戸建て住宅、マンション、土地などの不動産を売却する場合、気をつけなければいけないことがいろいろありますが、「タイミング」もその一つです。不動産の場合、価格が変動することから、どのタイミングで不動産を売却するかは非常に重要です。ここでは、多角的な視点から、不動産売却のタイミングについて考えてみます。
所有する不動産、特にマイホームを売却するタイミングは、出産や子育て、転勤・転職など、自分と家族のライフイベントも関わってきます。ときには「急いで売らなければならない」など、さまざまな制約がある中で売却を進めていかなければならないこともあるでしょう。それぞれのケースでどのようなことに注意すればいいのか、以下で紹介していきます。
不動産の価格は、景気動向や経済情勢の影響を受けやすい傾向にあります。一般的に、景気が悪くなると不動産価格は下落し、反対に景気が良くなると上昇します。不動産価格の右肩下がりが続いている場合は早く売却し、反対に右肩上がりが続いている場合は、しばらく様子を見るといいかもしれません。
また、不動産価格の中でもマンション価格は、日経平均株価と相関する傾向にあります。2025年7月1日現在の日経平均株価について、過去10年間の推移を見ると、一時的に株価が下落している時期はありますが、基本的に右肩上がりにあります。
出典:日経平均株価推移
一方、国土交通省が四半期ごとに公表している住宅不動産価格指数の推移(下図)を見ると、令和7年(2025年)3月の不動産物価指数は右肩上がりが継続しており、特にマンションでは顕著な右肩上がりとなっています。
出典:国土交通省 不動産価格指数(令和7年3月・令和7年第1四半期分)を公表
国土交通省の不動産価格指数は2010年時点の不動産価格を100とした指数で、マンションは2025年3月時点で220.0(速報、季節調整値)となっており、約15年で倍以上に上昇しています。住宅地の同118.4、戸建て住宅の同127.8、店舗の同161.6、オフィスの同168.2と比較してもその高さがわかります。
マンションは市場が堅調なときほど売りやすいもの。市場が右肩上がりの現在はいいタイミングかもしれませんが、今後も上昇が予想されるようでしたら、もうしばらく様子を見るのも一つの選択肢です。判断に迷われた場合には、プロ(不動産仲介会社)の意見を聞くといいかもしれません。
4月の新年度開始に向けて、毎年2~3月は引越しの時期となり、住み替え需要が増えます。賃貸物件だけでなく、売買物件も成約件数が伸びることから、2月~3月は不動産の取引件数が多くなり、売りどきといえるでしょう。
自宅の売却を検討し始めたら、早めの準備が必要です。例えば2月までに自宅を売却したい場合、1月後半には購入希望者がいる状態にすることが重要です。それには、前年の年末前から売却の準備を進める必要があります。準備が遅れると、需要のある時期が過ぎて売却条件が悪くなってしまいます。売却を急がない場合は、次の需要のピークまで売却するのを待つというのも一つの方法です。
一般的に、不動産は経年変化によって価値が下がります。自宅を高く売りたい場合は、築年数が浅いうちに、なるべく早く売却するのが理想といえるでしょう。しかし、戸建て住宅とマンションでは価値の下落のスピードが異なります。以下にそれぞれの売却時期を見てみましょう。
戸建て住宅に多く見られる木造住宅は、鉄筋コンクリート造りのマンションに比べると資産価値が下落するスピードが早いことから、売却するには築年数が浅いほうが有利です。
以下は、国土交通省がまとめた「中古戸建住宅の価格査定の例」で、木造戸建て住宅の査定価格の下落スピードが早いことを示しています。
出典:国土交通省 中古住宅流通、リフォーム市場の現状 「中古戸建住宅の価格査定の例」
住宅ローンを利用して中古住宅を購入した場合、築年数が古いと住宅ローン控除が使えないケースがあります。そのため、買主は住宅ローン控除が適用される築浅の中古住宅を求める傾向があり、築年数が経過した中古住宅が売りづらい要因の一つになっていました。しかし、令和4年度の税制改正で、住宅ローン控除の適用要件から「耐火住宅築25年以内、非耐火住宅築20年以内」がなくなり、現在は「新耐震基準※に適合している住宅であること」に緩和されています。マイホームを売却しようと考えている方には朗報といえるでしょう。しかし、先述のように木造住宅は築20年を超えると価値がかなり低下していることから、建物の老朽化が進む前に売却を検討することも必要です。
※1981年6月1日に施行された建築基準法の耐震基準
続いて、マンションの築年数別の特徴を見てみましょう。
築0~5年の場合、新築と変わらないという買い手の気持ちが働くので、高く売りやすくなります。
人気があるのは、買主にとって値ごろ感が出る築10~20年程度のマンションです。ただ、築年数の経過とともにマンションの見栄えが悪くなり、“古い”という印象を与えることもあります。そのため、管理体制が整っているマンションであることが重要になります。
築年数が20年を超えると、キッチン・風呂など設備の劣化や、間取りが流行から外れるなど古さが目立ってきます。高く売るためには売却前にリフォームして、設備の修繕をしておくなどの工夫が必要になります。
