お持ちの中古マンションを高く売るためにはどうしたらいいのでしょうか。この記事では、中古マンションの売却が初めての売主様のために、売却を成功に導くための大まかな流れと、売却価格をなるべく高くするためのポイント、さらに信頼できる不動産仲介会社を選ぶ方法などについてお伝えします。
まずは中古マンションを売却する際にどんな順序で進んでいくのか、大まかな流れをつかんでおきましょう。
中古マンション売却にあたって、まずは査定と考えがちですが、その前にしておくべきことがあります。それは情報収集や必要書類の準備です。
売却を決めたら、まずは次の4つを進めておきましょう。
一般的に、マンションの売却にかかる期間はおよそ3ヶ月ほどだと言われています。いつ頃売りたいか逆算して動き出す時期を決めておきましょう。
また、よい買主様がなかなか見つからない場合には、値段を下げても早めに販売してしまいたいのか、じっくり自分の希望通りの価格で売りたいのか、売却の方向性についてもおおまかでいいので決定しておきます。
中古マンションに限らず不動産の売出価格は、売主様が自由に決められます。しかし、相場より極端に高すぎると買主様が見つかりにくく、安すぎると売主様の収入が減ってしまいます。
不動産仲介会社に査定を依頼する前に、できれば売りたいマンションのおおよその相場をチェックしておきましょう。
また、必要書類の準備もしておきましょう。用意する書類は多岐にわたり、なかには役所で申請の必要なものもあります。まずは何が必要で何が足りないのかだけでも把握しておくことをおすすめします。
売却したい中古マンションに住宅ローンの残債がある場合は、ローン残高と預金額も確認しておきます。特に銀行関係は書類の準備に時間がかかることもあります。できるだけ早めに手配に取りかかり、ギリギリになって慌てないようにします。
また、下記書類は必ずしも売主様が用意しなければならないというわけではないので、不動産仲介会社の担当に随時確認しましょう。
・マンションの査定時までに用意する書類
本人確認証明書
固定資産税納付通知書
間取り図が分かる分譲時のパンフレットなど
リフォーム時の仕様書・見積書(リフォームしていた場合)
・媒介契約時までに用意する書類
マンションの管理規約など
・引渡し時までに用意する書類
印鑑登録証明書
口座情報のわかる通帳・キャッシュカード
管理に係る重要事項調査報告書
情報収集と必要書類の準備がある程度出来た段階で、不動産仲介会社に査定の依頼をします。
査定には「机上査定」「訪問査定」の2種類があります。
簡易査定とも呼ばれる机上査定は、資料やデータをもとに不動産仲介会社が机上で行う簡易な査定です。査定の根拠となるのは、その物件の間取りや立地、近隣のマンションの売却事例や過去の成約取引事例、公示価格など。これらさまざまな情報をベースに、それぞれの不動産仲介会社の判断も加えて行います。
データのみで算出するため、数日から1週間ほどで報告があります。結果は不動産仲介会社ごとに差があるのが普通です。相場とあまり乖離がある場合は理由を質問すると、売りたい物件への理解が深まります。
机上査定は、売却を迷っているフェーズで「取りあえず、おおよその価格が知りたい」と考えている場合に利用されることが多いのですが、訪問査定に来てもらう不動産仲介会社を選抜するのにも使えます。一括査定サイトなどを賢く使い、できるだけたくさんの不動産仲介会社に査定を依頼するのが成功のコツです。
机上査定は電話や直接店舗を訪問して依頼することも出来ますが、現在ではインターネット上で完結することがほとんどです。
机上査定で選抜した不動産仲介会社数件に直接売りたい物件を見てもらい、細かく査定してもらいます。室内や整備の状態、上下水道などのインフラの整備、周辺環境や日当たりなどを直接不動産仲介会社の社員がチェックし、登記や権利関係も踏まえて、より詳細な査定価格を提示します。
ここで重要なのは、訪問査定に来てもらう不動産仲介会社は1社に限定しないで必ず複数社に依頼することです。
不動産仲介会社とひとくちに言っても、販売に強い会社、賃貸に強い会社、地元の物件だけを扱う会社、買取だけを広範囲で行う会社などさまざまな個性があり、それぞれに得意分野が違います。1社だけの査定結果で決めずに、さまざまな意見に耳を傾け、できるだけ総合的な判断をすることが大切です。
訪問査定を経て、お付き合いしたい不動産仲介会社が決まったら、次はその不動産仲介会社と媒介契約を結びます。
