょう。
売却の第一歩として、マンションの価値を知ることから始めてみましょう。
マンション売却を検討している方は、この機会にすまいValueの一括査定をご活用ください。
マンション売却の具体的流れから注意点、失敗談、費用と税金対策など基本を解説
中村 昌弘
宅地建物取引士
都内大学を卒業後に新卒で上場ディベロッパーに就職。マンションの販売・企画・仲介などを経て2016年に独立。独立後は、不動産事業としては主にマンション売却のコンサルタントに従事している。
最後までお読みいただき、
ありがとうございます。
ご回答ありがとうございました。