住宅ローンの借り換えは、返済計画において賢い選択のひとつ。
住宅ローンを借り換えて最終的な返済額を減らそうと考えている方は、借り換えで発生する手数料と諸費用について知っておきましょう。
手数料や諸費用の相場を知っておくと、より現実的な計画のもと、住宅ローンの借り換えを検討できます。
ここでは、住宅ローンの借り換えを行うメリットや手数料・諸費用の相場、費用を用意できない場合の対処方法について解説します。
住宅ローン返済中でも、他の金融機関で住宅ローンを借り換えることができます。住宅ローンを借り入れる際は手数料や諸費用がかかるため、「本当に借り換えたほうがいいのか」と不安に感じる方もいるでしょう。
住宅ローンを現在の金融機関から他の金融機関へ借り換えた場合、一般的に以下のようなメリットがあります。
現在より金利の低い住宅ローンに借り換えると、返済総額(利息分)を減らせる可能性があります。
例えば、4,000万円を金利1.5%、返済期間35年で借り入れた場合、返済総額は以下のようになります。
借入金額:4,000万円
金利 :1.5%
期間 :35年(ボーナス返済なし)
返済総額:約5,144万円
利息額 :約1,144万円
返済方式:元利均等
上記の住宅ローンを借り入れてから15年後、借入金額は約2,539万円まで減っています。
このタイミングで金利0.7%、返済期間20年で住宅ローンの借り換えを行った場合のシミュレーションを見てみましょう。
<借り換え後のシミュレーション>
借入金額:約2,539万円
金利 :0.7%
期間 :20年
返済総額:約2,722万円
利息額 :約183万円
返済方式:元利均等
現在の住宅ローンを金利1.5%で返済し続ける場合、借入金額およそ2,539万円にかかる利息は約402万円です。一方、住宅ローンを借り換えた場合の利息は約183万円ですから、これを差し引くと約219万円の利息を削減できます。
15年後の返済残額:2,539万円
金利1.5%の住宅ローンで返済を続ける場合の利息:402万円
金利0.7%の住宅ローンに借り換える場合の利息 :183万円
402万円 - 183万円 = 219万円
現在よりも低い金利の住宅ローンへの借り換えが、返済総額の削減につながるのです。
借り入れている住宅ローンが変動金利の場合、経済の状況に応じて金利が上がり、返済総額が増える可能性があります。
長期固定金利の住宅ローンに借り換えると、完済まで一定の金利での返済となります。そのため、金利が上昇しても返済総額が増える心配がありません。ただし、低金利が続くと借り換えをしないほうが有利になります。できるだけ低い金利の際に、長期固定金利の住宅ローンへ借り換えることがポイントです。
住宅ローン借り換え費用の大半は、手数料と諸費用です。それぞれの内訳や相場、支払い先について知っておきましょう。
手数料は住宅ローンの手続きを進める際に発生する事務的な費用のことです。
金融機関によっては手数料が定められていない場合もあるため、各種手数料の有無についてあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
住宅ローンの借り換えで発生する手数料には、以下のようなものがあります。
住宅ローンの融資が実行される際にかかる事務手数料です。借入額に関係なく一定額が必要な「定額型」と、借入額に所定の料率を乗じる「定率型」があります。具体的な金額・料率は金融機関によって異なり、定額型では3万円~5万円、定率型では2.2%程度の場合が多いようです。
支払い先:金融機関
住宅ローンの契約手続きを不動産仲介会社に代理で行ってもらう場合にかかる手数料です。
住宅ローン斡旋料、融資事務代行手数料とも呼ばれます。斡旋手数料の金額は不動産仲介会社が自由に設定できます(斡旋手数料がない不動産仲介会社もあります)。
斡旋手数料の相場は5万円~20万円です。なお、自分で契約手続きをすれば費用は発生しません。
支払い先:不動産仲介会社
住宅ローンを全額繰り上げ返済する際にかかる手数料です。
住宅ローンの契約内容によっては、「借り入れ日から〇年以内の完済で、全額繰り上げ返済手数料として〇〇円請求します」と規定されている場合もあります。
全額繰り上げ返済手数料の相場は1万円~5万円。契約している住宅ローンによって金額は異なり、全額繰り上げ返済手数料が「0円」の金融機関もあります。
支払い先:金融機関
住宅ローンの保証人として、個人ではなく保証会社を設定する場合にかかる手数料です。
保証会社事務手数料は、後述する住宅ローン保証料とは異なり、保証の委託手続きを進めるための事務手数料をいいます。
保証会社事務手数料の金額は金融機関によって異なります。
支払い先:金融機関・保証会社
住宅ローン借り換え時の諸費用には、住宅ローン保証料や税金、保険料などが挙げられます。
手数料に比べて高額な場合が多いため、住宅ローン借り換え前は確認しておきたい費用です。
保証会社を利用する場合に発生する保証料で、一括で支払う方法と、毎月の返済額に上乗せして支払う方法があります。
住宅ローン保証料は金融機関や保証会社ごとに異なり、借入金額の0.15%~2.0%が相場です。また、保証料が不要なケースもありますが、その際は事務手数料や金利に上乗せされていることが多いようです。
保証料は借入金額によって高額になることから、融資を受ける金融機関へ事前に確認しておくことをおすすめします。
支払い先:金融機関・保証会社
不動産を新たに住宅ローンで購入する場合、住宅ローンの担保として不動産に抵当権が設定されます。その手続きの際に発生する費用全般を「抵当権設定費用」と呼び、以下のような費用が該当します。
※2027年3月31日までの軽減措置
支払い先:司法書士、不動産を管轄する法務局
