不動産売却で確定申告が必要になるケースについて分かりやすく解説します。
不動産売却による譲渡所得があれば、確定申告を行う必要があります。
未申告のままでいると損をしてしまう可能性もあるため注意しましょう。
今回は、不動産売却で確定申告が必要になるケースについて分かりやすく解説します。
確定申告の概要や申告時に受けられる控除についても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
確定申告とは、所得額に対して正しい税金を算出するための手続きをいいます。
確定申告が必要な所得を得ているにもかかわらず、確定申告をしていないと納めるべき税金とは別途、加算税や延滞税を上乗せされてしまうので注意が必要です。まずは、確定申告をしなければいけないケースや申告方法の種類について見ていきましょう。
確定申告は個人事業主だけが行うものとは限りません。
年末調整を行っている会社員であっても、次の所得があれば確定申告が必要となる可能性があります。
確定申告は納税義務者本人が税金を算出するための手続きであるのに対し、年末調整は会社等の源泉徴収義務者が給与等を支払う際に徴収した税金の過不足を算出・精算するための手続きです。
給与から天引きされている所得税には控除などが反映されていないため、税額が正確ではありません。そこで年末調整を行うことで多く徴収している、あるいは足りていない所得税額を算出し、追加徴収や還付を行います。
給与所得者の場合は、年末調整を行うと納税するべき税金の精算が済むため、上記の所得を得ていなければ確定申告をする必要はありません。
確定申告には、異なる2種類の手続き方法があります。
不動産売却で得た利益は譲渡所得となり、確定申告が必要となります。
ただし、年末調整を行っている方の給与以外の所得が20万円以下の場合は確定申告の必要がありません。
年末調整のない個人事業主や医療費控除などの適用を受けるために確定申告を行う方は、金額に関係なく不動産売却で得た譲渡所得の申告が必要となるので注意しましょう。
また、不動産売却により損失が出た場合も確定申告が不要だと判断されがちですが、確定申告することで損益通算(赤字金額を他の所得で相殺する計算方法)が適用される可能性があります。不動産を売却することで損失が出てしまった場合も確定申告をしたらよいかどうかの検討をしましょう。
不動産売却による確定申告は、以下のような流れで進めていきます。
確定申告が可能な申告時期は、原則として土曜・日曜・祝祭日を除く2月16日~3月15日です。休日にあたる場合は翌日に振り替えられます。
確定申告により算出された譲渡所得税は、申告期限までに納税、もしくは振替手続きを行います。
譲渡所得税額を計算するには、次の税率を用いて計算式に当てはめましょう。
なお、平成25年から令和19年までの各年分の確定申告の際は、所得税額に2.1%を掛けた復興特別所得税の申告・納付も必要となります。
<譲渡所得の税率>
所有期間 | ||
---|---|---|
区分 | 短期 | 長期 |
期間 | 5年以下※ | 5年超え※ |
税率 | 39.63% 所得税 30% 住民税 9% 復興特別所得税 0.63% |
20.315% 所得税 15% 住民税 5% 復興特別所得税 0.315% |
<譲渡所得税の計算方法>
譲渡所得税額 = 課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税・復興特別所得税)
(例)
6年住んだのち売却した不動産の課税譲渡所得が3,800万円の場合・・・
3,800万円 × 20.315% = 771.97万円(所得税570万円・住民税190万円・復興特別所得税11.97万円)
不動産売却では一定の条件を満たすことで受けられる特例があります。
代表的な3つの特例を見ていきましょう。
なお、いずれの特例についても、住宅ローン控除と併用することはできません。
譲渡所得から最高3,000万円の控除を受けられる特例です。
主な適用要件には次のようなものがあります。
<特例適用時の計算方法>
譲渡所得税 = (課税譲渡所得 - 3,000万円) × 税率
(例)
6年住んだのち売却した不動産(課税譲渡所得3,800万円)に3,000万円特別控除を適用した場合・・・
(3,800万円 - 3,000万円) × 20.315% = 162.52万円(所得税120万円・住民税40万円・復興特別所得税2.52万円)
10年以上所有していたマイホーム(居住用の不動産)を売却した際に受けられる特例で、3,000万円特別控除の特例とも併用可能です。
<10年超所有の軽減税率>
課税譲渡所得金額 | 税率 |
---|---|
6,000万円以下の部分 |
14.21% 所得税 10% 住民税 4% 復興特別所得税 0.21% |
6,000万円超の部分 |
20.315% 所得税 15% 住民税 5% 復興特別所得税 0.315% |
<特例適用時の計算方法>
(1)3,000万円特別控除の特例を併用しない場合
譲渡所得税 =課税譲渡所得 × 軽減税率
(2)3,000万円の特別控除の特例を併用する場合
譲渡所得税 = (課税譲渡所得 - 3,000万円) × 軽減税率
(例)
12年住んだのち売却した不動産(課税譲渡所得4,000万円)に3,000万円特別控除を適用した場合・・・
(4,000万円 - 3,000万円) × 14.21% = 142.1万円(所得税100万円・住民税40万円・復興特別所得税2.1万円)
特定のマイホーム(居住用財産)を売却し、新たにマイホームを購入した場合に受けられる特例です。
買い換えの特例の適用要件には、主に次のようなものがあります。
なお、買い換えの特例では3,000万円の特別控除の特例と10年超所有の軽減税率は併用できません。
<特例適用時の計算方法>
(1)売却金額よりも購入金額が上回る場合、所得税の課税が繰り延べられることとなります。そのため、売却した年に譲渡所得税がかかりません。
(2)売却金額よりも低い購入金額の場合、
譲渡所得税 = 課税譲渡所得(収入金額(売却金額 - 購入金額) -必要経費) × 税率
(例)
12年住んだ不動産を4,000万円で売却して3,500万円のマイホームを購入し、150万円の必要経費がかかった場合・・・
(4,000万円 - 3,500万円 - 150万円) × 20.315% = 71.1025万円(所得税52.5万円・住民税17.5万円・復興特別所得税1.1025万円)
必要経費は、「(売却したマイホームの取得費+譲渡費用)×収入金額(売却金額-購入金額)÷売却金額」で計算します。
不動産売却では、確定申告をすることで赤字金額の相殺や、特例を活用した節税対策が可能です。
確定申告期間は基本的に毎年2月16日~3月15日と固定されているため、必要書類や帳簿作成は余裕を持って準備しておくと安心です。
確定申告が必要なケース、必要でないケースを正しく理解して、確定申告漏れのないよう注意していきましょう。
斎藤 勇
ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士
保険や貯蓄、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。不動産取引では不動産投資を通じて得た豊富な取引経験をもとに、売り手と買い手、貸し手と借り手、それぞれの立場でアドバイスを実施。趣味はマリンスポーツ。モットーは「常に感謝の気持ちを忘れずに」。
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