マンションを賢く売るためには、まず売却の基本的な流れを押さえることが大切です。各種手続きの流れや手順をしっかり押さえて、後悔のないマンション売却を実現しましょう。
マンションを売却するにあたって、最初にやるべきことは相場の確認です。売却予定のマンションがいくらで売れるのか、おおよその相場を把握しておけば、以降の手続きもスムーズに進められるようになります。
相場を確認する方法はいくつかありますが、インターネットによる情報収集が最も簡単かつスピーディーです。不動産ポータルサイトなどにアクセスして、お住いのマンションや、それと似たような条件の物件を検索すれば、価格のイメージを掴みやすくなるでしょう。
検索するときは、以下のような項目で絞り込むのがおすすめです。
物件の広さ・面積が大きく異なるときは「平米単価」や「坪単価」をチェックしましょう。これは物件価格を広さ・面積で割って算出されるもので、1平米あたり・1坪あたりの価格です。
今後の展開を見越して、この段階から不動産仲介会社に相談するのも一考です。
相場の確認が済んだら、次は不動産仲介会社にマンションの査定を依頼しましょう。マンションの査定方法は大きく分けると「簡易査定(机上査定)」および「訪問査定(現地査定)」の2種類があります。
簡易査定(机上査定)とは、物件情報・公示価格・周辺取引事例・市場動向といったデータを踏まえつつ、不動産仲介会社のオフィス内で価格を算出する方法です。机上で済ませる分、スピーディーに査定できるので、おおよその価格を気軽に調べられます。
一方、訪問査定(現地査定)とは、文字通りマンションがある現地に不動産仲介会社のスタッフが訪問して、実際に物件をチェックしたうえで価格を算出する方法です。建物の状態はもちろん、立地条件や周辺エリアの環境も含めて細かく調査するので、より精度の高い査定を受けることができます。会社によっては、契約書類や分譲時パンフレット、権利証等の提示をお願いされることもあります。
査定結果に納得できたら、次はマンション売却に関わる不動産仲介会社と媒介契約を結びましょう。媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があり、それぞれ以下のような特徴を持っています。
依頼できる不動産仲介会社の数 | 売主様(自分)が見つけてきた買主様との直接契約 | 法律で定められている契約期間 | 売却活動に関する報告義務 | 指定流通機構(レインズ)への登録義務 | |
---|---|---|---|---|---|
一般媒介契約 | 複数可(明示型なら他社へ依頼したときの通知義務が発生) | 可 | 法律上の定めなし(3ヶ月が目安) | なし(任意で報告依頼を出すことは可) | なし(任意で登録することは可) |
専任媒介契約 | 1社 | 可 | 3ヶ月以内 | 2週間に1回以上 | 媒介契約締結から7日以内 |
専属専任媒介契約 | 1社 | 不可 | 3ヶ月以内 | 1週間に1回以上 | 媒介契約締結から5日以内 |
一般媒介契約は2社以上の不動産仲介会社に依頼できる、自分や親戚をつうじて見つけた買主様と直接契約ができる(自己発見取引)など、ほかと比べて自由度の高い契約形態です。「明示型」と「非明示型」の2種類がありますが、前者の契約を結んでいる場合、他社へ依頼するときは通知しなければなりません。
専任媒介契約については、依頼できる不動産仲介会社の数は1社のみとなります。また、契約期間が3ヶ月以内であること、売却活動の報告義務および指定流通機構への登録義務が発生することも特徴的です。
専属専任媒介契約は前述した専属媒介契約と似ていますが、自分で見つけてきた買主様との直接契約はできず、依頼した不動産仲介会社を通して取引することが義務付けられています。また、報告義務(1週間に1回以上)や登録義務(媒介契約から5日以内)の条件も少し異なっています。
媒介契約を締結したら、いよいよ不動産仲介会社のマンションの売却活動がスタートします。「指定流通機構(レインズ)」や自社ホームページ、不動産ポータルサイト、各種広告媒体に物件情報が掲載されます。その後、ご見学希望等のお客様からのお問合せがあり、実際にご見学となります。
基本的に不動産仲介会社が手厚くサポートしてくれますので心配はありません。
また、売却活動中は、不動産仲介会社から売却活動に関する報告があります。お問合せ状況や、周辺競合物件の売り出し情報等、マンションを適正な価格で売るための提案やアドバイスが行なわれるケースもあるので、きちんとチェックしておきましょう。
購入希望者と条件の合意が出来たら、売買契約書・重要事項説明書等を不動産会社が作成します。契約日に買主様に対して不動産会社が重要事項説明、売買契約書の読み合わせを行い、契約締結を行います。売主様側は身分証明書・実印・印鑑証明書などが必要なので、あらかじめ用意しておくとスムーズです。書面での手続きが終わったら、手付金を受領します。
こちらで売買契約手続きは、完了です。
売買契約を締結しても、まだ終わりではありません。決済・物件引き渡し日当日には、以下の手続きを行います。
通常、決済と物件引き渡しは同日に行ないます。上記の手続きがすべて問題なく終わったら、マンション売却は完了です。ただし、物件引き渡し後にトラブルが起こる可能性もあるので、手続きに関する書類などをきちんと管理しておきましょう。
マンションを売る場合、手続きの過程でさまざまな費用がかかってきます。さらに、売却完了後に売却益が出た場合には、税金がかかってくるため、売却価格がそのまま手元に入ってくるわけではないのです。
