不動産を売却する際には「最大で5つの税金」が課税されます。支払うのは確定申告・不動産の登記・売買契約のタイミングです。それぞれいつ・どのくらい課税されるのか見ていきましょう。
また、課税される税金には、一定の条件を満たすと軽減措置や特別控除で減税されるものや、決済の際に精算するものもあります。具体的な内容についてもあわせて紹介します。
※実際の取引での税法上の適用の可否については、税理士・税務署等にご確認のうえ判断してください。
売却益(譲渡所得額)に課税される所得税は高額になる可能性がある税金で、課税対象になる譲渡所得額は以下の計算式で算出します。
譲渡所得額=売却額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(該当する場合)
計算式にある「取得費」は、対象の不動産を取得したときにかかった費用で、不動産を購入した価格(計算の際には建物の減価償却費を控除する)と購入時に支払った費用(仲介手数料など)の合計額です。取得費が分からない場合には、不動産を売却した代金の5%にすることができます。
「譲渡費用」は、物件を売却したときにかかった費用で、仲介手数料や測量費、立退料など、売却に必要な費用全般が含まれます。
「特別控除」には、マイホームを売ったときに適用される「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」などがあります。この特例を受けることができれば、売却益から3,000万円が控除されるため、税金の負担がかなり軽減されます。(売却した翌年に確定申告をする必要あり)
不動産の売却益に課税される税金は、所有期間が5年・10年を超えるかどうかで大きく変わります。
所有期間が5年を超える場合(長期譲渡所得) 所得税率が15%
所有期間が5年以下の場合(短期譲渡所得) 所得税率が30%
※所有期間は売却した年の1月1日時点で判定
また、10年以上※住んでいたマイホームを売却した場合には、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」の適用を受けることができます。この特例により、売却益に課税される所得税の税率が「6,000万円まで10%」に軽減されるため、所得税の負担はかなり低くなります。
※不動産を売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていること
復興特別所得税は2037年までの期間限定で課せられる税金で、所得税額に対して2.1%の税率で課税されます。
税率としては比較的低いのですが、譲渡所得が大きいとそれなりに高額となります。
住民税は、都道府県や市区町村が課税する税金で、役所から送付されてくる納付書にしたがって納付(普通徴収)するか、給料などから天引き(特別徴収)されます。
不動産の売却益に課税される住民税の税率は以下のとおりです。
※所有期間は売却した年の1月1日時点で判定
「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」の適用を受けた場合
不動産売却では不動産売買契約書を作成します。不動産売買契約書は課税文書と呼ばれ、収入印紙を購入して貼付し、消印を押すことで納付します。
詳しい税額は、国税庁の「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」(不動産売買契約書は第1号文書)および「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」で確認してください。
所有権移転登記や抵当権抹消登記などをする際に発生する税金です。
所有権移転登記の際に支払う登録免許税は、所有権を取得する買主が負担するのが一般的で、税額は「不動産の価額(固定資産税評価額)」に税率2.0%を乗じて計算します。なお、土地については、令和8年3月31日までの間に登記を受ける場合、税率が1.5%に軽減されます。
売却する不動産に抵当権が設定されている場合には、所有権移転の前に抵当権抹消登記をする必要があります。その際に課税される登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
不動産を所有していると課税される固定資産税と都市計画税は、1月1日時点の所有者に毎年課税されます。そのため、不動産を売却したあとに納付書が送付されてきた場合でも、1月1日時点の所有者である売主が納税義務を負います。そこで、1年間に支払う固定資産税と都市計画税の税額を、引渡しの日を基準にして計算し、売主は買主から精算金として受け取ります。
なお、日割り計算の方法は、関東地方では「1月1日を起点にして、1月1日から12月31日を1年とする方法(暦年方式)」、関西地方では「4月1日を起点にして、4月1日から3月31日を1年とする方法(年度方式)」が採用されています。計算方法について、事前に確認しておくとよいでしょう。
不動産を売却するとさまざまな税金が課税され、税負担がかなり大きくなるケースがあります。一方、売却する不動産がマイホームの場合には、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」など、税負担が軽減される特例や軽減措置があります。資金計画にも影響を及ぼすことから、事前にチェックしておくといいでしょう。
土地を売る時のポイントについて詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。
斎藤 勇
ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士
保険や貯蓄、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。不動産取引では不動産投資を通じて得た豊富な取引経験をもとに、売り手と買い手、貸し手と借り手、それぞれの立場でアドバイスを実施。趣味はマリンスポーツ。モットーは「常に感謝の気持ちを忘れずに」。
該当の住所を選択してください
該当の住所を選択してください