まず、ここで解説するマンションの買取とは何か、について知っておきましょう。
マンションだけでなく売主様が所有する不動産を売却するには、買取と仲介というふたつの売却方法があります。
ごくシンプルに説明すると、買取は物件を不動産会社が直接買い取る方法で、仲介は不動産会社は買い取らず、買いたいという買主様を探して、売主様と買主様の間の売買を仲介する、というものです。
どちらも一長一短ありますが、現在多く行われているのは仲介の方です。しかし仲介では購入希望の人を探す手間や時間、仲介手数料などがかかります。買取ではそれらの手間や時間、仲介手数料はかからず、直接買取業者とやりとりするのみで、マンションを売却することが可能です。
マンション買取会社は、買い取ったマンションをリフォームして買取価格より高く販売することで利益を得ています。他の不動産会社に販売したり、不動産仲介業務と並行して買取・再販を行う買取会社もあります。
マンションなど不動産の売却の買取と仲介はどう違うのでしょうか。仲介とはどんな取引なのかについて解説します。
仲介は宅地建物取引業法では「媒介」といい、現在、不動産売買において一番多い取引様態です。買取は不動産買取会社が売主様から直接マンションなど不動産を買い取るものですが、一方の仲介は、不動産仲介会社が売主様と買主様の間に入って行う取引です。
仲介の場合、売主様は不動産仲介会社との間で、媒介契約を結びます。不動産仲介会社は売主様の希望を聞いて買主様を探し、取引にまつわるさまざまな調整を行って取引を成立させ、その報酬として仲介手数料を受け取ります。
比較的高い金額で売れやすい仲介ですが、売れるまでに多少時間がかかります。時間がかかっても希望の価格で売却したいという人に向いているでしょう。しかしその反面、売却にはある程度の手間と時間がかかります。
広告や内覧会を実施する場合は、マンションを売りに出していることをご近所さんなど周囲の人に知られやすいというのもデメリットといえるでしょう。
売却したいマンションをマンション買取会社に買い取ってもらうと、どんなメリットがあるのでしょうか。仲介との比較をしながら解説します。
マンション買取会社に買い取ってもらうメリットとして、まず挙げられるのが、比較的早期に現金化できるということです。
マンションを売却するまでの期間ですが、仲介では概ね3ヶ月程度かかってしまいます。その間、「売れるか、売れないか」と気をもんでしまうこともあるでしょう。
しかし、買取の場合は買取会社にそのまま買い取ってもらうだけなので、平均1週間から1ヶ月で売却可能で、手持ちのマンションをスピーディに現金化することができます。
また、現金化できるまでの期間が事前に読めるのも買取のいいところです。仲介の場合は、情報を開示した後買ってくれる人が現れるまで、ただじっと待つ期間があります。それが1週間なのか、それとも数ヶ月先になるのか、また場合によっては買主様との交渉も必要で、ほとんど先が読めません。
しかし買取では、買い取ると決まった瞬間からスケジュールが完全に把握できます。さまざまな事情で売却を急いでいる場合や、売却や資金計画を計画的に進めたい人には、仲介よりも買取がおすすめできます。
マンションを仲介で売却しようとする際には、下記のようなさまざまな手間がかかります。
中でも気になるのが内見の準備と対応です。すでに空き家なら不動産仲介会社におまかせしてしまえばいいのですが、まだそこに暮らしている場合は、内見の受け入れが大変な作業になります。1日に数組以上が内見に訪れることもありますし、数日にわたって実施することもあります。生活している場合は、事前の掃除や片付けなどを念入りにしておかなければなりません。
しかも、仲介では希望通りの日程や価格で売れるかどうかは誰にも分かりません。予定通り物事が進まないことで、余分な出費や手間がかかってしまうことも考えられます。
もし買取会社に依頼して買い取ってもらうならば、そういった手間はほとんどかかりません。不動産買取会社が物件を確認して買い取ってもらうだけの取引なので、売買にかかる負担を最小限にできるのが特徴です。
契約不適合責任とは、令和2年4月の民法改正以前は「瑕疵(かし)担保責任」とされていたもので、売主様が契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合の責任をいいます。
物件を受け渡した後一定期間に設備などの不具合(瑕疵)が発覚した場合、売主様が責任を取らなければいけないとされています。民法では、契約不適合責任は買主様がその不具合などを知ってから1年以内に売主様に対して通知するとされています。しかし「知ってから1年」とすると、購入後何年、何十年たっても売主様は安心できません。そこで「引渡しから3ヶ月」などと売買契約書の特約で定めておくのが通常です。
