投資用のマンションを手放すときは、自分の希望を満たせるように売却時期を見極めることが大切です。
しかし、最適な売却時期は、個々の状況によって変わります。
例えば、投資用マンションを所有する目的と実際の状況が異なれば、当初の計画よりも早い段階で「売却」を選ぶケースもあるでしょう。
投資用のマンションは、「いずれ売却して利益を出したい」「賃貸にして家賃収入を得たい」といった目的による所有が一般的です。「目的が果たされそうにない」「所有し続けることが難しくなってきた」という場合は、「売却」という選択肢が出てきます。
売却時期を考える目安として、次のような状況に当てはまるかどうか確認してみてください。
上記に当てはまる場合、「損益を出さないため」や「資金をつくるため」などを目的とした売却を検討することになるでしょう。
このように個々の目的に合わせるほか、投資用マンションを売却するときは、市況や損益など多くの要素から売却時期を見極める必要があります。
投資用マンションは、不動産としての価値や需要に重きを置く住宅用のマンションとは異なり、売却時期の見極めが難しいものです。
では、投資用マンションの売りどきを「ここだ」と見極めるには、どうすればいいのでしょうか。
ここからは、投資用マンションの売却時期を考えるうえで大切な6つのタイミングについて解説します。
投資用マンションの運用で得た利益が、購入金額を超えたタイミングは売りどきです。
投資用マンションの利益には、大きく分けて「家賃収入」と「売却で得る譲渡所得」があります。
例えば、1,080万円でマンションを購入し、毎月の家賃収入が60万円の場合、18ヶ月を超えると「購入金額<家賃収入」となるので、売却のタイミングだと判断できるというわけです。
ただし、不動産売却後は税金がかかるため、「課税金額を差し引きしても利益が出るか」という点に留意する必要があります。
前述したように売却時期は目的によっても異なるため、上記のタイミングを考慮したうえで「より早く売る」のか「焦らず売る」のか、判断することが大切です。
前述したように、投資用マンションの購入金額以上の価格で売却できるタイミングは、売りどきです。
例えば、「1,500万円で購入したマンションが今なら2,000万円で売れる」といったケースが該当します。
しかし、購入時にかかった金額を売却時の成約価格が上回ることは、投資用マンションにおいて稀です。一般的に、所有期間が長くなるほど不動産の価値は減少し、購入時の成約価格よりも低い金額での売却となる傾向があります。
「購入時に比べて土地の開発が進み、土地の価値が上昇している」など、一部の状況を除いては「購入時の成約価格<売却時の成約価格」となることは少ないでしょう。
とはいえ、売却で得る所得も、投資用マンションの運用において重要な利益です。適正な価格で投資用マンションを売却するために、物件の現在の価値を正しく知ることから始めてみましょう。
不動産の価値や相場を知る方法は多岐にわたりますが、不動産仲介会社へ査定を依頼すると、成約事例などに基づいた査定価格を知ることができます。
投資用マンションにおける理想の状態は、安定した利益が継続して発生している状態です。
メンテナンスや修繕などにより一時的に支出があったとしても、利益が安定していれば運営を続けられます。
一方、「利益が下がっていて今後、赤字が見込まれる」「すでに赤字が大きい」といった場合は、損失を増やさないために売却を検討することになるでしょう。
ただ、不動産投資による損失が生じた際は、「損益通算(※)」を行い、税負担を軽減させることが可能です。
※この場合、不動産投資で生じた赤字を、ほかの本業の所得などから差し引きできる制度のこと
損益通算を行うと、税金の還付を受け、赤字分を相殺できる可能性があります。
損失の増加を避けるために売却を検討している方は、選択肢が増えるかもしれません。
こうした対策も兼ねて最善の方法を選びたいという方は、不動産の専門家へ相談することをおすすめします。
ライフスタイルの変化や事業の立ち上げなどでまとまったお金が必要になった際、投資用マンションの売却を検討することもあるでしょう。
家族の入院や子どもの進学など、お金が必要になるシーンはさまざまです。
また、投資用マンションを売却して住宅用のマンションを購入するといったケースもあります(住み替え)。
「まとまったお金が必要」という状況は、子どもの進学のようにある程度時期が分かっているものもあれば、そうでないものもあります。