査定を依頼した不動産仲介会社の中から、販売活動を託す不動産仲介会社を選んで、媒介契約を結びます。
媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。それぞれの特徴は次の通りです。
専属専任媒介契約 | 売却活動を1社だけに任せる契約。売主様自身で買主様を発見しても、仲介会社を通して契約する。 |
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専任媒介契約 | 売却活動を1社だけに任せる契約。売主様自身で買主様を探した場合、直接取引が可能。 |
一般媒介契約 | 売却活動を数社に任せる契約。売主様は複数の会社とやりとりできる反面、連絡が複雑になる。 |
媒介契約を結ぶと、不動産仲介会社が販売活動を開始します。
媒介契約によっては不動産仲介会社から販売活動の報告があります。専属専任媒介契約なら1週間に1回以上、専任媒介契約なら2週間に1回以上の報告が義務づけられています。
購入を検討している方が現れたら、売主様も内覧に対応します。
内覧時の印象が購買意欲に大いに影響しますので、掃除は徹底的に行い、しっかり準備することが大切です。なかでもキッチン、お風呂、トイレなどの水回りは、厳しい目でチェックされます。掃除に自信がない場合はハウスクリーニングを頼んでもよいでしょう。内覧時にきれいにしておくことで、売却価格や引渡し日の交渉などに余裕をもって臨めます。
不動産仲介会社から「購入希望者が見つかった」という連絡があったら、買主様候補が提示している金額や条件、引渡し希望日、支払方法を確認します。
契約書はプロである不動産仲介会社が作成しますが、契約書の内容は当事者として必ずしっかりチェックしましょう。
契約不適合責任についてはどのように定めているか、免責の特約はあるのか、期間はどれくらいかなどを確認します。
契約書の内容に問題がなければ、不動産売買契約を交わします。買主様から売主様へ売却価格の5~10%程度の手付金が支払われ、売主様は不動産仲介会社への手数料の半金をここで支払うこともあります。支払いにはこの手付金の一部を充当することが多いようです。
不動産売買契約を結ぶのは引渡し日の1~3ヶ月前が普通です。この際に、売却価格や引渡しの日取りを最終的に決定します。
売却するマンションの住宅ローンが残っている場合は、引渡し日に一括返済することになります。ローンを組んでいる金融機関に連絡し売却する旨と引渡し日を、早めに伝えておきましょう。
また、マンションの管理組合にも忘れずにこのタイミングで連絡しておきます。引渡し当日までの間に、引越しの手配などを行い、売却する物件をきれいにしておきましょう。
物件引渡しの当日、売主様、買主様、不動産仲介会社の担当者、司法書士が集まり、残代金の決済と鍵の引渡しが行われます。
司法書士が同席するのは所有権移転登記と抵当権抹消登記のためです。
売却するマンションの住宅ローンが残っている場合は、売主様は買主様から受け取った代金でローンを一括返済します。
これらの手続きが完了したら、不動産仲介会社に対して残りの仲介手数料を支払います。
売主様は売却が完了した翌年の2月16日から3月15日(日曜の場合は16日)までの間に確定申告を行います。
売却で得た利益に対して譲渡所得税がかかりますので、確定申告が必要となるのです。手間はかかりますが、確定申告をすることで、各種の控除や特例などを使って節税できることがあります。
所得税と復興特別所得税は、確定申告期間中に税務署か金融機関等で納税するか、申告の際に振替納税の手続きをして、約1ヶ月後に指定の口座から引き落し、のどちらかで支払います。
住民税については確定申告の後2~4ヶ月ほどで送付される納付書を利用して支払います。
売却による利益がゼロまたはマイナスの場合は、確定申告は義務ではありませんが、確定申告することによって適用できる特別控除や特例などがある可能性もあるので、申告することをおすすめします。
中古マンションをなるべく高く売るためにはどうしたらいいのでしょうか。ポイントを解説します。
中古マンションを高く売るためには、相場を知っておくことが必要です。駅からの距離や間取りなどが似ている近隣の物件の売却価格や市場動向を調査して、現在の価格相場を把握しておきましょう。
不動産仲介会社が査定するので不要ではないかと考えがちですが、売主様自身が不動産価格を調査することで、相場観が身につくため、適切な売出価格をつけることができます。
物件の特徴や利点を強調し、魅力的なポイントをアピールしましょう。
