不動産売却の経験がないと、売却益に対して「どのような税金がかかるのか」「どのくらいの税率になるのか」についてイメージがわきにくいかもしれません。実際には、不動産売却によって得られた譲渡所得は、給料など他の所得とは別に計算する「分離課税」と呼ばれる課税方法が適用されます。そこで今回は、不動産売却で得た所得にかかる税金の課税方法や計算方法について解説します。
さまざまな方法で得た所得に対する所得税の課税方法には3種類あります。
総合課税において所得税は、すべての所得を合算して各種控除を引いた課税対象額に対して、定められた所得税率が課されるのが原則です。
しかし、不動産売却によって得た所得の場合は、総合課税の対象にはなりません。不動産売却の場合、株式売却と同様に「譲渡所得」に分類され、総合課税とは別に計算して課税する「分離課税」という制度が適用されます。
分離課税は、一時的に大きな金額を所得として得た場合に、給与所得や事業所得などと合算すると、重い税率が課せられることを防ぐために作られた課税方法です。不動産売却で得た譲渡所得は、まさに分離課税の対象となるため、確定申告をして税金を支払う必要があります。
所得は、不動産売却による譲渡所得の他にも、大きく10種類に区分されています。
不動産所得は、不動産などを賃貸することで得られる所得を指します。不動産を売却した際に得られる譲渡所得と異なるため注意しましょう。
また、譲渡所得は申告分離課税のため、確定申告の期間(毎年2月16日~3月15日)に納めるべき税額を計算し、所轄の税務署に税額を記入した確定申告書を提出する必要があります。課税額は所得額や所有期間、特別控除適用の有無といった条件によって異なりますので、税額を計算する際は注意しましょう。
不動産を売却した際に得られる譲渡所得は、所有期間に応じて「長期譲渡所得」「短期譲渡所得」の2種類に分類されます。
不動産を売却した年の1月1日時点で、それまでに不動産を所有していた期間が5年を超えている場合は長期譲渡所得、5年以下の場合は短期譲渡所得となり、税率は異なります。それぞれの税率は以下の通りです。
税額は、不動産の成約価格(譲渡価額)をもとに計算するのではなく、成約価格から取得費と売却にかかった費用などを差し引いた「課税譲渡所得」をもとに計算されます。そのため、課税譲渡所得がマイナスになった場合には、税金は課せられません。また、建物については、経年により価値が下落するため、不動産の取得にかかった費用から減価償却費相当額を差し引く必要があります。
売却した不動産がマイホームの場合には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」、親族から相続した空き家(一定の要件を満たす必要がある)の場合には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」の適用を受けることができ、特別控除として課税譲渡所得から3,000万円を差し引くことができます。その際の課税譲渡所得金額の計算式は以下の通りです。
上記で算出した課税譲渡所得金額に税率をかけると、課税される税金額が算出できます。
例えば、2021年4月に購入した居住用のマンションの取得費(減価償却費相当額控除後)が4,000万円で、2025年2月に5,000万円で売却したと仮定すると1,000万円の譲渡益が生じています。このケースでは特別控除3,000万円が適用でき、課税譲渡所得金額が0円となり税金はかかりません。
別のケースでも見てみましょう。2021年4月に購入した投資用マンションの取得費(減価償却費相当額控除後)が4,000万円で、2025年2月に5,000万円で売却したと仮定すると1,000万円の譲渡益が生じています。このケースですと居住用の不動産に該当しないことから特別控除を受けることができず、また、所有期間が5年未満のため短期譲渡所得に該当するため、1,000万円×39.63%=396万3,000円が課税されます。
不動産売却で得た所得にかかる税金は、所得税、住民税、復興特別所得(2037年までの期間限定)の3種類です。税率は不動産の所有期間によって異なり、売却年の1月1日時点で5年より長く所有している場合は長期譲渡所得、5年以下の所有期間の場合は短期譲渡所得の税率が適用されます。
不動産売却では、大きな金額が動き、その分、税金も多額になります。資産管理のためにも、売却益に対してどのような課税がされるのかを理解し、実際にいくら手元にお金が残るのか把握するようにしましょう。
現在売却を検討されているのであれば、売却益がいくらぐらい出て、納税額がどの程度になるかを試算するためにも、まずは成約価格がどのぐらいになるのか、専門家により正確な査定をしてもらうのも良い手段です。すまいValueなら、お手持ちの不動産に関して、最大6社の不動産仲介会社へ一括査定依頼ができます。よろしければぜひご利用ください。
土地を売る時のポイントについて詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。
斎藤 勇
ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士
保険や貯蓄、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。不動産取引では不動産投資を通じて得た豊富な取引経験をもとに、売り手と買い手、貸し手と借り手、それぞれの立場でアドバイスを実施。趣味はマリンスポーツ。モットーは「常に感謝の気持ちを忘れずに」。
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