買取の場合は、買主が不動産のプロ(宅建業者)であるため、売主様(素人)の契約不適合責任は「免責」するのが一般的です。仲介の場合、引渡し後も一定期間の間は責任を追及される可能性があるのに対し、買取の場合はそうした心配をする必要がないのです。
離婚による自宅マンション売却など、さまざまな事情があって、近隣の住人にはできるだけマンションを売ることを知られたくないという方は案外多いものです。
しかし不動産仲介会社を通したマンションの売却では、購入希望者を募るために不動産仲介会社が近隣にチラシを配ったり、不動産ポータルサイトに掲載したりと、さまざまな募集活動をしてくれる上に、多くの内覧客が訪れてくるなどして、いつの間にか周囲の方に感づかれてしまいがちです。
しかし、マンションの買取を依頼する場合は、売却にあたって不特定多数の方と交渉したり、募集活動をする必要は一切ありません。売主様がやりとりする相手は、不動産買取会社の担当者だけ。交渉相手、交渉期間も少ないから、ご近所の目を気にせずに、短期間のうちに省ストレスで取引を完了させることができます。
仲介で不動産を売却する場合、大きな負担となるのが仲介手数料です。
仲介手数料は宅建業法で上限が決められています。仲介手数料を求める計算式は売買価格の区分によって異なります。
仲介手数料の計算式
売買価格 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 売却価格 × 5%+消費税 |
200万円を超えて400万円以下 | 売却価格 × 4%+2万円+消費税 |
400万円を超える金額 | 売却価格 × 3%+6万円+消費税 |
例えば
3,000万円の物件を売却する場合
3,000万円×3%+6%=96万円+消費税9万6000円=105万6,000円の仲介手数料がかかります。
売却価格ごとの仲介手数料は次のとおりです。
売却価格 | 仲介手数料(税抜) | 消費税 | 仲介手数料(税込) |
---|---|---|---|
1,000万円の場合 | 36万円 | 3万6,000円 | 39万6,000円 |
3,000万円の場合 | 96万円 | 9万6,000円 | 105万6,000円 |
5,000万円の場合 | 156万円 | 15万6,000円 | 171万6,000円 |
1億円の場合 | 306万円 | 30万6,000円 | 336万6,000円 |
買取の場合はこの仲介手数料がかかりません。
また意外と大きな負担となるのがハウスクリーニング費用です。内見に来てもらう前にプロの手でマンションをキレイにしておくことで印象がよくなり、それだけ売却価格がアップすることを期待してハウスクリーニングを依頼することがあるのですが、その費用は掃除をする箇所や面積によって3万円から10万円程度もかかってしまいます。
マンション買取のさまざまなメリットを見てきました。逆に、マンション買取会社に買い取ってもらう場合にはどんなデメリットがあるのでしょうか。マンション買取のデメリットについて解説します。
マンション買取の最大のデメリットは、売却価格が安くなってしまうことです。買取の場合の売却価格は、市場価格の60~80%程度になります。
なぜそんなに下がってしまうのかというと、買取会社は購入したマンションをリフォーム・リノベーションし、付加価値をプラスして再販売し、利益を得ることを事業としているためです。買取会社の利益を確保するため、どうしても買取(売主様にとっては売却)価格は抑え気味になってしまうのです。価格については買取会社と交渉ができますが、市場で取引されている価格並みにはできないことを知っておきましょう。
マンションをいち早く売却したい、すぐに現金化したいと思っている売主様にとっては目をつぶることができますが、少しでも高く売却したと思っている人には厳しいデメリットといえるでしょう。
先ほどもお伝えしたように、マンション買取会社はマンションを買い取り、それに付加価値をつけて再度販売することで利益を得ています。そのためマンション買取会社が「これはリノベやリフォームしても売れない」と判断したマンションについては、買い取ってもらえないということもありえます。
マンション買取会社によって判断基準はさまざまですが、マンションのサイズ、築年数(旧耐震基準の物件は対象としないなど)、立地、土地の状況など買取に独自の基準を設けていることがあります。条件によっては、買い取ってもらえない可能性を考慮しておきましょう。
