不動産を売却する際には一般的には査定が必要です。査定とは、不動産仲介会社の営業担当や不動産鑑定士などの専門家が対象となる不動産の売出価格(想定成約価格)、つまり「その不動産はいくらで売れるか」を算定することです。
不動産査定は売出の価格を決めるための大切なステップです。
不動産を査定する方法は「簡易査定」と「訪問査定」の2種類があります。
簡易査定(机上査定)は、エリアや築年数、土地の広さ、建物の大きさなどのデータに基づいて机上で査定する方法です。実際の不動産を見ないため、精度は訪問査定と比べてやや劣りますが「相場が知りたい」といったニーズには充分応えられます。
さらに正確な査定のために、訪問査定(実査定)を行います。訪問査定は、不動産仲介会社の社員が実際に物件を訪れ、設備などの経年変化やリフォームの状況、周囲の環境などさまざまなことを確認して査定する方法です。
日程の調整や準備など手間と時間はかかりますが、プロの目で客観的に家を見て、価格を算定してくれるというメリットがあります。
また訪問査定は不動産仲介会社の対応を確認する機会としても活用できます。
店頭やネットで購入する物品は、同じものであれば値段は変わらないという原則があります。これを「一物一価の法則」といいます。
しかし、不動産には「一物一価の法則」は当てはまりません。それは、世の中に同じものが存在しないからです。
同じ築年数で同じ間取りの家があったとしても、立地条件が違えば、同じ価格にはなりません。不動産の価格は1つひとつ丁寧に設定する必要があります。
不動産の査定方法は1つではありません。戸建て住宅、マンション、土地それぞれに適した査定方法があります。
戸建て住宅の建物部分は基本的に「原価法」で算出します。原価法は、もし現在、査定する不動産と同じものを建てたらいくらかかるか、という「再調達原価」から、経年変化などで下がった価値を差し引いて(減価修正)、評価する方法です。
「木造の戸建ては20年で価値がゼロになる」と聞いたことがある方もいるでしょう。以前は一律に耐用年数で減価修正を行っており、木造住宅は20~25年で市場価値はほぼゼロとするのが通例でした。
現在は、都心部のように中古戸建ての人気があるエリアでは築25年以降でも値段が付く場合があります。また、2014年以降はリフォームによる機能回復も評価に加えられ、より適正な評価ができるようになっています。
居住用のマンションは基本的に「取引事例法」で査定します。取引事例比較法は、その名のとおり、類似物件の取引事例と比較して査定額を決める方法です。
売却予定の不動産に近い条件の物件がいくらで売買されたか、実際の取引事例を参考にしながら、市場動向・物件の築年数などに応じ、調整して判断します。リアルな相場が反映されるのが特徴です。
参考にする取引事例をどのように選ぶかは不動産仲介会社しだいです。したがって、同じ取引事例比較法でも、不動産仲介会社によって査定金額が大きく変わることがあります。
査定方法はマンションと同様に、取引事例法がメインです。
不動産査定は、不動産仲介会社からの視点では「物件調査」と呼ばれています。物件調査では、その価値を見るだけでなく、いざ売買となった際にトラブルが発生しないよう、プロの視点で家屋や土地の状況を細かくチェックします。建物状況では、築年数、日照・眺望、リフォームの有無などを確認します。
今回は物件調査を「建物状況」と「それ以外」に分けて、どんなことを確認するのかをお伝えします。
一般的に、築年数が古いほど査定額は低くなります。見た目がキレイで、目立った汚れや傷がなくても、内部構造は劣化が進んでしまうため、査定額が下がります。
住宅は種類によって、法定耐用年数が定められています。
法定耐用年数
築20年を超えた家の査定価格がゼロになることも珍しくありません。築25~30年を過ぎた木造戸建て住宅は「古家(ふるや)」として扱われ「古家付きの土地」として土地だけの価格で取引されることもあります。
日当たりや眺望の良さは住まいの快適さに直結するため、査定額に影響します。
戸建て住宅や低層マンションは、西日が入る西向きの物件や、日照に恵まれない北向き物件は評価が下がります。また近くに日差しをさえぎる高い建物がある場合も同様です。また「高い建物に囲まれて周囲がよく見えない状態」も査定額が下がります。
