マンションの売却はタイミングが肝心です。マンションの現状に合わせて売出に適した時期を知り、余裕を持って売却準備を進めましょう。
ここでは、マンション売却に適した時期を見極めるためのポイントや売却時の注意点と、知っておきたい重要なキーワード「契約不適合責任」について解説します。
マンション売却のタイミングを考える際、築年数を指標にしている方もいるのではないでしょうか。
築年数を重ねるとマンションの資産価値は下がる傾向にあることから、「築年数が浅いうちが売却に適した時期」と考えることができるかもしれません。
しかし、マンションの資産価値は築年数以外にも多くの要素が関係しており、築年数だけで判断するのは早計です。どんなことに注目していけばいいのか、ここでは、マンションの築年数と売却時期の関係について解説します。
マンションは、新築~築5年までに価値が大きく下がる傾向にあります。その後は築20年を迎える頃までゆるやかな下落が続き、築30年を超えるとほぼ横ばいで推移するケースが多いようです。
しかし、立地が良いマンションや希少性が高いマンションは、中古でも資産価値が上昇することもあります。“築年数を重ねるとマンションの資産価値が下がる”とは言い切れないのが実際のところです。
マンションの資産価値に変化が出やすい築年数ごとに、築年数と売却のタイミングの関係性を見ていきましょう。
新築マンションは、一度でも購入・居住されれば中古マンションになります。
新築マンションが中古になると、資産価値が2割ほど低下してしまうという話(新築プレミアム)を耳にしたことがある方もいるでしょう。
しかし、人気が高い都内のマンションなどでは築年数の浅い物件が、新築と近い価格で取引されるケースもあります。経済情勢や相場価格の上昇などによっては、購入価格を上回る価格で売却できる可能性もあるでしょう。
築5年~10年未満のマンションは、中古マンションのなかでも著しい劣化やダメージが少ないのが特徴です。
建物や設備の劣化が比較的軽微であるにもかかわらず価格が下がっているので、買主にとっては「コストパフォーマンスが良いマンション」、売主にとっては「需要があって売りやすいマンション」といえます。
また、築10年未満のマンションは、先述した築5年未満のマンションに比べて税金を抑えやすいのもポイントです。
これは、マンションを売却して得た利益(譲渡所得)に課税される所得税※と住民税の税率は、所有期間(売却した年の1月1日時点の所有期間)が5年以下・5年超で大きく変わるためです。
なお、所有期間が5年以下の場合を「短期譲渡所得」、5年超の場合を「長期譲渡所得」と呼び、税率は以下のようになります。
所有期間 | 所得の区分 | 税率 |
---|---|---|
5年未満 | 短期譲渡所得 | 39.63% 所得税※30.63% 住民税9% |
5年以上 | 長途譲渡所得 | 20.315% 所得税※15.315% 住民税5% |
※2013年から2037年までは、復興特別所得税(基準所得税額×2.1%)も課されます
築10年を超えると修繕工事の必要性が高まり、修繕積立金が増額となる可能性があります。
こうしたタイミングを境に、マンション売却を検討する方もいるでしょう。
また、「築12年」という目安もあります。
一般的に、住宅ローンの返済期間は、物件の法定耐用年数の残存期間に応じて設定されます。例えば、買主が住宅ローンの返済期間を最長の35年で設定する場合、RC造(鉄筋コンクリート造)のマンションは法定耐用年数が47年であることから、築年数が12年以内でないと住宅ローンの審査が通りにくいと考えられます。
※RC造法定耐用年数47年 - 住宅ローンの最長返済期間35年 = 築年数12年
住宅ローンの審査基準は金融機関によって異なり、借り手の収入や職業などさまざまな要素から判断されます。「築12年」は一つの目安として覚えておくといいでしょう。
築15年を超えると建物や設備の老朽化が目立つようになり、新築と比べるとマンションの資産価値は大きく下がっています。資産価値が低下するスピードはゆるやかになるものの、築30年までは資産価値が低下し続けると考えられます。そのため、資産価値が下がりきる前に、早めに売却するといいかもしれません。
また、設備の老朽化が目立つ場合には、リノベーション(大規模な改修)を前提とした売却も視野に入れておきましょう。
マンションの築年数と売却の関係については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
転勤や子どもの進学など、ライフスタイルの変化に合わせ、住まいの買い替えや引越しを検討する方は多いです。そのため、新生活が始まるタイミングは、マンションの売却に適した時期といえるかもしれません。ベストなタイミングで売却するため、いつ・何をすればいいのか見ていきましょう。
東日本不動産流通機構のレポート(2025年5月度)によると、首都圏の月別中古マンションの成約件数は、年度によって差はあるものの、3月に多くなる傾向にあるのがわかります。
参照元:http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202505_summary.pdf
(Market Watch サマリーレポート2025 年 5月度/東日本不動産流通機構)
このように2月~3月は新生活のスタートに向けた引越しシーズンで、マンションの購入ニーズが高まる時期です。一般的にマンションを売りに出してから成約するまでに3ヶ月の期間が必要とされていますので、2月~3月をターゲットに売却を考えた場合には、準備は11月~12月頃から始めましょう。
6月~7月、9月~10月は企業の人事異動シーズンです。
一般企業の転勤時期でもっとも多いのは6月末~7月初旬頃。次に多いのは9月末~10月初旬です。
一般企業は決算時期に合わせて人事異動をおこなうケースが多く、転勤などによりマンション需要が高まることが予想されます。
そのため、前述のようにマンションの売却にかかる期間(3ヶ月)を見越して、3月~4月、6月~7月頃から売却準備を始めると売却のチャンスが多くなるでしょう。
売却に適した時期 | 売却準備開始におすすめの時期 |
---|---|
2月~3月(引越しシーズン) | 11月~12月 |