商店街や幼稚園、学校への距離、病院の情報など、そこに暮らした売主様だからこそわかる生活情報や、◎◎の花火大会が見える、桜の季節がきれいなど、住んでみてわかった魅力は積極的にアピールしたいところです。
物件そのものの情報も大切です。リフォームや修理の履歴は不動産仲介会社にきちんと伝えましょう。修理の履歴はマイナスではなく、保守管理がキチンとされているということで、売却活動においては好材料になることもあります。
また、欠陥と思える点も正直に伝えておきましょう。後で気づかれてマイナスを付けられるよりも、初めから正直に伝えておく方が好印象です。
適切なタイミングを選んで売却活動をはじめることも大切です。
中古マンション市場は季節によって変動しており、例年、新学期や人事異動で人が動く時期の2~3月が高値で売れやすい傾向にあります。特に大きなこだわりがなければ、この時期に販売できるよう、売却準備は前年の11月頃にスタートするのがベストです。
また、中古マンションの価格相場は、日本経済全体の状況、物価の状況、金利水準などと深い相関関係があります。中古マンション相場が高い時期に売却できればお得なわけですが、現在はマンション価格相場が高い局面にあると言えます。
中古マンションが売主様の希望価格で売れるか否かは、不動産仲介会社の実力によるところが大きいのです。信頼できる不動産仲介会社を選び、プロとしての専門知識や経験を活用しましょう。
不動産仲介会社の選び方と注意点については後述します。
中古マンションを適切な価格で売り出すために、売主様自身も相場を知っておくことをおすすめします。この項では、中古マンションの売却相場を売主様自身が調べる方法をお伝えします。
「マンション査定シミュレーター」はAIの自動計算で手軽にマンションの価格が調べられる仕組みです。
インターネットで物件の立地や築年数、坪数などの情報を入力すると、類似している物件の売却実績と比較したうえでAIが自動で計算をし、すぐに表示します。
誰にも会わずに、手軽にいますぐ相場を知ることができるというのがメリットですが、AIによるシミュレーションでしかないため、正確性に欠けるという難点があります。
匿名で調べられるため、売ろうかどうか迷っているが、とりあえず相場だけ知りたいという場合にも便利に使えます。
国土交通省が運営している「土地総合情報システム」というWebサイトの中にある「不動産取引価格情報検索」では、取引当事者のアンケートにもとづいて、実際に不動産がいくらで売買されたのかを検索できます。
売却したい中古マンションと似た条件の物件を検索してみると、実際の価格がもとになっているため、かなりリアルな相場を実感することができます。しかし、同じ不動産はありませんし、取引時期によっても価格は動きます。ほかの方法ともあわせて活用しましょう。
土地総合情報システムの詳しい情報はこちらのサイトをご覧ください。
条件別に、インターネットから不動産取引情報を閲覧できるのがレインズマーケットインフォメーション(REINS Market Information)です。
〈レインズマーケットインフォメーションで指定できる条件〉
建物種別(戸建て・マンション)
都道府県
地域・地域詳細
沿線・最寄り駅・駅からの距離
単価
専有面積
築年数
間取り
成約時期
用途地域
名前がそっくりなので紛らわしいのですが、レインズマーケットインフォメーションは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営・管理する一般向けの不動産流通標準情報システムで、同機構が運営・管理しているサイトの「レインズ(REINS)」とは別物です。
レインズは宅地建物取引業者が閲覧できる会員制データベースであるため、個人でアクセスしても不動産の相場を調べることはできません。
売りに出されている不動産の物件情報が掲載されている不動産ポータルサイトで検索する方法もあります。
物件を買いたいときに不動産ポータルサイトを活用して相場を把握するのと同じように、中古マンションの売主様も売却したいマンションの情報(立地、面積、築年数など)を入力して検索すれば、同じような条件のマンションがいくらで販売されているかを見ることができます。
不動産ポータルサイトも気軽に使えますが、サイトに掲載されている価格は売出価格です。実際に取引された成約価格ではないことにも留意してください。
ここまで、売主様が売却したい中古マンションと条件が似た物件の情報を探して、そこから類推する方法をお伝えしました。
