マンションの売却時など、大きなお金や不動産の権利が動くシーンでは「印鑑証明書」の提出を依頼されることが一般的です。印鑑証明という言葉に聞きなじみがあっても、具体的に「なんのための書類?」「必要な理由や場面は?」と問われれば回答に詰まってしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、非常に大切な書類のひとつである印鑑登録証明書の概要や使用シーンについて分かりやすく解説します。
印鑑証明書とは、本人が使用している印鑑を本物(実印)であることを証明するための重要な書類です。正式名称を「印鑑登録証明書」といい、登録済みの実印であることを証明するために、市区町村役場で登録・発行をおこないます。使用するシーンは多岐にわたりますが、不動産の売却においては、マンションなどの不動産を移転・登記申請する際に提出します。
実印による押印でのみ法的効力を発揮する重要な書類においては、押印された印鑑が実印である証拠と、押印者が実印の持ち主である証拠が必要です。このようなとき、紛れもなく本人が実印を押印したという正当性・信頼性を高めるための書類が、自治体(市区町村役場)で印鑑登録を済ませた証として発行される印鑑証明書です。「実印の押印+印鑑証明書の提出」は自らの真意によって同意していることを意味することから、法的効力が発揮されます。信頼できない相手に提出しないなど、扱いには十分注意しなければいけません。
なお、印鑑証明書に有効期限はありませんが、不動産の取引の際には、発行日から3ヶ月以内のものを使います。早めに準備しすぎると、提出時に効力を失ってしまうため注意しましょう。
次は、マンション売却で印鑑証明書が必要になるシーンについて見ていきましょう。
売買契約は、売主が持つマンションの所有権を、買主に移すことを約束するための契約です。売買契約書への押印は認め印でも可とされていますが、登記申請書類の記入・押印をおこなう際に「実印+印鑑証明書」が必要になるため、実務上、売主の売買契約書への押印は実印でおこなわれるのが一般的です。
なお、売買契約に代理人が出席する場合、売主は代理人に委任状を渡します。この委任状には実印を押印し、印鑑証明書を添えることでその意思を証明するのが一般的です。加えて代理人の印鑑証明書も必要になることに留意しておきましょう。
印鑑証明書は最寄りの市区町村役場や分室において発行されます。本人もしくは代理人が取得する場合には以下のものを持参し、「印鑑登録証明書交付申請書」に必要事項を記入して提出しましょう。申請書の提出後、その場で印鑑証明書が発行されます。
また、マイナンバーカードをお持ちの方は、全国のコンビニ店舗等のマルチコピー機で証明書を取得することができます。待ち時間も短く、手数料も安いことからとても便利です。
次に、「残金決済・引き渡し」について解説します。
残金決済・引き渡しは、売主、買主、不動産仲介会社、司法書士の4者が集まり、
・所有権移転登記申請の準備
・売買代金の決済(現金受領、振り込み、小切手など)
・物件の引き渡し
などをおこないます。
印鑑証明書が必要となる具体的なシーンは、売買代金の授受後、所有権移転登記を法務局へ申請するタイミングです。売買契約時に不動産仲介会社へ印鑑証明書を提出していても、時間が経過(3ヶ月以上)している場合には再度の提出が必要となります。
このときの印鑑証明書の使用目的としては、売主のなりすまし防止や同意のない不動産売却(所有権移転)を防ぐことなどが挙げられます。売買契約時と同様、登記申請書類に押印された実印と印鑑証明書を用いて、売主の申請に虚偽がないことを証明します。
残金決済・引き渡しは不動産売却の総仕上げとなりますので、スムーズに手続きを進められるよう準備しましょう。
なお、登記簿上の住所氏名と印鑑証明書の住所氏名が異なる場合には、別途で「住所変更登記」が必要となってしまうため注意しましょう。
印鑑証明書は実印と合わさることで強い法的効力を発揮するため、金銭授受や権利移動の際に提出が求められることが一般的です。印鑑証明書は比較的容易に取得できる書類のひとつでもあるため、実印の扱いには十分に注意しましょう。
また、印鑑証明書は印鑑登録をしていないと発行されません。マンション売却を開始したら、いつでも印鑑証明書を取得できるよう、速やかに市区町村役場で印鑑登録を済ませておきましょう。
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斎藤 勇
ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士
保険や貯蓄、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。不動産取引では不動産投資を通じて得た豊富な取引経験をもとに、売り手と買い手、貸し手と借り手、それぞれの立場でアドバイスを実施。趣味はマリンスポーツ。モットーは「常に感謝の気持ちを忘れずに」。
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