マンション売却時に初めて水漏れに気付いた場合、このまま売却を進めていいかどうかを悩む方もいるのではないでしょうか。マンションの水漏れをそのままにして売却することは可能ですが、そこには、大きなリスクがあります。本記事では、水漏れしているマンションの売却に関するリスク、実際に水漏れに気付いた場合に必要な対応、不動産売却時の契約不適合責任について解説していきます。
マンション売却時に水漏れが起きている場合、値引きして売却することは可能です。
しかし、水漏れを対処しないまま売却する行為にはさまざまなトラブルを引き起こす可能性があるため、推奨されません。その理由は、水漏れの状況によっては、買主から訴えられるなど大きな不利益につながることが考えられるからです。
また、水漏れがほかの住戸に影響を与えていると、水漏れ被害に遭った住民から訴えられる可能性もあり、損害賠償額として数百万円を要求されることも考えられます。
このようにトラブルを抱えているマンションは買主から敬遠され、値引きをしても成約に至らない可能性があります。買主の目線に立って、漏水を補修するなどの対応を考えましょう。
不動産には告知義務と呼ばれるものがあり、周辺環境が好ましくない場合や、過去死亡事故などがあった物件など心理的瑕疵がある場合には、売主は買主に告知する義務があります。この告知義務は水漏れなど、生活環境においても適用されます。
水漏れについて告知していなかったことがたとえ故意でなくても、過失として売主に損害賠償責任が発生する場合もありますので注意が必要です。たとえば、過去に発生した水漏れに対して応急的な処置だけを施し、そのことを売主が忘れて買主に伝えていなかった場合も、告知義務を怠ったことになります。
水漏れの修繕に限らず、家の修繕履歴については包み隠さず不動産仲介会社に伝え、買主にも告知しましょう。
マンションを売却した後に水漏れが発覚した場合は、売買契約締結時に売買契約書に記載している契約不適合責任の内容に従って対応します。契約不適合責任とは、売却後に引き渡されたマンションが契約内容に適合しない場合、売主が買主に対して負う責任のことです。かつては瑕疵担保責任と呼ばれていましたが、民法の改正で契約不適合責任に名称が変わり、「合意した契約の内容に適合しているかどうか」について明文化されました。これにより、契約不適合があった場合、買主は損害賠償請求と契約解除に加え、修補や代替物の引き渡しを求めること(追完請求権)や代金の減額を求めること(代金減額請求権)が可能になりました。
そのため、売主は買主から訴えられるリスクを減らすためにも、マンションの不具合や修繕履歴などについては、売却前に把握しておくことが大切です。それらを包み隠さず、ありのままを説明し、買主がどこまでそれらの不具合を認めて売買契約を締結したかを明確にするようにしましょう。
マンションの不具合を修繕しないで売却したいと考えるかもしれません。しかし、多くの不動産仲介会社はリスクを抱える不動産を敬遠する場合が多く、思うような売却ができないことがあります。可能であれば修繕してから売却するようにしましょう。やむを得ず修繕せずに売却をする場合には、水漏れを含め、修繕履歴や不具合はすべて文書に残したうえで、買主に包み隠さず説明することが大切です。不具合を自分から開示するのは気が引けるかもしれませんが、それは売主・買主双方の利益を守ることにつながります。
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斎藤 勇
ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士
保険や貯蓄、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。不動産取引では不動産投資を通じて得た豊富な取引経験をもとに、売り手と買い手、貸し手と借り手、それぞれの立場でアドバイスを実施。趣味はマリンスポーツ。モットーは「常に感謝の気持ちを忘れずに」。
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