資金調達のために投資用マンションを売却する際は、個々の都合や計画に支障をきたさないよう、出来る限りスムーズに進めたいものです。
資金調達が必要になり、投資用マンションを売却したいという場合は、手厚いサポートやフォローのある不動産仲介会社へ相談してみましょう。
不動産の所有期間が5年を超えると、売却後にかかる譲渡所得税率が低くなり税額が少なくなります。
そのため、投資用マンションの購入から5年を超えたときは、売却を検討するタイミングとなります。
譲渡所得税に関する所有期間(年数)は、「物件を売却した年の1月1日時点で5年を超えるかどうか」で判断します。
例えば、2015年3月10日に投資用マンションを購入し、2020年内に売却をした場合、所有期間は「4年」です(2020年1月1日の時点では購入から5年が経過していないため)。
上記のケースで「所有期間が5年を超えている」とみなされるのは、2021年1月1日以降に物件を売却した場合です。
では、所有期間が5年を超えるタイミングで売却を行うと譲渡所得税にどれほどの差が生じるのでしょうか。
税制では、次のように定められています。
所有期間が5年以下の税率:
39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%)
所有期間が5年超の税率:
20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)
不動産の所有期間が5年を超えていると、譲渡所得税の税率は約半分にまで抑えられます。
一般的に、不動産は所有期間が長くなるほど価値が低下するため、税率が下がる「所有期間5年を経過した後の6年目」を1つの売りどきと考えることも可能です。
投資用マンションの売却では、「住人がいるかどうか」が売りやすさに影響を与えます。
入居者がいない場合は「毎月いくら利益が上がるか分からない」「利回りが把握しにくい」など、買主様にデメリットがあり、売却できる確率が低くなる可能性があります。
一方、すでに入居者のいる投資用マンションであれば、売却できる可能性が高まります。「購入後すぐに利益が発生する」「利回りを把握しやすい」など、買主様側のメリットがあるからです。
さらに「空室が埋まったばかり」「空室だった期間が短い」といったタイミングなら、「入居日が新しいので次の契約更新まで時間がある=利益を確保できる期間が長い」と判断され、不動産としての価値が見いだされやすくなります。
より一層相場に近い価格での売却が期待できるでしょう。
上記のように、入居者を引き継ぐかたちで売却した不動産は「オーナーチェンジ物件」と呼ばれています。
なお、オーナーチェンジ物件としての売却は、入居者が埋まっていなくても可能です。
オーナーチェンジ物件としての売却を希望する売主様は、自分にどのようなメリットやデメリットがあるか、不動産仲介会社に確認してみてください。
オーナーチェンジでのマンション売却については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:マンション売却のオーナーチェンジとは?詳しい手順やコツ、注意点も紹介
投資用マンションの売却時期として、
上記の6つのタイミングがあると解説してきました。
これらのタイミングは、売却を検討する目安になります。
実際に売却を進める際は、所有する投資用マンションの現在の価値を知ることから始めてみましょう。
次は、投資用マンションの査定方法について解説します。
不動産査定では、不動産の性質に合った査定方法が用いられます。
性質が異なる投資用マンションと住宅用マンションでは、査定方法が以下のように異なります。
投資用マンションで用いられる査定方法:収益還元法
住宅用マンションで用いられる査定方法:取引事例比較法
ここからは、どのような違いがあるのか見ていきましょう。
収益還元法とは、「その不動産にどれほどの利益を見込めるのか」という収益性をもとに行う査定方法のことです。
収益還元法における利益は、次のいずれかの方法で算定されます。
直接還元法とは、1年間の純利益を還元利回りで割った金額を資産価値とする方法です。
純利益とは、収益から管理費などの経費を除いた金額のことです。
また、還元利回りとは、その不動産を所有した場合にどれほどの利益が得られるのかを算出した数値をいいます。この数値は、条件が似ている不動産や不動産仲介会社の独自データをもとに算出されます。
〈直接還元法の計算方法〉
1年間の純利益 ÷ 還元利回り