以下で紹介する費用・税金も踏まえながら、売却するかどうかを検討しましょう。
不動産仲介会社に売却を依頼して成約に至った場合、規定の仲介手数料を支払う必要があります。査定や売却活動に関するサービスの代金は、すべて仲介手数料に含まれていますが、成功報酬なので販売活動中に請求されることはありません。
仲介手数料の金額については、あらかじめ法律上で上限が定められており、依頼期間の長さで上下することはありません。ただし、取引価格によって計算式が変わるので、以下もあわせてご確認ください。
取引価格 | 計算式 |
400万円超 | 取引価格(税抜)×3%+6万円+消費税 |
200~400万円以下 | 取引価格(税抜)×4%+2万円+消費税 |
200万円以下 | 取引価格(税抜)×5%+消費税 |
※空家等の売買又は交換の媒介における特例にあたる不動産の売却の場合、売買代金が金400万円以下の場合に、仲介手数料の上限が金18万円となる可能性があります。
仲介手数料が想定外の出費とならないよう事前にふまえておきましょう。
マンションの売買契約を締結するとき、売買契約書に収入印紙を貼り付ける形で印紙税を納めます。印紙税の金額も成約価格によって変わりますが、2022年3月31日まで軽減措置が実施されるため、あらかじめ注意が必要です。以下の表もあわせてご覧ください。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
なお、売買契約書は売主様と買主様で1通ずつ計2通作成しますが、お互い1通分を負担するのが一般的です。
住所変更登記・抵当権抹消登記・所有権移転登記など、不動産登記の手続きを行なう場合、登録免許税がかかってきます。税額や税率はそれぞれ異なるので、不動産会社が教えてくれます。
基本的に不動産登記の手続きは司法書士が行なうので、その仕事に対する報酬もかかってきます。金額は司法書士によって変動しますが、2~3万円が相場です。
マンションを売却した場合、その売却益に対して譲渡所得税や住民税、復興特別所得税がかかってきます。これらの税金には各種特例が設けられているため、確定申告で節税したいなら要チェックです。
住宅ローンの残債が残っていて、それを一括返済する場合、ローン繰上返済手数料もかかってきます。金額は金融機関によって異なるため、それぞれ確認が必要です。
マンションの売買契約を締結したら、物件引き渡しの前日までに引越しを終える必要があるので、引越し業者への依頼費用などもかかってきます。
マンションを売却する場合、当然ながらできるだけ高く売りたいものです。そこで、賢く売却するためのポイントも紹介します。
一般的にマンションの売出価格と成約価格(実際に売れた価格)には差が出るため、売出価格でそのまま売れるとはかぎりません。中古マンションの売出価格と成約価格における差額の比率は「乖離率」といいますが、これは-6~10%程度となっています。
東京カンテイの調査によると、2020年下期の首都圏マンション価格乖離率は-6.05%であり、前期より1%以上減りました。この結果を踏まえつつ、売出価格を決める必要があります。
不動産仲介会社がやけに高い査定額を提示した場合、売主様の関心を引いて専任媒介契約・専属専任媒介契約を取ろうとしている可能性もあります。
市場価格からかけ離れた価格を提示して販売活動を行っても、売れ残る可能性が高くなります。結果として売主様が損をするケースもあり得るため、査定額の合理的根拠を聞き出して、おかしな回答や矛盾がないか確かめましょう。
中古マンションと新築マンションの価格は連動しており、景気や日経平均株価とも強い相関関係があります。一番好景気の良いタイミングで売り出すのがベストですが、これは不動産のプロでもわかりません。ただし、一般論として現在(2021年9月)は高値圏にあるといえます。
また、季節的な観点から考えると、新年度に合わせてマンションの入居者は増えるため、1~3月も売却の狙い目です。
不動産はすぐ売れるものではないため、売却活動をスタートしてから一定の期間が必要です。一般的に査定額は、3か月で売れるであろう額を不動産仲介会社が算出しているものなので、売却期間は3ヶ月を目安としましょう。
あらかじめ期間を設定しておけば、売れないからと焦って値下げすることもなく、逆にのんびりしすぎて機会を逸することも起こりにくくなるため、計画的に売却活動を進めることができます。
不動産会社と一口にいっても、さまざまな会社があります。不動産仲介を専門としていて、なおかつマンションに強い会社を選ぶことが大切です。
マンションは不動産の中では比較的売りやすいので、取り扱っている物件数やネットワークの広さが成否に影響してきます。それを踏まえれば、大手不動産会社に任せるのは合理的かつ効率的といえるでしょう。
所有しているマンションを適正な価格で売るためには、売却の流れや必要な費用を一通り押さえること、相場やタイミングを見極めて売却することが重要となります。一括査定サイトを利用すれば、簡単かつスムーズに売却を進められるため、特にはじめて売却されるという方にはおすすめです。
「すまいValue」の一括査定なら、インターネットから無料で査定依頼を出すことができます。しかも、信頼と実績がある大手不動産会社6社への査定依頼が可能なので、ぜひご検討ください。
髙野 友樹
公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。
最後までお読みいただき、
ありがとうございます。
ご回答ありがとうございました。