不動産価格の相場を自分で調べる方法はいくつかあります。主なものに、以下の4つがあります。それぞれ、どのような価格を調べることができるのか、解説します。
運営 | 得られる情報 | |
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レインズマーケットインフォメーション | 不動産流通機構 | データベースにある過去の成約事例 |
土地総合情報システム | 国土交通省 | アンケート結果に基づく実際に取引された不動産価格 |
住宅情報サイト | 民間会社 | データベースに基づく不動産相場と売出中の類似物件の価格 |
不動産一括査定サイト | 民間会社 | 登録している不動産仲介会社による査定価格 |
レインズマーケットインフォメーション(REINS Market Information)とは、国土交通大臣指定で不動産会社などによって構成される団体「不動産流通機構」が運営する不動産流通標準情報システムのことで、ネット上で不動産の成約情報を調べることができます。
建物の種別(戸建て・マンション)、地域、沿線・最寄り駅からの距離、専有面積、築年数など条件を指定して、取引情報を検索します。売却しようとしている不動産と似た物件が一覧で表示されますので、相場を把握できます。
土地総合情報システムは国土交通省が運営するシステムです。「不動産取引価格情報検索」というコーナーで実際に取引された不動産価格を、「地価公示・都道府県地価調査」というコーナーで全国の公示価格(標準値の価格)と都道府県地価調査価格(基準値の価格)を検索できます。
ここで調べることができる不動産取引情報は、登記が行われた1~2ヶ月後に国土交通省から送付されるアンケート調査に基づくデータです。このため、全員が回答していない可能性が大きく、実態を正確に反映しているとはいいがたいため、ほかの手段で調べた結果も参考にしたほうが無難です。
住宅情報サイト(不動産ポータルサイト)では、過去に取引された不動産情報が掲載されています。売却予定の物件と条件が類似したものを検索すれば、相場をつかむことができるでしょう。
物件情報を掲載しているサイトでは、現在、売りに出されている物件の価格を検索できます。その時点での不動産市況をふまえた価格が一覧になっています。ただ、不動産は個別性が強いため、強気の価格設定がされているのか、早く売りたいために値下げしているのかなど売主様の個別事情をくみ取ることが難しいかもしれません。
分かるのはあくまでもおおまかな相場であるとの認識が必要です。
不動産一括査定サイトは、物件情報と個人情報を入力すると、登録している不動産仲介会社が無料で査定価格を提示してくれるというものです。入力作業は最短60秒で完了し、あとは不動産仲介会社から電話やメールでの報告を待つだけなので、最も手軽に相場確認できる方法です。詳しい解説は後述します。
売却を検討している物件の相場確認が最も手軽な不動産一括査定サイトとは、どんな仕組みのサービスなのでしょうか。以下にて、解説します。
不動産一括査定サービスとは、売却を考えている物件について、売主様がWebサイトをつうじて価格査定を依頼すると、不動産仲介会社から電話やメールで査定価格が届くという仕組みです。
売主様は査定価格、売却サービス、売却実績などを比較し、どの不動産仲介会社と媒介契約を結ぶかを判断します。
サイトに登録している不動産仲介会社は、さまざまあり、不動産の種類やエリアなど得意分野も異なります。
不動産一括査定サイトは、無料で利用できます。
売主様が費用を支払うのは、マッチングした不動産仲介会社と媒介契約を結んで売却活動を行い、買主様が見つかって売買契約を交わしたタイミングです。このときに不動産仲介会社に仲介手数料を支払う必要がありますが、それまでは一切、費用の支払いはありません。
不動産一括査定サイトをつうじてマッチングした不動産仲介会社はどのように査定価格を決めるのでしょうか。査定の方法には、「机上査定」と「訪問査定」があります。
机上査定とは、実際に物件を訪問して調べるのではなく、立地や築年数、専有面積などの情報と過去の売却取引事例や周辺の類似物件の取引事例を元に簡易的に査定する方法です。査定結果は数日から1週間程度でもらうことができます。類似物件に関する取引データも参照するので、簡易とはいえど査定金額にはある程度の信憑性があります。
より正確に把握したい場合は、情報だけでなく実際に物件を訪問して、物件の個別事情をふまえたうえで査定価格を出す「訪問査定」を依頼します。不動産仲介会社と日程を調整する必要があるため、簡易査定よりも時間がかかることが多いでしょう。
売却物件の相場を手軽に確認する手段として不動産一括査定サイトは便利なツールですが、利用上の注意点もあります。主なものを4つ紹介します。
査定価格はあくまでおよその相場であり、実際の売却価格は異なることが多いことをまず知っておきましょう。
売出価格は査定価格を基本に、不動産市況や需給バランス、売主様の事情などを加味して決めます。そこからさらに買主様との価格交渉を経て、成約価格が決まります。最初に提示された査定額は最終的な売却価格と異なることが多いのはこのためです。
複数の不動産仲介会社から返ってきた査定価格を比較してみると、不動産仲介会社によってばらつきがあることがあります。不動産仲介会社によって査定方法や重視するポイントが異なるためです。
前述のように、不動産仲介会社によって査定価格に差がある可能性がありますが、複数社の査定結果を比較することで、相場を正しくつかむことができます。