築30年を超えた物件の場合は、大規模な修繕工事も必要になり、価格も下落する傾向にあります。ただし、首都圏などでは新築マンションの価格が高騰し、築30年超の中古マンションの需要が高まっています。手入れが行き届いているマンションや、管理体制が充実しているマンションは需要が見込まれるため、売却前に修繕をしておくと相場より高値で売却できる可能性があるでしょう。
買主の立場に立つと、住宅ローン金利が低いほうが、高いときより買いやすいといえるでしょう。そのため、低金利が続いているタイミングは、不動産を売りやすいといえます。また、「この先、金利が上昇しそうだな…」というときには、金利上昇の前に購入しようと考える消費者の駆け込み需要が期待できるかもしれません。
現在(2025年7月)も低金利ではありますが、長く続いたマイナス金利が2024年3月に終了し、金利がジワリと上昇し始めています。今後もこの傾向が続くのかはわかりませんが、自宅の売却を検討し始めたら、金利の動向には注目しておきたいところです。
不動産を売却した場合、譲渡所得に対して譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)がかかります。これらの課税には、特別控除などの特例・優遇措置があり、期間を過ぎると控除が受けられなくなります。税負担を大きく減らすことができるので、これらの優遇措置が適用される期間内に売却するといいでしょう。
マイホームを売却して利益(譲渡所得)を得た場合には、譲渡所得税(所得税、住民税、復興特別所得税)が課税されます。しかし、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」の適用を受けることができれば、譲渡所得から3,000万円を控除できるため、譲渡所得3,000万円までは譲渡所得税が課税されません。
この特例を受けるにはさまざまな要件がありますが、次の点に注意しなければなりません。
また、この特例を受けるには、不動産を売却した翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告をすることが必要です。
土地・建物を売った際の譲渡所得に課税される税金の税率は、所有期間が5年を超えるか5年以下かによって大きく変わります。所有期間については、売却をした年の1月1日を基準にして、5年を超えているときは「長期譲渡所得」、5年以下のときは「短期譲渡所得」になり、税率は以下のようになります。
〈税率〉
短期譲渡所得(譲渡の年の1月1日時点の所有期間が5年以下):税率39.63%(所得税30.63%※ 住民税9%)
長期譲渡所得(譲渡の年の1月1日時点の所有期間が5年超):税率20.315%(所得税15.315%※ 住民税5%)
※所得税率は復興特別所得税(所得税額の2.1%)を含んだ税率です。
短期譲渡所得は長期譲渡所得に比べて、税率がほぼ倍になります。3,000万円特別控除の特例を利用しない場合、所有期間が5年を超えてから土地・建物を売ったほうが良いでしょう。
なお、譲渡した年の1月1日における所有期間が10年超の居住用住宅の場合、譲渡所得が6,000万円以下の部分に対しては、軽減税率の特例があり、所得税率は10%、住民税率は4%、復興特別所得税率は0.21%となります。なお、6,000万円を超えた部分については、長期譲渡所得の税率が適用されます。
※復興特別所得税は2037年まで課税・徴収されます
相続した不動産を売却して譲渡所得を得た場合、売却益には譲渡所得税がかかります。その際に、納付した相続税の一部を取得費に上乗せできる「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を受けることができ、譲渡所得税の負担を減らすことができます。ただし、この特例の適用を受けるためには、相続開始日から3年10ヶ月以内に不動産などを売却していることと、一定の書類を添えて確定申告することが要件となります。
不動産を売却するタイミングはさまざまありますが、一般の方が売りどきを見極めることは難しいかもしれません。また、専門的な知識が必要になることもあるため、不動産の売却に精通した専門家である不動産仲介会社に意見を聞くといいでしょう。
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※1:2025年4月10日時点(賃貸専門店舗を含む)
※2:2024年度(2024年4月~2025年3月末)実績
斎藤 勇
ファイナンシャルプランナー・宅地建物取引士
保険や貯蓄、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。不動産取引では不動産投資を通じて得た豊富な取引経験をもとに、売り手と買い手、貸し手と借り手、それぞれの立場でアドバイスを実施。趣味はマリンスポーツ。モットーは「常に感謝の気持ちを忘れずに」。
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