評価が上がる場合は、日当たりのよい南向き(角地なら南東向き)の物件です。角地の場合は、南東の角であれば評価が高くなります。
評価の高い物件は、少し高台にあって見晴らしがよく、風が通るような家です。
高層マンションの場合は、日照や通風より、眺望が優先されるケースが多いです。
リフォームも重要です。築年数が古くても、バリアフリー対応、耐震工事済み、省エネ化など、リフォームしたことによって安全性や利便性、見た目などが改善されている場合、建物の評価は上がります。
特にリフォームによって新耐震基準を満たしている場合とキッチンの見た目や設備をリフォームしている場合、査定額が高くなる傾向があります。
物件調査では建物状況のほかに、どんなところをチェックされるのでしょうか。
境界があいまいだと売却が難しいため、売主様には土地の境界の明示義務があります。土地の境界を確定させた「確定測量図」や、隣接地の所有者と境界について合意をした「筆界確認書」があれば、不動産仲介会社に写しを提示しましょう。
しかし古い住宅では、隣家との境界があいまいになっている事例もあります。確定されていない境界がある場合は、どこが確定しており、どこが未確定なのかを不動産仲介会社に伝えます。
境界がハッキリすると、隣接地にはみ出している「越境」も明確になります。屋根、ブロック塀、植木の枝、エアコン室外機などの越境がある場合、多少の越境であれば査定価格に影響はありませんが、自家の木の枝がはみ出している場合は処理しておきましょう。もし隣家などと交わした「越境の覚書」がある場合は、不動産仲介会社に写しを提示します。
周辺の環境もチェックの対象です。騒音・振動・異臭があれば査定のマイナスポイントになります。
売却の際、不動産仲介会社は登記簿謄本に記載されている所有者と売主様の確認を行います。所有者と売主様が同一人物であれば特に問題はありません。相続直後などの事情で売主様と登記簿謄本に記載の所有者が異なる場合は、所有権移転登記をしておきましょう。
その土地を利用するにあたってどんな制限があるのか、建築基準法や都市計画法に関連した法令についての調査をします。
生活するうえで欠かせない上水道、電気、ガス、下水施設など、ライフラインの供給設備が問題なく使えるかどうかを調べます。
周辺物件の市場価格や、過去に近隣で売買された類似物件の価格を調査して、査定価格の参考にします。
最後に、不動産仲介会社に査定を依頼する際、注意するポイントについて解説します。
土地や建物の欠陥や不具合を瑕疵(かし)といいます。この瑕疵を隠して取引してはいけません。取引終了後でも何らかの瑕疵が見つかった場合、売主様は「契約不適合責任」を追うことになります。
建物をリフォームしている場合は、建物の価値が上がる可能性があります。こちらもきちんとアピールしておきましょう。
査定は不動産仲介会社が行いますが、不動産の所有者および売出価格の決定権者は売主様です。売却に対する希望はしっかりと伝えましょう。特に「いくら以上で売りたいか」「いつまでに売りたいか」は共有しておきましょう。
すべてが希望どおりになるとは、かぎりませんが、意思を伝えなければ考慮してもらえません。
大きな買い物をするとき、複数のお店で価格を比較するように、不動産の査定も最初から一社のみに絞らず、複数の不動産仲介会社に依頼しましょう。複数の会社に依頼することで、不動産仲介会社の力量や対応を比較できます。
一般的に不動産の売却に必要となるのが査定です。少しでも有利な条件で売り出すために、複数の不動産仲介会社に簡易査定を依頼しましょう。複数社に同時に依頼できる不動産一括査定サイトの利用をおすすめします。
中でもおすすめは、業界大手6社の不動産仲介会社が運営している「すまいValue」です。
大手不動産会社が売主様の大切な物件をしっかり査定します。
公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。
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