
オーナーチェンジとは、現在部屋を借りている賃借人はそのままに、投資用の不動産物件(マンション1棟やマンション1室、戸建て住宅、店舗など)を売買する手法のことです。
この場合、次のオーナー(物件所有者)となる買主様は、現在の賃貸借契約や賃借人への敷金の返還義務、毎月の賃料を受け取る権利などを現オーナー(売主様)から引き継ぐことになります。
マンションの所有権や賃貸借契約などの権利の移転はありますが、マンション入居者の実生活に影響がおよぶことは、ほとんどありません。
一方、同じように投資用の不動産物件を売却するケースでも、全室空室状態で賃借人がいない場合はオーナーチェンジとみなされません。物件に1世帯以上の賃借人がいる状態での不動産売却がオーナーチェンジとなります。
投資用の不動産売却においてオーナーチェンジを行うメリットには、以下があります。
〈売主様側のメリット〉
〈買主様側のメリット〉
現在賃借人がいるマンションを売却しようとすれば、場合によっては長い交渉期間が必要となり、売主様には多くの手間や費用が発生します。
オーナーチェンジでの不動産売買は、売主様の負担を軽減しつつ、買主様を募りやすい不動産売却の手法だといえます。
一般的な不動産物件(居住用や空室の物件)と比較すると、そもそもの需要が低いことから相場以下の売出価格設定とするケースが多いですが、順調に売却活動が進めば、短い期間でマンションを現金化することも可能です。
オーナーチェンジによるマンション売却の手順は、一般的なマンション売却とほぼ同じです。まずはマンション売却の基本の流れを確認し、オーナーチェンジではどのような手順が増えるのか見ていきましょう。
一括査定とは、一度に複数の不動産仲介会社へ査定を依頼する方法のことです。
一括査定後に各社から提示される査定価格は「3ヶ月~半年での売却を希望する場合、売出価格はいくらか」といった簡易的な試算が一般的です。
一括査定ではマンションの詳細な価値を知ることはできませんが、一度に複数社の査定価格を確認でき、売主様の相場調査にかかる手間を軽減できます。
なお、査定を申し込んだからといって売却を進めなければいけない、といったことはありません。
マンションの相場を知るには、売主様個人で調べるなど査定以外の方法もありますが、まずは気軽に相談する気持ちで一括査定を依頼することをおすすめします。
専門家のアドバイスや査定の結果をもとに再度検討してもいいですし、売却計画を練り直すこともできます。
査定後、「売却(仲介)を依頼したい不動産仲介会社」が決定したら、仲介を依頼するための媒介契約を結びます。
媒介契約の内容をよく確認し、信頼できる不動産仲介会社と契約を結びましょう。
なお、媒介契約には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」と3種類あり、それぞれ条件が異なります。それぞれの媒介契約の特徴を把握し、自分の希望に合った媒介契約を選ぶようにしましょう。
媒介契約ごとの契約内容・条件の違いついては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:不動産売却の仲介で媒介契約はなぜ必要?
媒介契約締結後は、不動産仲介会社のサポートを受けながら売却活動を行います。
広告・宣伝や買主様からの問い合わせ対応など、専門知識が必要な売却活動においては、不動産仲介会社が対応を担うケースが一般的です。
売主様には、買主様を集うための広告づくりに協力する、必要書類や資料を集めるといった対応が求められます。
また、オーナーチェンジの際は、基本的に物件に入居者がいるため内見の対応はありませんが、一部空室がある場合などは対応が発生することもあります。
購入を希望する買主様が見つかったら、事前に作成したレントロール(賃貸借条件一覧表)を開示します。
レントロールとは、マンションの賃借に関わる情報を記載した資料をいい、「家賃明細表」とも呼ばれます。
レントロールは不動産仲介会社が作成することが多いです。
規定の書式がないので、ケースにより記載内容に違いが出てきます。
レントロールに記載される情報は、主に以下があります。
・部屋や賃借人を特定する基本的な事項
賃借人の部屋番号、契約開始日、解約日 など
・賃借契約のある部屋に関する情報
間取り、専有面積、契約期間、賃借人の氏名や属性(個人もしくは法人) など
・賃借契約のある部屋の価値に関する情報
現在の家賃、共益費、敷金(保証金)、礼金 など