(例)1年間の純利益が100万円、還元利回りが5%と仮定する場合
100万円 ÷ 5% = 2,000万円
上記から、資産価値は2,000万円と算出できます。
DCF法とは、その不動産が将来生み出す価値(利息や利益)を現在の価値に変換し、資産価値を算定する方法です。
例えば、年間150万円の家賃収入を得られる投資用マンションを5年後に1,300万円で売却する場合、このマンションの価値は単純計算(150万円×5年+1,300万円)で2,050万円となります。
しかし実際には、5年の間に家賃設定が変わるなどのリスクがあります。
こうした未来の価値変動のリスクを数値で調整するのがDCF法の特徴です。
未来の価値に対して設定する割引率により不動産の資産価値が変動するため、DCF法の計算はやや複雑となります。
「投資用マンションの査定価格を自分でも算定したい」という方は、不動産仲介会社へ相談のうえ、専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。
取引事例比較法とは、その不動産エリアにおける取引事例(どのような条件の物件がいくらで売れているのか)のうち、査定対象の不動産と似た条件を持つデータをもとに資産価値を算定する方法のことです。
取引事例比較法では、データとして扱うのに相応しくない取引事例(相場を無視した事例、査定を行う不動産と時期的なズレがある事例など)を査定に反映させることはありません。
地域的な要因や個別の要因など成約価格以外の要素を考慮し、対象エリア内での標準的な資産価値を算定します。
ただし、扱うデータにより、算定される資産価値に差が生じるため、査定の依頼先によって査定価格に違いが出てきます。
以上のように、対象の不動産によって査定価格の求め方は異なります。
投資用マンションの査定には専門知識が必要となることも多いです。
適正な資産価値を知りたいのであれば、投資用マンションについて豊富な売却実績を持つ不動産仲介会社への相談をおすすめします。
投資用マンション売却の流れは、一般的なマンション売却の流れとほぼ同じです。
ここからは、投資用マンションを売却する際の手順について解説します。
投資用マンションを売却する際は、「管理組合員の資格喪失届の提出」と「管理費・修繕費の精算」を行う必要があります。
投資用マンションの売却を検討し始めたら、まずはマンションの管理会社へ連絡を入れ、売却を予定している旨を伝えましょう。
いつ頃の売却を想定しているか伝えると、必要な手続きを管理会社からアナウンスしてもらえる可能性があり、各手続きをスムーズに進めやすくなります。
必要書類の提出などに日数がかかることも考慮して、売却を検討し始めたらなるべく早い段階で連絡を入れるようにしましょう。
「投資用マンションの相場調査」と「売却を依頼する不動産仲介会社の選定」のために、不動産仲介会社へ査定を依頼します。
査定依頼を行う段階では、不動産仲介会社の手腕や信頼性を把握することが難しいため、まずは複数の不動産仲介会社へ査定を依頼してみましょう。
査定時は売却理由や希望を聞かれるので、投資用マンションの売却にあたり、どのような条件を希望するかを明確にしておくといいでしょう。
〈売主様から不動産仲介会社へ伝える希望条件の例〉
複数の不動産仲介会社に依頼することで、適正な相場を把握できますし、相性のいい不動産仲介会社を選定しやすくなるでしょう。
投資用マンションの売却を依頼する不動産仲介会社が決まったら、媒介契約を締結し、売却活動に入ります。
投資用マンションの売却活動は、一般的なマンションの売却活動と同様の流れで進めます。
ただし、入居者がいる投資用マンションを売却する場合は、基本的に室内の修繕やリフォーム、内覧対応といったステップはありません。
オーナーチェンジ物件として売却を進める場合には、内覧を行わないことから、物件の詳細な情報(修繕歴や付帯設備など)が分かる書類を用意します。
売却活動中に必要な書類や資料については、不動産仲介会社のサポートを受けながら適宜用意していきます。
買主様が見つかり、売買契約の条件を双方が合意したら、売買契約を締結します。売買契約締結後は、不動産売買契約書に記載の条件に従い、投資用マンションを引き渡して売却は完了です。
投資用マンションを売却して得た利益には税金がかかるため、売却の翌年に確定申告を行いましょう。
次は、投資用マンションの売却にかかる税金について見ていきます。
投資用マンションを売却する際にかかる税金は、一般的なマンション売却時にかかる税金と大きく変わりません。
