家を売却すると「まとまったお金を受け取れる」というイメージを抱いているかもしれませんが、「出ていくお金」が想定外に大きくなることがあります。資金計画が狂ってしまうことがないように、「お金の受け取り・支払い」には留意する必要があります。そこで今回は、家を売った際の代金を受け取れるタイミングや不動産仲介会社への支払い、諸経費など、家を売却する際に知っておきたい「お金のこと」を詳しく解説します。
家の売却代金は2回に分けて受け取るのが一般的です。
1回目は、売主(オーナー)と購入希望者が売買契約を締結した際、「手付金」として売却代金の5~20%を受け取ります。2回目は家の受け渡しのタイミングで、手付金を除いた残金全額を受け取ります。
1回目に受け取る手付金は、売却代金の一部になることから「前払い」の意味合いを持つと同時に、購入希望者が売買契約後に「買わない」ことを決めたときに、その手付金を手放すことで契約を解除できる「手付解除」の機能も有しています。売主は家を引き渡すことなく、売却代金の5~20%を得ることができますが、あらためて購入希望者を探さなければならないことから「迷惑料」ともいえます。
なお、売買契約後に売主が「売らない」ことを決めた場合には、受け取った手付金を返却し、さらに手付金と同額のお金を購入希望者に支払わなければなりません。(手付金の2倍を購入希望者に支払う)
手付金の額は売主と購入希望者の話し合いによって決めることができます。手付金の額を安くしすぎると購入希望者がキャンセルしやすくなることから、金額を決める際には不動産仲介会社のアドバイスを受けるといいでしょう。
家を売るときに不動産仲介会社に仲介を依頼すると、売主は仲介手数料を支払わなければなりません。
仲介手数料は不動産仲介会社が自由に決めることができますが、法律で上限が以下のように決まっています。
成約価格 200万円以下 | (成約価格×5%)+消費税 |
---|---|
成約価格 200万円超~400万円 | (成約価格×4%+2万円)+消費税 |
成約価格 400万円超 | (成約価格×3%+6万円)+消費税 |
たとえば成約価格が2,000万円の場合、仲介手数料は最大66万円+消費税(=2,000万円×3%+6万円+消費税)を支払うことになります。
なお、物件価格が800万円以下の「低廉な空き家等」の仲介手数料については、空き家等の取引の仲介を後押しするため、上限「30万円+消費税」までの範囲で決めることができます。
家の売却には、「印紙税」「抵当権抹消登記費用」「登録免許税」「司法書士への依頼代金」「譲渡所得税」「家の解体費」「廃棄物の処分費用」「引越し代金」といった諸費用がかかります。
印紙税は、売買契約時に必要な税金です。印紙を購入してその印紙を契約書に貼り付けることで税金を納めたことになります。
印紙税の代金は、取引価格が「50万円を超え100万円以下」であれば500円※、「100万円を超え500万円以下」であれば1,000円※、「500万円を超え1,000万円以下」であれば5,000円※、「1,000万円を超え5,000万円以下」であれば10,000円※などのように金額によって決まっています。
売却する家に住宅ローンの残債があり、その残債を完済してから売却する場合、抵当権を抹消するための登記費用が発生します。
抵当権を抹消するには登録免許税が必要で、税額は不動産1個につき1,000円です。たとえば、土地と建物にそれぞれに設定されている抵当権を抹消するには、登録免許税が2,000円(1,000円×2)かかります。
抵当権抹消の手続きを司法書士に依頼すると、手数料が発生します。報酬の額は依頼する司法書士によって異なり、不動産1個につき10,000円~20,000円が相場です。
家を売却して利益(譲渡所得)が生じた場合には、譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得は次の計算式で算出し、プラスになった場合には確定申告をして支払います。
譲渡所得=取引価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
マイホームを売却する場合、「住まなくなった日から3年を経過する日が含まれる年の12月31日までに売却する」など所定の条件を満たすと「マイホームを売ったときの特例」の適用を受けることができ、特別控除額が3,000万円になります。
そのほかにも「家の解体費」「廃棄物の処分費用」「引越し代金」などが必要になる人もいるでしょう。無理のない資金計画を立てるため、事前に関係業者に見積もりを出してもらうことをおすすめします。
家を売却する際にはさまざまな出費があります。上記で紹介した手数料や諸経費だけでなく、住宅ローンの残債が多いと、自己資金を別途用意する必要がでてくるかもしれません。
さらに、想定していたより安く売ることになった場合には、資金計画に狂いが生じてしまいます。家の売却で苦戦が想定される方は、プロ(不動産仲介会社)のアドバイスを受けながら、確実な売却計画を立てるといいでしょう。
また、家を売ったお金で住宅ローンの残債を支払うという人も多いでしょう。その際には、住宅ローンを借りている金融機関と事前に打ち合わせをする必要があります。
土地を売る時のポイントについて詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。
斎藤 勇
ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士
保険や貯蓄、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。不動産取引では不動産投資を通じて得た豊富な取引経験をもとに、売り手と買い手、貸し手と借り手、それぞれの立場でアドバイスを実施。趣味はマリンスポーツ。モットーは「常に感謝の気持ちを忘れずに」。
該当の住所を選択してください
該当の住所を選択してください