買主様にレントロールの情報を確認してもらったうえで、売買契約に向けた交渉を進めます。
レントロールから読み取れるマンションの経営状況や売却の条件に双方が合意できたら、売買契約を締結します。
一般的な不動産売却と同様に、売買契約成立後は決済と登記手続きを行い、引き渡しの準備期間に入ります。
オーナーチェンジによるマンション売却では、賃貸借契約に基づく権利の引き継ぎが必要ですが、これは所有権の移転登記と同時に引き継がれるので、買主様はご安心ください。
マンションの入居者へオーナーチェンジがあったことを知らせるタイミングは、引き渡しの完了後が一般的です。通達は書類で行い、家賃の振込先や管理会社など「オーナーチェンジによる変更点」を記載します。また、オーナー名は、旧オーナー(売主様)と新オーナー(買主様)の連名で作成します。
オーナーチェンジによりマンション売却をしたとしても、税制上の扱いは、一般的な不動産売却と違いはありません。マンション売却により売却益があった場合は、売却した翌年の確定申告期間(2020年度は2月16日~3月15日※)に確定申告をすませ、所定の方法で税金を納めます。※土日祝日により例年前後します
課税された税金の金額に不明な点がなく、問題なく納税がすめば、オーナーチェンジによるマンション売却は完了となります。
オーナーチェンジをスムーズに進めるには、一般的なマンション売却の手順に加え、どのような工夫を行えばいいのでしょうか。ここからは、オーナーチェンジでのマンション売却を成功させるための4つのコツを紹介していきます。
前述したように、オーナーチェンジは買主様に多くのメリットがあります。
中でも、マンション購入後すぐに家賃収入を得られ、利回りを計算しやすい点は大きなメリットです。
売主様は「買主様のメリット」を減らさないよう、入居者に契約更新をしてもらえる工夫をしましょう。
具体的には、更新期限が近い入居者の「更新料を無料にする」のが有効です。賃借物件の更新に関する通知は、通常であれば更新期限の1~3ヶ月前に入居者のもとに届きます。更新料を無料にする旨を早めに伝えて、契約更新を促すようにしましょう。
家賃や初期費用(敷金・礼金)が抑えられた物件は入居者からの需要があります。価格を見直すことで入居率の改善や早期退居の防止効果が期待できるでしょう。
ただ、マンション経営の収益となる家賃などを低く設定すると、新オーナーとなる買主様のメリットは少なくなります。
まずは、現在の家賃設定が相場と合っているかを確認し、実際の経営状況と照らし合わせながら金額を見直してみましょう。
長年契約内容を変えることなく契約更新を続けている入居者がいる場合、気づかぬうちに相場とかけ離れた金額設定となっている可能性もあります。
家賃や初期費用の金額設定で不安があれば、不動産仲介会社の担当者に相談しましょう。
オーナーチェンジでのマンション購入は内見ができず、買主様は物件の状態を細部まで確認できないケースが多いです。物件の瑕疵(かし)※や賃借契約にまつわるトラブルは買主様にとってリスクとなるため、売主様は売却の理由や過去の運用状況を明確に伝えましょう。※隠れた欠陥のこと
以下の情報の開示を求められたときも、できるだけ対応するようにしましょう。
誠実な対応と不安の解消が、スムーズな売却につながります。
不動産仲介会社を選ぶときは、マンション売却だけでなく、オーナーチェンジの実績が豊富かどうかを確認しましょう。オーナーチェンジによるマンション売却は、一般的なマンション売却に比べて買主様のなり手が少なく、売却の難易度が上がります。
仲介を依頼する不動産仲介会社の手腕によっては「買主様が見つからない」「売出価格を大幅に見直さなくてはならない」といった状況になることも考えられます。
不動産仲介会社を選ぶ際は、査定価格や担当者との相性だけでなく、「オーナーチェンジのマンション売却をどれほど扱っているか」「どれほどの宣伝力があるか」という点にも目を向けて、実力を見極めましょう。
ここからは、オーナーチェンジによるマンション売却をする前に、知っておきたい注意点について見ていきます。
オーナーチェンジ物件は、ほかの物件と査定方法が異なります。
一般的に、オーナーチェンジ物件は「収益還元法」を用いて査定が行われます。
収益還元法とは、物件が将来的に生み出せる収益に基づいた不動産査定評価の手法のことです。
収益還元法は、収益力が査定価格と比例するため、物件が本来持っている価値より高い評価がつく場合や、低い評価がつく場合があります。