ただし、税金に適用される特別控除には違いがありますので、売却時にかかる税金と合わせて確認しておきましょう。
投資用マンションを売却して得た譲渡所得に課税される税金です。
譲渡所得とは、投資用マンションを売却した金額(成約価格)から、取得費(購入にかかった費用)や譲渡費用(売却にかかった仲介手数料などの諸費用)、特別控除額を差し引いた金額のことです。
譲渡所得金額 = 成約価格 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額
譲渡所得税の金額は、譲渡所得に譲渡所得税の税率をかけて算定されます。
譲渡所得税額 = 譲渡所得金額 × 譲渡所得税(短期譲渡39.63%または長期譲渡20.315%)
不動産売買契約書の作成にかかる税金です。
不動産売買契約書に記載の成約価格に応じ、規定の額面の収入印紙を貼付・消印することで納税します。
投資用マンションの売却でかかる印紙税額は、以下のとおりです。
〈不動産売買契約書に貼付する印紙税額〉
契約金額 | 税額 (1通または1冊につき) |
軽減税率適用後の税額 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
※平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成される不動産売買契約書には印紙税の軽減税率が適用されます
参照元:
No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁
登録免許税とは、登記申請にかかる税金のことです。
売却した投資用マンションに抵当権が設定されていた場合(住宅ローンが残っていた場合)、住宅ローン完済後に抵当権抹消登記を行う必要があり、不動産1件の申請につき1,000円の登録免許税が発生します(なお、土地・建物はそれぞれ1件として扱われます)。
投資用マンションを売却する際に活用できる税金の特例は、以下の2種類です。
前述のように、所有期間が5年を超える不動産を売却すると、譲渡所得税に軽減税率が適用されます。
所有期間が5年を超える投資用のマンション売却後にかかる譲渡所得税率は、所有期間が5年に満たない物件を売った場合と比べて、19.315%もの差があります。
投資用マンションを売却した年の前年、または翌年に、ほかの投資用不動産を購入する際に活用できる特例です。一定の条件を満たして本特例の適用を受けられる場合、投資用マンションを売って得た譲渡所得金額の一部を将来に繰り越すことが可能です。これにより、売却後にかかる譲渡所得税額を抑えられます。
投資用のマンションは、事業用資産の扱いを受けるため、一般的な住宅用のマンションとは受けられる特例が異なります。
投資用マンションの売却後にかかる税金をできるかぎり抑えたい方は、不動産売却のプロへ相談することをおすすめします。
投資用マンションの売却理由はさまざまです。
売主様個々の都合や目的により、売りどきは変わります。
投資用マンションは一般的な住宅用マンションとは異なる方法で資産価値が算定されるため、きちんと相場を把握したうえで売却計画を立てることが重要です。
投資用マンションを売却する流れや、それにともなう税金は、一般的なマンションと大差はありません。しかし、適用を受けられる特例に違いがあり、税金の算定方法などが異なります。
投資用マンションを適切な価格で売却するには、売りどきや現在の資産価値を見極めることが大切です。長年の実績と専門知識を有するプロへの相談も検討してみましょう。
投資用マンションの売却を迷っている方は、「すまいValue」へ査定を依頼し、所有する投資用マンションが現在どれくらいの価値を持っているのかを理解するところから始めてみてはいかがでしょうか。
マンション売却の具体的流れから注意点、失敗談、費用と税金対策など基本を解説
宮本弘幸
宅地建物取引士
1960年石川県加賀市生まれ。大学卒業後、大手ハウスメーカーの営業として20年勤務した後、地元、金沢小松、加賀で不動産・住宅の営業に携わる。2016年より、石川県小松市にて、株式会社みやもと不動産を開業。お客さまのニーズをよく共有し、最適な提案を行う営業スタイルで、お客さまに愛される不動産業を心がけている。宅地建物取引士のほか、ファイナンシャルプランナー(AFP)、相続診断士などの資格を保有。
最後までお読みいただき、
ありがとうございます。
ご回答ありがとうございました。