もし断られた場合は、別の買取会社にも査定を依頼しましょう。何社かと交渉すれば、買い取ってもらえることもあります。
実際にどのような手順や流れでマンション買取が進んでいくか、おおよそのイメージをつかんでおきましょう。
まず始めにするのは情報収集です。収集しておくべき情報には以下のようなものがあります。
一つめは物件の相場情報。各種不動産ポータルサイトやレインズマーケットインフォメーション(※)などを利用して、所有しているマンションの相場を調べておきましょう。事前に調べておくことで、もしも買取会社の査定額が現実とかけ離れていた場合に、気づくことができます。
次に収集すべき情報は、不動産買取会社について。検索などでいくつか候補を挙げて、WebサイトやSNSをチェックしておきましょう。
事前の情報収集で相場を把握したら、次に買取会社に相談・査定依頼をします。電話で問い合わせたり、買取会社のWebサイトで必要事項を入力するのが一般的です。
査定を依頼したからといってその会社に買い取ってもらわなければならない、というわけではありません。買取価格や対応を比較検討するためにも、複数の買取会社に相談・査定依頼をしましょう。相談や査定には費用はかかりません。できれば多くの買取会社に相談・査定依頼をすることをおすすめします。
査定には、実際にその場に行かずに、物件情報、公示価格、周辺取引事例、市場動向などを考慮し、机上で価格を算出する「机上査定」と、現地を訪問したうえで算出する「訪問査定」があります。
見積を出してもらうのは訪問査定の後ですが、その前に机上査定でプロの意見を聞きましょう。正確な査定のためには、マンション名、間取り、築年数、広さ、修繕積立金、管理費、駐車場代などについて、できるだけ正確な情報をきちんと伝えることが大切です。
最初は多くの買取会社に机上査定を依頼して、その結果で訪問査定を依頼する会社を絞るという方法がいいでしょう。もとになる情報が同じでも、査定結果が異なることがあります。買取会社によって欲しいと思っているマンションが違うので、値付けも異なることになるのです。
その名のとおり、買取会社のスタッフが物件を訪問し、室内の状況や、周辺の環境など物件の詳しい状況を確認したうえで、より正確な査定額を算出する査定です。スタッフの訪問は30分から1時間程度で終了しますが、部屋での立ち会いが必要になるためスケジュールの調整が必要。査定結果は5営業日程度で連絡があります。
不動産の価格査定には①取引事例比較法、②収益還元法、③原価法の3種類があり、居住用マンションの場合は、ほとんどが①の取引事例比較法で査定されます。
取引事例比較法は、査定する物件と条件が近い物件が、いくらくらいで取引されているか実際の取引事例を参考にして価格を算出する方法です。
類似物件が1坪(約3.3平方メートル)あたりいくらの単価で取引されているのかを調べ、そこに築年数、間取り、広さ、日照、室内状況など物件そのものの条件のほか、階数や駅からの距離、周辺の環境なども加味して判断します。ごく一般的な査定方法ですが、査定価格にバラツキが出やすいため、複数の買取会社に査定してもらうことが肝心です。
原価法は「もしも同じ物件を現在の土地にもう一度建てて、経年変化による劣化分の価値を引いたら、いくらになるか」といった考え方で算出します。戸建て住宅の建物部分の査定に使われることが多く、マンションの査定で使われることはほとんどありません。
戸建て住宅の場合、取引事例比較法で算出するほど類似した物件を探すことが困難となります。そのため戸建て住宅の査定では、原価法が使われることが多くなっています。
収益還元法は「この物件を運用したら、今後どれだけの収益が得られるだろうか」といった考え方で査定します。1年間で得られる利益で判断する直接還元法と、長期的なキャッシュフローを考慮するDCF法があります。
・直接還元法
不動産価格(収益価格)=1年間の純収益÷還元利回り
・DCF法
不動産価格=毎期得られる純収益の現在価値の合計値+将来の売却価格の現在価値
収益還元法は、賃貸マンションなど投資用物件を査定するのに使われています。
複数の買取会社から査定価格が出たら、比較検討して買い取ってもらう会社を選定します。もちろん買取金額が高い方が優先なのは言うまでもありませんが、決済(引渡)日やそのほかの条件についても確認をします。
すべての査定価格に納得がいかない場合は、買取会社に金額の交渉をすることも可能です。交渉する場合は、その根拠として物件の将来性やメリットをきちんと伝えられるようにしておくことが大切です。
