家の売却を成功させるためには、適切な売出価格や売却タイミング以外にも、現在の建物の状況(状態)が購入検討者に与える影響も考慮しておくことが大切です。特に目に見えにくい部分の建物の状況(住宅の経年劣化状況や破損状況の有無など)については、インスペクション(建物状況調査)の活用によって把握するのもよいでしょう。
以下では、インスペクションについて解説します。
インスペクションとは、国土交通省が定める講習を修了した建築士が、既存住宅状況調査技術者と呼ばれる有資格を持っておこなう建物(家)の状況調査のことをいいます。
2013年6月に国土交通省が「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を定め、木造住宅、鉄筋コンクリート造の共同住宅ごとに具体的な調査箇所を示しています。
・木造住宅の場合
構造耐力上主要な部分(基礎・壁・柱・小屋組・土台・斜材・床板・屋根板・横架材)
雨水の浸入を防止する部分(屋根・外壁・閉口部)
・鉄筋コンクリート造の共同住宅の場合
構造耐力上主要な部分(基礎・基礎ぐい・壁・床板・屋根板)
雨水の浸入を防止する部分(屋根・外壁・閉口部・排水管)
これらの建物箇所を専門家が調査することで建物の現状を客観的に把握できるのです。
インスペクションをおこなうことで、一個人では把握が難しい目に見えにくい家の箇所の経年劣化状況を確認することができます。不動産売買契約の締結前に家の状態は良好であるか、また、事前に修繕すべき箇所があるかなど、家のコンディションが事前に分かることで、中古住宅の状況(状態)を客観的に示すことが可能となるため適切な建物価格の評価につながるというメリットがあります。
また、インスペクションをおこなった家は、インスペクションをおこなっていない競合物件と比べると、不動産売買契約締結前に家のコンディションが可視化できることから、買主様にとっても修繕が必要な箇所の有無や修繕に必要なおおよその費用を事前に把握することができます。購入検討者にとっては、家の現状を理解したうえで、購入の意思決定が可能となることからある程度の安心感を持って決断できるというメリットが生まれます。
インスペクションをおこなう際の調査内容や費用は、家の床面積や調査を実施する調査会社によっても異なります。インスペクションの実施を検討している場合には、ご自身の売却予定の不動産に対するインスペクションの必要性も含め不動産仲介会社に詳しく相談してみるとよいでしょう。
購入検討者に魅力的な物件であると感じてもらうためには内覧時の印象が非常に重要です。きれいに撮った物件の広告写真を目にしても、実際の内覧時の印象が大きくかけ離れていては、購買意欲を損ねる可能性があります。
購入検討者に清潔感のあるよい印象を感じてもらうためにも、内覧準備のポイントを確認しておきましょう。
・玄関
玄関は家の第一印象を決める場所です。下駄箱の整理、‘たたき’の水拭きをして、一目で「きれい」と感じてもらえるよう掃除を心掛けましょう。
・リビング
家族の憩いの場となるリビングは、明るさや開放感を感じられるよう不用品を片付け、日頃から整理整頓をしておきましょう。
内覧時には窓を開けて換気し、通気性のよさを肌で感じてもらうことも有効です。
また、採光を邪魔しないように窓際にはなるべく物を置かないなど工夫してみましょう。
・キッチン
清潔感がより重視されるキッチンでは、食器や調理器具などは食器棚などに片付けましょう。汚れが目立ちやすいシンクは生活感が出ないよう、水垢やサビなどの汚れを落としきれいにしておくことで、よりよい印象を与えられます。
・バス、トイレ、洗面台
お風呂やトイレ、洗面台などの水回りも清潔感を重視されやすいポイントです。湿気やニオイがこもらないよう換気し、水垢などの汚れを落としておきましょう。あまりにも汚れがひどい場合には、売却開始前に専門業者へハウスクリーニングを依頼し、プロに清掃してもらうことも一つの方法です。
・バルコニー
バルコニーも気にされやすいポイントです。バルコニーの床や窓・網戸など雨風で汚れた箇所はきれいに掃除しましょう。また、購入検討者が内覧時にバルコニーに出やすいよう、きれいなサンダルを用意しておくなどの配慮があるとなおよいです。
内覧前に欠かせない内覧準備のポイントをクリアできれば概ね問題ありませんが、競合物件とより差別化を目指すのであれば、専門業者によるホームステージングを依頼するのも一つの方法です。
ホームステージングとは、部屋に家具や照明、植物などでインテリアコーディネートを加え、新築分譲住宅のモデルルームのような演出を施すことで、早期売却を目指すサービスのことです。
室内に家具や照明などのインテリアを配置して建物の構造を活かしたインテリアコーディネートをおこなうことで、物件の魅力を高めて内覧者の購入意欲を向上させることが可能になるといわれています。
米国では、ホームステージングはマイホームを売却する際の基本的な取組みともされていますが、近年、日本でも高額な物件を中心にホームステージングを実施した売却物件が徐々に増えつつあります。
日本ホームステージング協会が実施した調査によると、ホームステージングをおこなった場合、成約までの日数はおこなわなかった場合の約3分の1にまで短縮されるといった結果もあります。
ホームステージング | 成約までの日数 |
---|---|
あり | 40日 |
なし | 124日 |
※一般社団法人 日本ホームステージング協会「第1回ホームステージング実態調査」より
ホームステージングの実施については、売主様が直接専門業者へ依頼することも可能となりますが、不動産仲介会社の売買仲介サービスの一環としてホームステージングを実施している場合やホームステージングの専門業者と提携している場合もありますので、ホームステージングの実施の必要性も含めまずは不動産仲介会社に相談してみるとよいでしょう。
家の早期売却のためにできる取組みについてまとめてまいりました。
競合物件との差別化を図るためにも、まずは、家をきれいに掃除し保つことが必要不可欠です。そのうえで、インスペクションによって家の状況を客観的に把握することやホームステージングによって物件の魅力を高めることで、適切な売却価格でより早期に不動産を売却できることでしょう。
しかし、家をきれいに保ち続けるためには、売主様に労力がかかってしまいます。ご高齢の場合には体力的な問題やなかなかそのような時間的な余裕がないといった場合には、プロにハウスクリーニングを依頼しましょう。不動産仲介会社では、ハウスクリーニング専門業者、インスペクション専門業者、ホームステージング専門業者と提携しているケースもありますので、まずは、不動産仲介会社へ相談してみるとよいでしょう。
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小林弘司
不動産コンサルタント/不動産投資アドバイザー
東京生まれ、東京育ち。海外取引メインの商社マン、外資系マーケティング、ライセンス会社などを経て、現在は東京都内にビル、マンション、アパート、コインパーキングなど複数保有する不動産ビジネスのオーナー経営者(創業者)です。ネイティヴによる英語スクールの共同経営者、地元の区の「ビジネス相談員」、企業顧問なども行っています。
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