「価格が高い土地」は、どの価格に注目するかで変わってきます。例えば公示価格が最も高いのは東京・銀座4丁目の「山野楽器」ですが、路線価が最も高いのは銀座5丁目の「鳩居堂前」です。一方、公示地価の上昇率が最も高いのは、商業地では北海道千歳市、住宅地では北海道富良野市です。そこで今回は、土地価格が高いのはなぜか、また土地価格が上昇する要因はなにかについて解説します。
公示地価とは、国土交通省が調査・発表する土地の価格のことです。
その情報はWeb上で公開されており、国土交通省が提供している「標準地・基準地検索」から閲覧することが可能です。
2025年1月1日時点での公示地価で、1平方メートル当たりの価格が最も高かったのは東京都中央区銀座4丁目の山野楽器銀座本店のビルが建つ土地でした。価格は6,050万円/平方メートルで過去最高を更新しました。
このように、銀座の土地は銀座4丁目の土地をはじめとして全体的に上昇しています。土地の価格は通常、大規模マンションなどが建ったり、再開発が行われたりして、土地の売買が活発になると高騰します。しかし銀座の土地はほとんど売りに出されることがなく、売買が活発に行われているわけではありません。それでも価格が上がっているのは、「ここの土地が市場に出回れば高額な取引が行われる」という期待があるからです。
また、多くの企業が「日本一の商業地、銀座に店を出したい」と考えており、銀座出店で企業のブランド価値が向上するという思惑も、銀座の地価を支えているといえるでしょう。
公示地価と似た土地の価格に、路線価があります。公示地価は国土交通省が調査しますが、路線価は国税庁が調査します。
こちらも公示地価と同様にWeb上で公開されていて、国税庁が提供する「路線価図・評価倍率表」を見ることで確認することが可能です。
2025年の路線価日本一は、銀座5丁目の「鳩居堂前」で、1平方メートル当たりの価格は4,808万円でした。
鳩居堂前の土地が路線価日本一になっているのも、銀座効果といえるでしょう。
山野楽器と鳩居堂は100メートルしか離れていませんし、周囲には銀座三越や和光本館のほか、ルイ・ヴィトンやディオールなど高級ブランドの旗艦店も並びます。このような高級ブランドが集まることによって、銀座のブランド価値が保たれていると考えることができます。
公示地価は全国の約2万6,000地点の土地の価格を調べます。そのなかで最も上昇率が高かったのは、商業地が北海道千歳市で前年(2024年)比48.8%高、住宅地が北海道富良野市で同31.3%高でした。千歳市では半導体製造会社のラピダスが工場を建設中で、同地域では工場の新設に伴う事務所や共同住宅、ホテルなどの用地の需要が高まっていることが影響していると考えられます。
また、富良野市では外国人向けのホテルやコンドミニアム、別荘などの需要が高く、2024年に続いて上昇率が日本一になりました。
公示地価、路線価は不動産の適正価格を見定める指標になります。
特に路線価については、実勢価格の8割程度を目安に定められているので、路線価を0.8で割り戻した価格が一つの参考になります。
そのため、不動産の売却をする際などは、不動産仲介会社が提示をしてきた金額と、公示地価や路線価を割り戻した価格を見比べるようにしましょう。
ただし、査定した価格と実際に成約する価格は必ずしも一致するわけではありません。あくまでも参考にとどめ、不動産仲介会社が提供しているサポートを含めて総合的に判断するといいでしょう。
価格でも上昇率でも、日本一になる土地は、それぞれの要因が存在することがわかりました。まさに、土地は経済と地域の実情を映す鏡、というわけです。土地の価値が変わる理由はさまざま考えられますので、興味のある方は、さらに詳しく調べてみることをおすすめします。
土地を売る時のポイントについて詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。
斎藤 勇
ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士
保険や貯蓄、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。不動産取引では不動産投資を通じて得た豊富な取引経験をもとに、売り手と買い手、貸し手と借り手、それぞれの立場でアドバイスを実施。趣味はマリンスポーツ。モットーは「常に感謝の気持ちを忘れずに」。
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