引渡日や家具など残置物はそのまま現状引き渡しでいいのか、などについてもしっかり確認しておく必要があります。一番査定価格が高い会社に買い取ってもらったが、後日「家財処分費用」など予想外の請求が届いてビックリしたというケースもあります。
買取会社が決まったら、契約書を交わす前にすべての疑問点を解決しておくことが大切です。具体的には次の項目について確認します。
契約書は買取会社の担当者と一緒に読み合わせて、双方の認識にずれがないことを確認しましょう。
売買契約書の内容に納得し、双方が署名・捺印したのちに、手付金を受け取ります。手付金は物件価格の10%相当の額とするのが相場です。残金は決済・引渡し時に残代金として支払われます。
売買契約書に記された引渡日にマンションを引渡します。引渡日は契約締結から1~2ヶ月の日程で定めるケースが多いようです。
当日は買取会社のオフィスや銀行の一室などで引渡手続きが行われます。売主様は残金の着金を確認してから、マンションの鍵をすべて渡します。高額な現金の受け渡しがあるのと、所有権移転登記があるため、必ず銀行と法務局で手続きが可能な平日に行われます。
住宅ローン残債の一括返済がある場合は、抵当権の抹消手続きをしないといけません。銀行に連絡して必要書類を用意してもらいましょう。所有権移転登記と同時に抵当権抹消登記を司法書士が手続きします。司法書士は買取会社が手配してくれることがほとんどです。
マンションを売却した翌年の2月中旬から3月中旬の間に売主様は確定申告を行います。
売却で発生した利益を譲渡所得といい、譲渡所得には譲渡所得税が課税されるため、必ず確定申告をしなければなりません。後で解説しますが、譲渡所得税はほかの所得(事業所得や給与所得)とは別途、分離課税方式で計算します。「3,000万円特別控除」「10年超所有軽減税率の特例」「居住用財産の買い換え特例」など各種控除を積極的に活用することで税額を抑えることが可能です。
また売却価格が購入価格を下回るなど、売却によって譲渡損失が発生した場合は、確定申告は必ずしなければいけないわけではありません。しかし、一定の要件を満たせば損益通算ができて所得税・住民税が軽減されたり、「譲渡損失の繰越控除」を利用できることがあるため、確定申告をすることをおすすめします。
確定申告に必要な申告書は、税務署の窓口や国税庁のホームページで入手できます。
マンション買取は仲介に比べれば費用が少ないのが特徴です。しかしそれでも印紙税、登記費用、住宅ローン一括返済手数料などがかかります。どんな費用があって、いくらくらいかかるかをあらかじめ知っておきましょう。
マンション買取の際も不動産売買契約書をかわすにあたって、印紙税を納める義務があります。
印紙税の金額は、契約金額によって変わります。現在(令和6年3月31日まで)不動産の譲渡契約書は軽減措置の対象となっています。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
なお印紙税は売り手側、買い手側の両方の契約書に課税されます。印紙税を納めなかった場合、過怠税として納付すべき印紙税の最大3倍が課せられる場合があります。
住宅ローンを組んでマンションを購入していた場合は、金融機関が設定した抵当権を抹消する抵当権抹消登記をします。買取金で住宅ローンを一括返済する場合は同時抹消(所有権移転登記と抵当権抹消登記を同時に行う)をすることになります。
登記費用は登録免許税と司法書士への報酬を含めて2~3万円程度です。なお、所有権移転登記の費用は買取会社が負担することが一般的です。
買取を依頼するマンションが住宅ローン返済中の場合、ローンの残債を一括で返済することになります(買取代金を残債に充当したい場合、買取代金が残債を下回ると預貯金や借入金で補填することになるので注意してください)。
住宅ローンの一括返済にあたっては、繰上返済手数料がかかることがあります。いくらかかるのか金額は、組んでいるローンの内容や銀行・金融機関によって異なりますので、売却することを決めたら問い合わせてみましょう。
マンションを売却したことで利益(=譲渡所得)が発生した場合、譲渡所得税(住民税と復興特別税を含む)がかかります。
自宅など居住用のマンションを売却した場合は「3000万円の特別控除」という特例があります。これは譲渡所得が3000万円に満たないときは譲渡所得税が課税されないというもの。ただし親族間の売買では不可などの要件があり、買い換え時の住宅ローン控除とも両立できません。買い換えのために売却する場合はどちらを使うかよく検討しておきましょう。