しかし、これらの方法ではある程度の目安しかわかりませんし、そもそも、売却したい物件そのものの価格はわかりません。近くにマンションがあまりない地域などでは、あまり参考にならないといった事態もあるでしょう。
実際に売却したいマンションの査定額が知りたい場合には、査定を依頼するのがおすすめです。
インターネット上で不動産の情報を入力して複数の不動産仲介会社に同時に査定依頼ができる不動産一括査定サイトなら、一度入力するだけで複数社に依頼ができます。査定結果を比較検討することで、より現実的な売却相場がわかります。
どんな不動産仲介会社に依頼するかは中古マンションの売却の成否を分けるポイントです。しかし、それだけに、どう選んだらいいのか悩んでしまう売主様も多いでしょう。そこで不動産を売却する際の会社の選び方を解説します。
不動産事業は多岐にわたるため、一社ですべてをまかなう不動産会社はあまり多くありません。それぞれ得意分野があります。賃貸仲介メインの会社、開発事業専門のデベロッパー、新築戸建て建売分譲の会社、不動産買取・再販の会社などなど。
中古マンションの売却を依頼するなら、その取引が得意な不動産仲介会社に頼むのがベストです。媒介契約を結ぶ前に、ホームページなどで不動産仲介会社の得意分野を調べておきましょう。
不動産仲介会社の店頭には「宅地建物取引業」の免許が掲示されています。この免許は5年ごとの更新制で、更新回数を見れば、その会社の営業年数がわかるようになっています。
免許番号は、以下のような表示です。
「国土交通大臣免許 (3) ○○○号」、「東京都知事免許 (2)○○○号」
( )の中には、5年ごとに更新する宅建業の免許の更新回数が示されます。
この数字が多いほど経験年数が多く、信頼できるだろうと推測できます。ただし、評価や能力を示しているわけではありません。更新回数が少ないからといって、その不動産仲介会社が悪いというわけではありません。あくまでも参考の一つとしてください。
不動産仲介会社が出してきた査定額を確認する際には、なぜその査定額になったのか、査定額の根拠を納得できるまで聞くほうがよいでしょう。
中古マンションを売却したいと考えたとき「少しでも高く売ってほしい」と考えない売主様はいないでしょう。そこに他社よりもかなり高い査定額を提示してくる不動産仲介会社があったら、「きっと高く売ってくれるに違いない」と期待して飛びつきたくなります。
提示してきた査定額に根拠があれば問題ありませんが、なかには売主様の心理につけ込んで、専任媒介契約・専属専任媒介契約をもらおうとする仲介会社も存在しています。
契約を結んだ1社だけが相場より高い値段を付けてしまっては、買主様はなかなか現れないでしょう。結局、値引きにつぐ値引きとなり、最終的には売主様の希望よりもかなり低い金額で売買契約を結んだという例もあります。
中古マンションの売却を考える際には、複数の不動産仲介会社に査定依頼をすることをおすすめします。
不動産仲介会社によって得意分野や経験、値段の根拠となる考え方が違ううえ、それぞれ独自の取引事例を踏まえて査定が行われます。そのため、同じ物件を査定したとしても、会社ごとに査定額が変わるのが普通です。
複数の不動産仲介会社に査定を依頼すれば、多様な査定結果を得ることができるため、物件に対する理解や不動産の知識が深まるというメリットがあります。
また、査定は不動産仲介会社の担当者と会話する機会でもあります。相手が信頼できるかどうかを判断する貴重な機会として利用するのもおすすめです。
売るのも買うのも人間ですから、中古マンション売却は担当者の能力によって成否が分かれます。信頼できる担当者に任せたいものです。担当者が信頼できるかどうか、簡易査定対応メールの文面や、訪問査定時の対応などからある程度は判断できます。さらに以下のようなポイントをチェックして担当者が信頼できるか見極めましょう。
中古マンションを高く売る方法についてお伝えしてきました。中古マンションの売却の成否は、不動産仲介会社に掛かっていると言っても過言ではありません。しかし、信頼できる不動産仲介会社を見極めるのは大変です。
迷ったときは大手不動産会社6社が運営している「すまいValue」を見てみてはいかがでしょうか。
公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。
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