住宅ローンの借り換えにともない、現在住宅ローンを借りている金融機関によって設定されている既存の抵当権を抹消する必要があります。
費用の内訳は、抵当権の抹消登記の際に課税される登録免許税と司法書士への報酬です。
登録免許税は不動産1件につき1,000円で、登記手続きを司法書士へ依頼する場合は1万円~2万円の司法書士報酬が必要です。
支払い先:不動産を管轄する法務局または司法書士
住宅ローンの返済期間中、住宅ローン契約者に万が一のことがあった場合の生命保険料です。
住宅ローン契約者が亡くなる・高度障害状態になるなど、所定の状態となった場合に団体信用生命保険から保険金が支払われ、住宅ローンの残債の返済に充当されます。
団体信用生命の保険料は「金利に上乗せする方式」と「一括で支払う方式」があり、民間の住宅ローンでは金利に含まれるケースが多いようです。
支払い先:金融機関または保険会社
住宅ローンを契約する場合、火災保険への加入を必須にしている金融機関がほとんどです。保険料は補償内容によって異なります。また、火災保険に加入すると地震保険にも加入できますが、契約については任意です。
支払い先:保険会社
では、実際に借り換えた場合をシミュレーションしてみましょう。
※借入金額2,000万円、借入期間20年の場合
※借り換え手数料・諸費用は一般的なケースを想定
手数料/諸費用内訳 | ケース1 | ケース2 | ||
---|---|---|---|---|
融資手数料5万円 保証料0.45% |
融資手数料2.16% 保証料0.15% |
|||
手数料 | 融資手数料 | 5万円 | 43万2,000円 | |
斡旋手数料 | 10万円 | 10万円 | ||
全額繰り上げ返済手数料 | 3万円 | 3万円 | ||
保証会社事務手数料 | 3万円 | 3万円 | ||
諸費用 | 住宅ローン保証料 | 9万円 | 3万円 | |
抵当権 設定費用 |
司法書士手数料 | 5万円 | 5万円 | |
登録免許税 | 8万円 | 8万円 | ||
印紙税 | 2万円 | 2万円 | ||
抵当権抹消費用 | 1万5,000円 | 1万5,000円 | ||
団体信用生命保険料 | 10万円 | 10万円 | ||
火災保険料 | 30万円 | 30万円 | ||
地震保険料 | 4万円 | 4万円 | ||
合計 | 90万5,000円 | 122万7,000円 |
ケース1は「金融機関の融資手数料が安いものの、住宅ローン保証料が比較的高い場合」のシミュレーションです。一方、ケース2はその逆で「融資手数料が高いものの、住宅ローン保証料が安い場合」のシミュレーションです。その他の金額は目安になります。上記のようにケース1だと90万円超、ケース2だと120万円超になります。
上記の金額はあくまでも一例です。手数料や諸費用は金額に幅がありますので、「トータルでいくら必要なのか」を比較して決めましょう。
住宅ローンを借り換える際の手数料や諸費用は、資金計画において軽視できない金額です。
手数料と諸費用あわせて100万円を超える金額となるケースもあることから、経済的な負担に悩む方もいるでしょう。
住宅ローンを借り換えるにあたり、手数料や諸費用の支払いが難しい場合、以下の手段を検討してみることをおすすめします。
住宅ローンはさまざまな金融機関で取り扱われています。
借り入れる住宅ローンによって住宅ローン保証料や各種手数料の金額は異なるため、複数の住宅ローンを比較し、手数料や諸費用を抑えることが大切です。
金融機関によって金額差が生じやすい手数料・諸費用は、以下の通りです。
住宅ローンのなかには、「手数料が無料でも保証料が高いローン(またはその逆)」というケースもあります。手数料と諸費用の両方を確認して、住宅ローン借り換え時の費用負担が少ないものを選びましょう。
諸費用のなかで、特に高額となりやすいのが住宅ローン保証料です。
住宅ローン保証料は、一括払い・分割払いができます。支払い方法により、住宅ローン借り換え時の費用負担は以下のように異なります。
住宅ローン借り換え時に住宅ローン保証料を一括で支払う方式です。住宅ローン保証料の総支払い金額は、分割払いよりも低く抑えやすい特徴があります。
住宅ローン保証料を分割で支払うため、住宅ローン借り換え時の費用負担を軽減できます。住宅ローン保証料の総支払い金額は、一括払いより多くなる特徴があります。
新たに借り入れする住宅ローンに、手数料や諸費用分の金額を組み込めるケースもあります。ただし、借入金額が増えると利息が増え、最終的な返済金額も高額になりがちです。無理のない返済計画を立てることが大切です。
住宅ローンの借り換えで発生する手数料や諸費用は、契約する金融機関や、選ぶ住宅ローンによって異なります。トータルでいくら必要になるのか、比較したうえで検討していきましょう。
また、借り換えの際にはまとまったお金が必要になることもあることから、事前に資金計画を立てておくことが大切です。手数料や諸費用をさまざまな角度からシミュレーションして、無理なく支払っていけるプランを選びましょう。
斎藤 勇
ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士
保険や貯蓄、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。不動産取引では不動産投資を通じて得た豊富な取引経験をもとに、売り手と買い手、貸し手と借り手、それぞれの立場でアドバイスを実施。趣味はマリンスポーツ。モットーは「常に感謝の気持ちを忘れずに」。
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