サイトによって依頼できる不動産仲介会社の数は異なりますが、少なくとも3、4社程度は依頼できるサイトがほとんどなので、可能な範囲で多くの会社に依頼することをおすすめします。そのほうが比較もしやすいでしょう。
依頼した不動産仲介会社から机上査定の結果を知らせる連絡とともに、「弊社で売却しませんか?」というような営業電話がかかってくることがあります。一度に複数社に依頼しているため、そうした電話が一時期に集中することも珍しくありません。
電話連絡が煩わしいと感じる方は、査定依頼の際に連絡の方法を「メールだけ」と伝えておくこともできます。
机上査定で査定価格を提示された後、より正確な査定価格を知りたくなった場合、訪問査定を依頼するといいでしょう。
訪問査定では、不動産仲介会社の担当者が物件の周辺環境や修繕の有無、日当たりや通気性のよさ、マンションの場合はマンション全体の修繕歴や管理状況などを調べます。訪問査定ではこうした要因を加味して行われますが、価格査定はどのような方法で行われるのでしょうか。大きく分けて原価法、取引事例比較法、収益還元法の3つの手法があります。
原価法とは、査定依頼された物件を新たに建築すると仮定して建築費用(再調達原価)を算出したあとに、築年数などによる価値を減価修正して価格を求める方法です。原価法は主に戸建ての査定に用いられます。
再調達原価が2,000万円、減価額が500万円とすると、査定価格は2,000万円-500万円=1,500万円となります。
取引事例比較法とは、多数の不動産取引事例の中から査定を依頼された物件に類似したケースを比較して試算する方法です。訪問査定で調べた不動産特有の個別的要因を除去して修正し、売主様の事情や売却当時の需給バランスなども考慮して算出されます。マンションをはじめ多くの住宅で採用されている査定方法です。考慮に入れて修正する主な要件は以下の4つです。
転勤や離婚など、何らかの要因で急いで売却を済ませたい場合や任意売却の場合は、売却価格は相場よりも低くなることがあります。
類似物件が売却された時期の不動産相場は、現在と大きくかけ離れていることがあります。その時々の需給バランスなどが考慮されます。
駅からの距離が同じくらいの類似物件でも、騒音や治安などは地域によって格差があります。また、ゴミ処理施設や墓地などが近くにあるかどうかでも査定条件は変わってきます。
査定対象となる物件のリフォームの有無、敷地の形状、日当たり、マンションの場合は管理状況などの個別要因を考慮します。
収益還元法とは、査定依頼された物件を賃貸に出したときに将来生み出されると予測される利益から計算する方法です。このため、収益還元法は投資用賃貸物件の査定の際に用いられることが多いです。
収益還元法はさらに、「直接還元法」と「DCF法」に分けられます。それぞれの特徴を簡単に解説します。
直接還元法は、1年間で得られる純利益を還元利回りで割ることで物件価格を求める方法です。年間家賃収入が300万円、経費が60万円、還元利回りが6%だと、物件価格は(300万円-60万円)÷6%=4,000万円となります。
DCF法(ディスカウンテッドキャッシュフロー)は、物件を保有している間に得られる収益と売却時の価格を、現在の価値に換算して合計し、価格を求める方法です。同じ100万円であっても1年後と現在では100万円の価値が異なるため、補正が必要という考え方になります。
不動産一括サイトを利用して価格相場を調べるとき、ほかにも分かることがあります。主な3つを解説します。
不動産の売却価格は需給バランスによって高くなったり低くなったりします。不動産一括査定サイトで査定を依頼すると、不動産仲介会社は過去の成約価格に直近の需給バランスを加味した価格を算出します。このため、過去の成約価格が分かれば需給バランスが読み解けます。査定価格を提示した不動産仲介会社に直接問い合わせてもいいでしょう。そこから、早く売るべきか、無理に急がないほうが良いのかが分かります。
不動産仲介会社をつうじて物件を売却する場合、不動産仲介会社に支払う仲介手数料、各種税金などの諸費用がかかり、現金で用意しなければなりません。諸費用の総額は一般に売却価格の5%前後とされます。
不動産一括査定サイトによっておよその売却価格が分かれば、諸費用として用意するべき現金のおよその額が判明します。
不動産一括査定サイトを利用しておよその売却価格が分かることで、住宅ローン残債を売却代金で完済できるかが分かります。売却代金が住宅ローン残債を上回ると住み替えもスムーズです。一方、売却代金が住宅ローンの残債を下回った場合は、貯蓄から補填して完済したり、次のローンと一体化(住み替えローン)したりすることで対応できます。
以上、不動産一括査定サービスを利用して売却する家を無料で相場確認する方法を解説しました。売却活動を始めるに当たっては「いくらで売れるのか」が分からなくて不安を抱えている方も多いでしょう。しかし、不動産一括査定サービスを利用してあらかじめ売却価格のおよその額を知っておけば、不安も軽減されるのではないでしょうか。「すまいValue」なら、大手6社へまとめて査定依頼ができます。売却を検討している方は、ぜひ「すまいValue」の一括査定を利用してみてはいかがでしょうか。
髙野 友樹
公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。
最後までお読みいただき、
ありがとうございます。
ご回答ありがとうございました。