譲渡の結果がマイナスになる場合は譲渡所得税は発生しませんが、各種控除を受けるためにも確定申告をした方がお得です。譲渡損失がその年の所得だけで相殺できない場合は、翌年以降3年間繰り越すことができるなど税制で有利になりますので、確定申告をすることをおすすめします。
確定申告は売却した翌年の2月~3月。必要な申告書は、税務署の窓口や国税庁のホームページで入手できます。
数多くあるマンション買取会社の中から、信頼できる会社はどうやって選べばいいのでしょうか。マンション買取会社を選ぶポイントをお伝えします。
マンション買取会社に査定価格を出してもらう際には、必ず複数の買取会社に査定を依頼しましょう。もし事情があって売却を急いでいるような場合は一括見積サイトを活用すると面倒な入力を一回で済ますことができて便利です。
査定価格が出そろったら、その金額で比較検討します。その際に、額面金額が高いか安いかだけで安易に判断するのは危険です。高いと思って飛びついたら、査定価格には諸費用が反映されていなかった、買取時に残置物の撤去費用を別途請求された、などのケースがあります。
買取会社から査定価格が提示されたら必ずその根拠を質問しましょう。査定価格の高い低いよりも、その査定価格には何が含まれており、何が含まれていないのか、査定をするときの基準や根拠をもとに、本当に高く買ってくれる買取会社を見極めましょう。
Webサイトなどを参照し、過去の買取実績を調べましょう。もちろん買取実績数が豊富なほうがいいのですが、それよりもどんな分野が得意かが重要です。マンション買取会社にも個性や得意・不得意はあります。
また、古いマンションは扱わない、都市部のみのマンションを扱う、多少古くても買い取るなど買取会社によって物件に対する考え方もさまざまです。いずれにしても、売却したいマンションと同じようなマンションの買取実績が豊富なマンション買取会社なら、安心して任せられるでしょう。
また売却したいマンションが立地するエリアでの買取実績が豊富なマンション買取会社を選ぶというのも一つのポイントです。
どんな買取会社を選ぶかも大切ですが、その買取会社の担当者の対応も大切なポイントです。特に、はじめてマンションの買取を依頼する場合は、マンション買取会社の担当者がこちらの話をじっくり聞いて、些細なことでも相談に乗ってくれるかどうかをチェックしましょう。こちらの意向を無視して強引な営業をしてくるような担当者は論外ですが、質問しても「そういうものだから」で済ませてしまう担当者だと、疑問を解決できないまま取引が進んで「ああすればよかった」と後悔が残ってしまうこともあります。
買取金額はもちろん大切ですが、引越し時期や不要になった家具の引き取り、入金日といったさまざまな詳細項目についても柔軟に対応してくれるかどうかも重要です。
仲介で売却するよりも、買取に向いているマンションがあります。それはどんなマンションなのかを解説します。
市場で買主様がなかなか見つからないマンションは、結果的に値下げしてしまうことも多く、結局、売主様の希望通りの金額で売却できないというケースも少なくありません。そのようなマンションは、最初から買取も検討したほうがいいでしょう。
築年数が古い物件はその代表格で、とくに旧耐震基準(1981年5月までの建築確認での基準)のマンションは、万が一大きな地震が発生した際に被害が大きくなりやすいだけでなく、買主様が組むことになる住宅ローンの金利が高くなってしまうため、なかなか買い手がつきにくくなっています。それほど古くなくても、築30年以上のマンションは、経年変化で水回りなどに何らかの不具合が出やすくなっています。
また室内の見た目が古びていたり、クロスが破れているなどあまりきれいでない物件も、買取に向いています。リフォームやリノベーションをすれば、仲介物件としても人気が出る可能性がありますが、手間と費用を掛けるよりも買取で早めに売却してしまった方が結果的にお得である場合も少なくありません。
仲介よりも買取に向いているマンションをひとことでいうと、「仲介で売りにくいマンション」です。戸建て住宅なら、最寄り駅からのアクセスが多少悪くても、広さや間取り、周辺環境を重視する人が少なくないのですが、マンションはより駅からの近さや利便性が求められる傾向にあります。
もしもまったく同じ築年数、同じ間取りのマンションで、駅からすぐの物件と、駅からバスで10分の物件があったら、その人気には大きな差が出てしまいます。最寄り駅からのアクセスがいま一つのマンションは、買取で売却することを検討してみましょう。
スーパーや学校、役所など、生活に必要な施設が徒歩圏に少ない、不便な立地にあるマンションも、市場では人気が出ない傾向にあります。買取のほうが向いているでしょう。