一般的に不動産の価値は築年数、立地、間取りなどで決まりますが、収益物件は実際に住む人ではなく投資家がターゲットになります。そのため、何より「所有することで利益が得られるかどうか」が重視されます。
投資用の不動産物件においては、「利回りの高さ=売れやすさ」とはいえません。
例えば、利回りが高くても、瑕疵物件や地方の物件は入居需要が少ないので入居率の維持が難しくなります。中長期的な投資が目的の買主様からは、購入を躊躇されることもあるでしょう。
売却の可能性を高めるには、競合物件にない以下のような「差別化ポイント」をアピールすることが大切です。
一方、利回りが低い物件については、入居率を維持できる以下のような要素があれば大きなアピールポイントとなります。
なお、マンションの実質利回りの算定方法は、以下のとおりです。
実質利回り(%) =(年間の家賃収入 - 年間経費)÷ 物件価格 × 100
オーナーチェンジを想定したマンション売却でも、居住用マンションとしての購入を検討する買主様が現れる場合もあります。
一般的に、オーナーチェンジでのマンション売却では、以下の理由から居住目的の買主様は避けたほうが無難だといわれています。
オーナーチェンジ物件を買主様の居住用マンションとして売却することになれば、現在の入居者が退居する必要が出てきます。しかし、売主様は基本的に、現在の入居者を強制的に退居させることはできません。
「売却のタイミング」で「現在の入居者が契約更新の時期を迎え」、かつ「退居を希望する」など、特定の条件が重ならないかぎり、売却後、スムーズに買主様が入居することは難しいと覚えておきましょう。
たとえマンション売却後すぐに買主様が入居できるとしても、現在の入居者が退居前の内見に応じてくれるケースは稀といえます。
このように入居者・買主様との交渉や内見の手配にかかる負担を考えると、オーナーチェンジ物件を居住用マンションとして売却する選択はおすすめできません。
オーナーチェンジ物件を居住用マンションとして購入する場合、買主様は低金利の住宅ローンを利用できず、最終的に購入を断念するケースがあります。
住宅ローンは居住用の住宅を購入することを目的に低い金利が設定されているため、収益物件とみなされるオーナーチェンジ物件の購入には利用できません。
オーナーチェンジ物件の購入でローンの借入れが必要な場合、おもに「不動産投資ローン」を利用しますが、住宅ローンとは金利に大きな差があります。
一般的な住宅ローン金利:0.5~2.0%
不動産投資用ローン金利:1.5~4.5%
また、上記2つのローンでは、返済期間の設定方法も異なります。
不動産投資用ローンでは、耐用年数に基づいた返済期間が設定されるため、築年数が古い物件ほど返済期間が短く、月々の返済額は高額となります。
オーナーチェンジ物件を居住用マンションとして売却することは不可能ではありませんが、双方のリスクや負担は大きくなります。もしも、居住用マンションの購入を検討する買主様が現れた場合は、不動産仲介会社と相談のうえ、リスクを回避する適切な対応を心がけましょう。
オーナーチェンジによるマンション売却の流れは、一般的なマンション売却の手順とほぼ同じです。
オーナーチェンジの場合にのみ必要となる手順として、
などがあります。
解説したコツや注意点を参考に、売却活動を進めましょう。
売主様の希望どおりにオーナーチェンジを完了させるには、不動産仲介会社による専門的なサポートが必要です。
優れた実績を誇る不動産仲介会社を選ぶためにも、まずは複数社への一括査定を行いましょう。
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マンション売却の具体的流れから注意点、失敗談、費用と税金対策など基本を解説
宮本弘幸
宅地建物取引士
1960年石川県加賀市生まれ。大学卒業後、大手ハウスメーカーの営業として20年勤務した後、地元、金沢小松、加賀で不動産・住宅の営業に携わる。2016年より、石川県小松市にて、株式会社みやもと不動産を開業。お客さまのニーズをよく共有し、最適な提案を行う営業スタイルで、お客さまに愛される不動産業を心がけている。宅地建物取引士のほか、ファイナンシャルプランナー(AFP)、相続診断士などの資格を保有。
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