6月~7月(人事異動シーズン) | 3月~4月 |
9月~10月(人事異動シーズン) | 6月~7月 |
大規模修繕が予定されているマンションの場合、工事と売却活動の時期が重なると、売却のチャンスを逃してしまう可能性があります。大規模修繕の工期をチェックして、どのように売却を進めていけばいいのか見ていきましょう。
大規模修繕の工事が開始されると、「建物の外観が見えない」「足場が組まれて窓からの眺めや景色がわかりにくい」「室内が暗い」といった状況から、内見者や購入希望者が少なくなる可能性があります。
大規模修繕の工期は長期間に及びます。買主が購入を検討しにくい状況が続き、売却のチャンスを逃す可能性があるため注意しましょう。
また、大規模修繕による影響を逆手にとって、値引き交渉を求められるケースもあります。
こうした可能性を避けるために、マンション売却を視野に入れたタイミングで大規模修繕の計画を確認し、工事が開始される前に売却手続きを進めることも検討しておきましょう。
売却前に工期を迎えてしまった場合は、修繕工事が完了してからの売却も視野に入れましょう。
大規模修繕が完了しているマンションは、大がかりなリノベーションが施されていることから、買主へ積極的にアピールすることができます。特に、大規模修繕により外壁塗装がおこなわれた場合は、建物の外観が大きく向上するため売却におすすめの時期といえます。
ここでは、中古マンションの売却前に確認しておくべき注意点を見ていきましょう。
マンションを売却するには、マンションの名義人が所定の手続きをおこなう必要があります。相続などにより譲り受けたマンションを売却する際には、売却活動を始める前に、所有権の移転手続きを済ませておきましょう。
売却により得た資金で住宅ローンを完済できるのであれば、抵当権が残っているマンションも売却を進められます。
しかし、売却により得た資金だけで住宅ローンを完済できそうもない場合には、足りない資金を自身で用意しなければなりません。売却活動を始める前にお金を借りている金融機関に相談をして、抵当権を抹消してもらえそうなのか相談しておきましょう。
マンション売却では、買主から値段交渉を持ちかけられることがありますが、無理に応じる必要はありません。しかし、柔軟な対応ができないと売却の機会を逃す可能性もあります。そこで、多くのチャンスを掴むためにも、マンションの希望金額より少し高めの価格で売り出し、値段交渉に応じられるようにしておくのも一つの方法です。さまざまなケースを想定して、柔軟に対応することも検討しておきましょう。
マンション売却では、成約後に「瑕疵(かし:欠陥や不具合のこと)」によるトラブルが起こる可能性があります。
こうしたマンション売却後のトラブルを防ぐため、引き渡されたマンションに隠れた瑕疵があった場合に、売主は買主に賠償をするなどの責任を負う「瑕疵担保責任」がありました。この売主の責任について民法が改正され、2020年4月1日から「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと改正されました。これにより「合意した契約の内容に適合しているかどうか」について明文化され、契約不適合があった場合には、買主は損害賠償請求と契約解除に加え、修補や代替物の引き渡しを求めること(追完請求権)や代金の減額を求めること(代金減額請求権)が可能になりました。
マンションを売却した後に、契約不適合責任を問われると売主に大きな負担が生じてしまいます。これを回避するため、次のポイントに留意しましょう。
インスペクションとは、構造躯体(柱、基礎、壁、屋根など)や外壁、開口部など、雨水の浸入を防止する部分についての専門家による診断・調査のことです。
インスペクションを実施すると、瑕疵になりうる問題点を見つけることができるため、売却後のトラブルを未然に防ぐことにつながります。
インスペクションによって明らかとなった事象(傾いている家なのか、傾いていない家なのかなど)は売買契約書に記載されることから、売主・買主双方が納得のうえ、売買契約を締結できます。
インスペクションの実施には5万円~10万円ほどの費用がかかりますが、契約不適合責任が問われた場合のリスクを考えると、必要に応じて実施することが望ましいといえるでしょう。インスペクションに要する費用は、買主が希望すれば買主負担、双方が合意すれば売主と買主で折半するケースもあります。
インスペクションに関しては以下の記事で詳しく解説しています。
マンションの売買契約書には、法律の定めに則った条文のほか、売主や売却するマンションの条件に合わせた特約や特記事項、容認事項を記載することが可能です(例えば、建物の現状について通知したい内容や、インスペクションによって判明した事象を記載)。
目的物の内容を契約時に明確にし、契約書の内容と物件の状況を適合させることが重要です。
中古マンションの売却において、設備に一切不具合が見られないようなケースは、あまりありません。
そのため、中古マンションの売却では設備などに多少の不具合が見られることを前提として、売買契約を進めることが大切です。
中古マンションの設備に契約不適合責任を適用すると、売買契約の進行に支障が出る可能性もあるため、売買契約書には「設備についての契約不適合責任を負わない旨」を忘れずに記載しましょう。
マンション売却に適した時期は、築年数や季節などさまざまな観点から判断できます。しかし、個々のライフスタイルや売却時に求める条件などにより、最適な時期は異なります。
有利に売却できる時期を見定めるには、信頼のおける不動産仲介会社へ相談し、専門家からアドバイスを受けることが重要です。
マンションの売却を検討している方は、すまいValueの一括査定を利用してみてはいかがでしょうか?
斎藤 勇
ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士
保険や貯蓄、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。不動産取引では不動産投資を通じて得た豊富な取引経験をもとに、売り手と買い手、貸し手と借り手、それぞれの立場でアドバイスを実施。趣味はマリンスポーツ。モットーは「常に感謝の気持ちを忘れずに」。
該当の住所を選択してください
該当の住所を選択してください