相続や遺贈によって取得したマンションで、自分で使う予定がない場合は、売却して現金化を考えるのが一般的でしょう。相続後3年10ヶ月以内に売却すると、相続財産の取得費加算の特例(譲渡所得税から相続税を控除できる特例)を受けられるため。迷っているなら早めに手配したほうがいいでしょう。
マンションが現在空き家である場合は、買取と仲介の両方で売却を検討してもいいでしょう。しかし、築年数が古い、駅からのアクセスが悪い、周辺の生活環境が整っていないなど、仲介では買い手が付きにくい条件の物件ならば、買取での売却の検討をおすすめします。
マンションの買取を行う際には、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか。マンション買取の注意点について解説します。
マンション買取の手順と流れの章でもお伝えしましたが、まず初めに情報収集をして、周辺では同じような物件がどのくらいで取引されているかを掴んでおきましょう。マンション買取会社が買い取った物件は、リフォーム・リノベーションをして再販するため、買取金額はどうしても市場価格の7割程度の金額になってしまうものですが、査定額が出てきたときに、その金額が妥当なものかどうかは、相場価格が分からなければ判断しようがありません。査定額があまりに低すぎると感じたら金額交渉をしてもいいでしょう。相場を知っておくことが交渉を進める上での根拠にもなります。
売却するマンションの相場を調べるには、不動産ポータルサイトなどで築年数、駅からの距離、広さなどが似た物件を探してみます。同じような物件がない場合は、築年数と駅からの距離が似た物件の1坪または1平方メートルあたりの単価を計算して、売却したいマンションの面積に当てはめれば、おおまかな金額が算出できます。
買取依頼をする場合、急いでいるために査定を1社しか依頼しなかった、という方がたまにいます。しかし、査定を1社のみに依頼するのはとても危険です。査定価格に納得していたが「念のため」と別の会社に依頼したら、最初の会社とはかけ離れた査定額を提示してきて驚いた、というケースもあります。査定の判断基準や考え方は買取会社によって違うため、会社によって査定金額も変わってきます。査定は必ず複数の会社に依頼して、比較検討しましょう。
査定の依頼は個々の不動産会社に直接電話やメールで問い合わせることもできますが、複数の会社と同時にやりとりをするのは大変ですし、同じデータを何度も入力したり、同じことを何度も伝えたりしなければいけないため面倒です。信頼できる大手の不動産仲介会社が多数登録している一括査定サイトを利用することがおすすめです。メール等で連絡してきた査定結果から、条件のよい数社に絞って訪問査定を依頼するとよいでしょう。
引渡し時の条件やサービスについてもしっかり確認しておきましょう。
・売却代金の決済日と物件の引渡日
希望通りのスケジュールになっているかを確認します。
・エアコンや大型家具など残置物
そのままでいいのか、処分してから退去か、処分費用を払っておまかせできるのかを確認します(退去後、処分費用として思わぬ高額を請求されたケースがあります)。
・修繕について
買取の場合原則不要ですが、契約書にその旨を明記されているかどうか念のため確認しましょう。
・そのほかの疑問点
気になることがあれば「こんなこと聞いていいかな?」などと思わずに質問して、疑問を残さないよう確認しましょう。
マンションの売却で失敗しないためには、どの不動産会社に相談するかが重要です。買取にするか、仲介にするかを決める前に、まずは不動産一括査定サイトを活用して、さまざまな不動産会社の査定額を比較検討してみてはいかがでしょうか。諦めかけていた物件にも意外な査定額がつくかもしれません。「すまいValue」なら、マンション買取の実績のある大手不動産仲介会社6社に対して、無料で一括査定を依頼することが可能です。ぜひご活用ください。
公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。
中村 昌弘
宅地建物取引士
都内大学を卒業後に新卒で上場ディベロッパーに就職。マンションの販売・企画・仲介などを経て2016年に独立。独立後は、不動産事業としては主にマンション売却のコンサルタントに従事している。
酒向 潤一郎
税理士
J’sパートナー総合会計事務所(酒向潤一郎税理士事務所)にて、税理士として会計事務所の経営を行う一方で、一部上場IT企業の幹部や投資会社の監査役などを務める複業税理士。最近では開業・副業コンサルに注力。会計専門誌などにも複数寄稿している。
最後までお読みいただき、
ありがとうございます。
ご回答ありがとうございました。